↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
441/442

飛んで飛んで!

エトナーはとりあえず出発しよう、と道中で干し肉やらを購入しつつ街を出た。


「それで、二日で国境に行く方法ってなんです?」


エトナーの不始末で太陽も高く昇っている。

時間はかからないに越したことはないが果たしてどうやるのか。


「ルナちゃんに飛んでってもらうのさ」

「えっ」

「なんかそんな感じはしてた」


ルナは蝙蝠に変身できる。

そうすれば馬車など道なりにしかいけない乗り物と違い、直線距離で国境を目指せるわけだ。


「人を運んだことはありませんけど」

「大丈夫だ、落っことされても私は死なないし」

「私は……?」


カティナが至極真っ当な疑問を漏らした。

エトナーはそれをスルーしつつ続ける。


「朝は私がルナちゃんを背負って二人で歩いて進む。夜にルナちゃんが私らを運んで空を飛ぶやり方を取ればノンストップで二日で国境まで行けるって寸法さ」

「強行軍ですね……」

「物見遊山に行くんじゃないんだ、仕方ないだろ?」


そう言われるとルナとカティナはそうかも、と納得してしまった。

三人は街から近くの教会を目指して歩く道中にエトナーは地図を広げた。


「ルナちゃんの飛ぶ速度にもよるが宿泊する場合、経由する教会は村にある」

「村にあるとなにかあるんです?」

「食事の量と宿の質は期待できない」


その言葉にルナの顔がキュッとなった。

美味しいものかどうかはともかく、量が食べられないのはルナにとって死活問題なのである。

カティナはその点、粗食でも雑魚寝でも樹上で寝ることになっても平気なので安心である。


「その、あの、エトナーさんのお力でどうにかなりませんか」

「寒村ってほどじゃないが、私の名前出して歓待させたら彼らの生活費を圧迫するんだぜ」

「うぅぅぅ……」


そう言われるとルナは大人しくなるしかない。

気遣い無用で宿だけを借り、翌日出発するのがもっとも迷惑の掛からない方法なのだ。

聖人の名を使えば、と安易に考える者に聖人と名乗る資格はない。


「ごはん……」

「まだそんなに歩いてないだろ」

「食事が期待できないなんて言うからですよ」


ルナはワイルビーで食べたものほどではないにしろ、量くらいはと考えていたらしく露骨にがっかりしている。

そうでなくても二日間の強行軍で馬力を使う担当である。


「石でも食べるか……」

「おいばかやめてくれ、まだ半日も経ってないぞ!」


食料は強行軍に余裕を持たせて四日分。ほとんどが干し肉やドライフルーツである。

保存の利くパンなども持ってきているがもちろん今食べるものではない。


「私のを分けるから我慢しろってば」

「はぁぁぁい……」


そう言いながらエトナ―が珍しくルナを励ましながら歩く。

仕方ないのでカティナの提案によりティナから事前に聞いていた商会の中継基地を経由することに。


「ユピトール商会の中継基地が近くにあるんだな」

「そうなんです、イシシさんの輸入品が入ってくるようになったから増設したところみたいで」


ワイルビーから川を上っての輸入路が開通したことで街に舶来物が入ってくるようになった。

ユピトール商会はそこからウッドリーフを経由して輸入品を輸送するルート確保の為各地にキャラバン隊の中継基地を作っているそうだ。

ティナが居れば各地にあるまだ地図にも載っていない基地の場所がわかるのだが、あいにく彼女は補習のまっ只中。

そうそう上手くはいかないもの。


「まあ色々とルナちゃんの力は隠したいので積極的には使えない場所です」

「空を飛べるなんてバレたらこき使われるだろうしな」


空輸までできるとなると今の早馬など目じゃない速度だろう。

人を乗せるのは初体験でも手紙や簡便な荷物などなら最高速で飛べば数日で各地を飛び回れる。

そうなれば魔法による特殊な通信を使えない人々にとって伝わる情報の早さ、価値の上昇は計り知れない。


「為替も手紙も、契約もワイルビーやウッドリーフから全部一両日中なんてことになったらユピトール商会は大枚叩いてでもルナちゃんに頼みにくるだろうなぁ」

「そうですね……」


実際ルルイエは転移術による神出鬼没な移動手段で各地の情報をつぶさにキャッチしている。

各地の連絡員が集めた情報を決まった時間に特定の場所や本人、もしくは分身にそれを届けている。

その情報力によっても彼女は世界に強い影響力を持っている。

飛行能力による情報伝達はそれに準ずるものなのだ。

この世界では伝書鳩などもまだ発達していない。

空を飛ぶにしても障害となる生物が多く、人間に飼育できる鳥類では決まったルートを通ることすら難しい。


「その点大悪魔なんて誰も狙わないし」

「自分から餌になりに来る生物なんていませんよね……」


高速かつ、大型で、底なしの魔力を帯びた大悪魔を襲う自然界の生物など存在しない。

高速道路を走っている大型のダンプカーを止めようとする者がいないのと同じだ。


「さて、それじゃルナちゃんに栄養補給して夜に備えてもらおうか」

「ですね」


何故かすでにぐったりしているルナを抱えて二人はユピトール商会の中継基地へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。