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道案内には!

エトナーは豪快にうがいすると口元を袖で拭ってルナの所に戻ってきた。


「うーっぷ、カティナちゃんが里帰りか」

「そうです」


エトナーはルナの言葉を聞いてふむ、と顎に手を当てて考えるそぶりを見せる。


「イベントごとじゃねえよな……なんかあったのか?」

「ありましたけど……逆に里帰りするようなイベントごとってあるんですか?」

「そりゃあ、お産とか」

「私達は学生ですよ?結婚すらしてませんが」


呆れた様子のルナにエトナーはがはは、と笑いながら言った。


「そりゃそうだわな!だがまあ、私が若い頃はルナちゃんくらいの頃には既に嫁いでるヤツも珍しくなかったもんでな」

「ごしゅじん、聖人様のわかいころって何年前のことですかね?」

「百年単位じゃきかないかもしれないね」

「聞こえてんぞ!」


実際貴族社会や上流階級では御家の約束事ということで許嫁や将来を誓った相手がいるのは珍しくない。

中には子供のころに運命を感じて親に頼み込む人もいるらしいがそれはレアなケース。

しかし意外な事にそうしたひとめぼれの方が上手く行くことも多いのだとか。


「一目惚れってそんなに良い事なんですか」

「魔法使いやら特殊な家系ほどな。中にゃお前さんの両親みたいに職種を越えて直感に導かれるケースもあるわな」

「えっと、話が逸れましたけど……お手紙がカティナちゃんの両親に届いてないみたいなんです」

「手紙が?まあ国境挟んだら色々とめんどくせえけど……それにしたって妙だな」


エトナーはその話を聞いてルナが自分に話を持ってきた理由に合点がいった様子だ。

がりがりと頭を掻くとエトナ―は立ち上がった。


「出発は何時頃にする?」

「私も同行しますので、数日以内に出発するくらいには」

「わかった、準備しとくよ」


随分と急にも関わらずエトナーは二つ返事だ。

ただ何かしらの異変を察知したらしいエトナーの素振り。

その事にルナはちょっと不安に思ったが今度はアダムに出発の日時を伝えなければならないのですぐに学校へ。


「ディーン先生、エトナーさんがついてきてくれるそうです」

「そうか、出掛ける準備はどれくらいで終わりそうだ?」

「お母さんに頼んだら道具類は貸してくれると思うのでそれほどかからないかと」


アリシアは神官時代に諸国を遍歴して修行していた経験がある。その際に旅の経験を積んでいるのだ。

装備さえあればルナもアダムにサバイバル技術を教え込まれているので火起こしから一枚布とロープでテントを張ることなどもできるのだ。


「わかった、こちらも準備しておこう」


アダムは短くそう言うと補習で頭から煙を出しているティナとクロエを見つつ教壇に座って何かを作り始めた。

ルナは会釈してそのまま家へ帰ることに。



「ただいまー」

「ただいまです」


家に戻るとリビングではイングリッドが先にソファの上で伸びていた。


「おかえりー」


ごろりと転がりながら二人に言う姿にはもはや遠慮もなにもあったものではない。

彼女も随分とフラウステッド家に馴染んだものだ。

傍から見れば厚かましくもあるがそのお陰でクインクは変な遠慮をせずに暮らせている。

人生、何が役に立つかわからんものである。


「お母さんは?」

「キッチンに居ると思うよ」

「ありがと」


ルナはそう言いつつキッチンへ向かうとアリシアが夕食の準備を始めていた。


「おかーさーん」

「あらおかえりなさい、どうしたの?」


山盛りの野菜を素早い手つきで捌きながらアリシアは煮込み料理を作っている。

クインクは二人が話し始めたのをみて手を洗うとちまちまと野菜の皮むきをし始める。


「実はカティナちゃんが里帰りするのについて行くことになって」

「あらあら、随分と急ねぇ……なにかあったの?」

「お手紙が届いてないらしいの、エトナーさんもついてきてくれるけどご両親が不安に思ってるかもって」


一応サピスキアのことは伏せつつも事情を説明するとアリシアは、以前ルナがルルイエと命名式に出掛ける際に用意した装備一式を思い出した。


「そう言えば前に用意したのがあるでしょ?アレを使うといいわ」

「あの大きなリュックの?」


あのときはルルイエの転移を利用したため着の身着のままで大丈夫だったが、今回はちゃんとした旅になる。

宿なども宗教施設などを利用すると素泊まりになる可能性が高いので準備を怠るとひどい目にあう。


「聖人様とご一緒なら教会で寝泊まりすることもあると思うわ」

「宿だとお金かかるもんね」


教会が旅人や巡礼者に宿を貸すのは施しの一種である。

慈善活動の一種なのだがその分扱いは宿とは比べるべくもない。


「そうなると礼拝堂とか一般開放しているところで寝泊まりすることになるかもしれないから気をつけてね」


教会の貸してくれる宿は宿と言いつつもただ屋根付きの場所を貸してくれるだけという場合もある。

そうした場合、簡素な石づくりの礼拝堂にそのままごろ寝することになる。

底冷えする礼拝堂にそのままごろ寝すると体調不良一直線なので毛布や寝袋は必須になるのだ。


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