カティナのご両親は?
ところ変わって、カティナの実家である屋敷ではエトナーが起こした大騒ぎがとうとう両親にまで届いた。
「一体なんの騒ぎだ!」
カティナの父親であるグラックと母親のリキエールは母屋の大部屋の扉を開け放った。
「ぐわー!」
その二人の頭上をエルフが飛び越えて行った。
「な、なんの騒ぎだ?!」
飛んで行ったエルフが壁に穴をあけた。
騒ぎの主であるエトナーはグラックを見つけるとずんずんと歩み寄った。
「親父殿よ!」
「は、はいっ!」
「娘と訪ねてきたのに出迎えも無しか!」
「えっ!?」
さらにずいっと歩みよるエトナー。
トウガラシのせいで目が若干赤くなっているので迫力がすごい。
「オマケに閉め出されたから無理矢理入ってきたぞ!」
「な、なぜそんなことに?!」
「コッチのセリフだこのやろう!」
エトナーはグラックを捕まえると凄まじい剣幕で詰め寄った。
「ここはいつから種族至上主義のたまり場になった!答えろ!」
「そ、それは……、娘が帰ってこなくなると言われて……」
「生活費やりくりしながら手紙を書くような子がそんな冷たいワケねえだろ!」
エトナーの言葉にグラックは驚いた表情を浮かべる。
「それは本当ですか!?」
「それに手紙が届いてないみたいだからって娘が心配して戻って来てんだぞ!」
「うわーー!やめてくださーい!」
前後にぶんぶんと揺さぶられてグラックはがくがくと首を揺らしながら悲鳴を上げる。
少しして大部屋にいた数人のエルフが我に返り、エトナーを落ち着かせようとやってくる。
「聖人様!落ち着いてください!」
「と、とにかく揺さぶるのをやめてください!」
「わきばらぱんち」
「いてぇ!脇腹殴るんじゃねえよ!誰だこの野郎!」
宥めつつグラックを解放しようと、二人を引きはがそうとしている。
しかしどうやらグラック達を唆していた人物がいるようで、止めるふりをしながらエトナーの脇腹を叩いている。
「とにかくだな!カティナちゃんが、手紙が」
「スネ蹴り、スネ蹴り」
「いてぇつってんだろ!」
「あひん!」
姑息な攻撃を仕掛けている人物が特定できたのかエトナーはすかさずカウンターを入れて黙らせる。
「この……、このっ!」
「やめてくださーい!」
「やかましい!ゴー、シュート!」
「あー!」
足払いからのサッカーボールキックで不埒者を蹴り飛ばすとエトナーはグラックとリキエールに事の次第を説明した。
「あの子はお前さん達を今でも愛しているし、心配だってしてる!だからこそこうして私が付き添って様子を見に来たんだぞ!」
ガシャーン!と不埒者が壁を突き破ってもんどりうって転げている音が響いた。
その場にいるアインザッツ家の面々はどちらを見たらいいものやら、おろおろとするばかり。
「そ、そのような話はまったく聞いていなかったのですが……本当でしょうか?」
「私が嘘つくってのか?」
「そのようなことはありませんが……もう何ヶ月も便りがなくて……」
「そりゃそうだ、どっかの誰かさんが止めてたから……な!」
エトナーの手から雷光が迸った。
その瞬間に一人のエルフが感電して卒倒し、懐から何かをばらまいた。
そのエルフがマイルをビンタして手紙を奪った瞬間をエトナーは抜け目なく目撃していたのである。
「盗みは罪悪だぜ、コソ泥さんよ」
エトナーは感電してガタガタ震えているエルフの周囲に散らばっている手紙を拾い上げると束ねてそれをグラックに手渡した。
「これが証拠だ。ちゃんと日付とかも見とけよ」
グラックは手紙の束を受け取るとそのうちの一つを開いた。
『お父さん、お元気ですか。私は元気です。今日は初めて他種族の友達ができました!』
自分の元気を伝え、両親の元気を心配する、その書き出しから始まった手紙は何通もあり、分厚い束になっていた。
二人はそれを見て表情をほころばせている。
「よかった……あの子はちゃんとやれているんですね」
「ああ、前は海にも行ったらしいぜ。私が会いに行ったら皆逃げるように帰ったけどな」
ふん、と鼻を鳴らすエトナーに苦笑しつつも両親は娘が無事に学校で生活できている事を知って安堵したようだ。
「よかった……ほんとうによかった」
手紙の中にはカティナが作ったらしいカードがあり、そこには街やその周辺で取れる草花が押し花にして添えられていた。
中には海で拾ったらしい貝殻なども入っている。
「さて、感動の時間は一旦そのへんにしてもらって……お前さん達娘に無断で何をするつもりだったんだ?」
「それは、ええっと……」
グラックが言い淀んだのを見てエトナーは呟いた。
「まさか勝手に嫁に出す約束をしたとか?」
「うっ!」
「里の人間と結婚させたら外に出て行かなくなるだろうって?」
「ううっ!」
ギクゥ!と効果音が出そうなほど肩を震わせたグラックにエトナ―本日二度目の剣幕。
「このやろぉぉぉぉぉぉ!娘の人生なんだと思ってんだこのぉぉぉぉ!」
「うわーーー!ゆるしてくださーーーい!いだだだだだ!」
聖人渾身の関節技でグラックを折檻する悪夢のような状況が広がっている。
リキエールは一周回ってなんか落ち着いたのか
「何年か前にも見たわねこの光景……」
と現実逃避していた。




