満場一致ですが
ルナは何か言おうとしたが自分経由で誰かの力をいくらでも借りられるという事実を突きつけられて沈黙した。
ルナ単体でどうにかするのではなく、ルナを連れて行くことで誰かしらがカティナを助けてくれるというわけだ。
「それに空飛べるじゃん」
「壁も歩けるよね」
そして本人は忘れているが悪魔の力がある為、ルナは地形を無視した移動が可能だと言うこと。
蜘蛛の形態では断崖絶壁も平地と変わらず、深い渓谷も蝙蝠の姿なら飛んでいくことも出来る。
余程の大河でも無ければムカデの形態なら上半身を出したまま、小川なら跨ぐことすらできてしまう。
旅に向かない点があるとすればはルナがかなりの健啖家だと言うことくらい。
後は見た目が見た目なので悪い虫が寄ってきやすい。
そう言った意味ではルナも同行者としては心許ない所があるのだ。
「そうなると、旅慣れていていざと言う時に頼りになる人物か……」
そう言うとアダムはちょっとだけ嫌そうな顔をした。
最適な人物が二名いる。
しかしどちらも癖の強い人物である。
言うまでもないがその人物とはエトナーとルルイエのことだ。
ルルイエならば空間を歪めて即座にルナ達を送り届ける事が出来るが、何を仕出かしたのかルルイエはエルフから蛇蝎の如く嫌われているのである。
次にエトナー、彼女はエルフにとってこの大陸でも唯一と言っていい最長老の人間である。
アダム同様にエトナーもエルフの歴史の中で千年単位で関わって来た御伽話のような存在である。
そして何よりカティナの故郷の場所も両親とも面識がある。
「無難なのはエトナーだが……」
エトナーはあちこちに知り合いがいるが、近くを通ると必ずと言っていいほど寄り道をする。
知り合いが存命の内にと毎回のように寄り道するので同行者は大抵遅刻してしまうのだ。
「余程の理由がないと時間がなぁ……」
「ではどうしたら?」
ルルイエ、と言いかけてアダムは口をつぐんだ。
ルナの頼みなら二つ返事だろうが、こちらもこちらで問題がある。
ルルイエが蛇蝎の如く嫌われている関係上、ルナがうっかりルルイエとの関係を吐露した瞬間にルナは里には入れなくなってしまうし、カティナの両親もルルイエの関係者に娘を任せたくないだろう。
アダムやエトナ―がプラス評価の極致に居るとすればルルイエはマイナス評価の極致にいる。
たぶんエルフの服とか虹色にしたんだろう。
「うーん……」
アダムは本気で悩んでしまった。
「先生が本気で悩んでるね」
「そんなに難しいのかな?」
ルナの頭の中ではエトナ―とルルイエが交互に浮かんでは互いを押しのけたり髪の毛を引っ張りあっているのが見える。
どっちもルナに対しては世話焼きであるし、もろもろの実力をみても最適ではあるのだが。
「カティナちゃんはエトナーさんといつから知り合いなの?」
「故郷で何度か会ったことあるから小さい頃からかな」
「そうなんだ、じゃあやっぱりエトナーさんに頼んだ方がいいのかなぁ」
ちらりとアダムを見ると結論を出したのかこちらにアダムが歩いてくる。
すると……
「フラウステッド、エトナ―に頼むなら出発する前に教えてくれるか」
「はぁ、わかりましたけど……」
「くれぐれもよろしくな」
アダムはそう言うとカティナに内容をすべて読んだか確認してから黒板の文字を消して、授業に戻った。
それから、放課後になったFクラス。
ティナとクロエが補習に連行され、カティナとルナ、クインク以外が帰宅した中でのこと。
「とりあえずエトナーさんに話してみようと思う」
「それがいいね」
カティナとルナは軽く相談した結果、やはりエトナーに頼むべきと判断した。
「そういえばなんだけど」
「どうしたの?」
「クインクちゃんに代わりに出席してもらったら勉強は大丈夫なんじゃないの?」
カティナがそう言うとルナはクインクを見やる。
確かにそうしたら大丈夫だろうが
「ひぃん……」
「ダメダメ」
「だね」
置いて行かれるかもと思ったクインクが小刻みに震え出したのでやめにした。
ルナに置いて行かれるとクインクはアリシアから離れられなくなってしまうのだ。
一人ぼっちは辛いのである。
「それじゃ私達はエトナーさんの所に行ってくるね」
「わかった、お願い」
カティナは一足先に旅支度を始め、ルナはエトナーのいる教会へと足を運んだ。
「エトナーさん、ご在宅ですか」
「神様はいないが……、私ならここにいるぞ」
聖職者らしからぬ発言をしながら教会の長椅子の背もたれからエトナーの手が伸びた。
どうやら寝ていたらしい。
「どうしたぁ……」
「二日酔いですか?」
「そんなとこだ……」
ゆらりとおきあがると真っ青な顔をルナに向ける。
どよんとした雰囲気が漂っているがこんなでもそこらへんの悪魔なら片手でボコボコにできるのだから恐ろしい。
「……なんか用事か?」
「カティナちゃんが一度故郷に帰らないといけないんです。それで一人だと心細いからって」
「ああ……、そういうことね……。ルナちゃんも来るのかい……?」
ルナが頷くとエトナ―は立ち上がってふらふらと台所まで歩くと
「清めたまえ、神の息吹」
短くそうつぶやいた、そして淡い光が彼女を包んだ後に
「お゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇーーー!」
エトナーは盛大に吐いた。




