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一人でダメなら誰かについてってもらおう

ルナは手を挙げてアダムに言った。


「それなら誰かについて行ってもらえばいいんじゃないでしょうか?」

「ふーむ、それは確かにそうなんだがな」


アダムはそう言うとエルフの森について話し始めた。


「彼らは秘匿された森の中に住んでいる。その理由はわかるか?」

「エルフが環境に影響されてすぐに別の種族と似た姿になるって言ってました」

「すぐって……だれが?」

「エトナーさんです」


アダムはルナがもしかしたら誤解しているのでは、と一瞬思ったが話の筋には関係ないのでスルーする。

不老不死のすぐなんぞまったくアテにならないのである。


「我々にとってはエルフの前にハイがつこうが何がつこうが関係ないが、始祖のエルフが産まれる可能性が最も高いのがハイエルフという説が一般的なのだ」


その一般的というのもかなりレアだが。とアダムは言う。


「そして始祖のエルフは何が出来るか、覚えている者はいるか?」

「は「フラウステッドは知ってるからパス、アインザッツもな」……はぁい」


アダムはカティナとルナを除外して残りのメンバーに目をやる。


「はい、先生!」

「珍しいな、クライグス」

「多分知ってるダズ君が寝てるのでわかりません!」

「そっちかよ……」


座学の成績は意外や意外。ダズは非常によろしい。

育ちが良いのか諸芸にも通じており、種族としての鋭い感覚から音楽などにも知識がある。


「アッテンボロー!起きろ!」

「ふがっ!」

「この、最近とみに図太くなりおってからに!」


鼻を摘んで無理矢理顔を上げさせたがダズはまったく目を覚まさない。

とりあえず起こした後、アダムはいびきをかいているダズの鼻に粉薬を送り込んだ。


「なんの粉ですか?」

「からし」

「えっ」

「からしの粉末」


少しするとダズの顔色が赤から青に点滅し始めた。

そして大きく咳き込み、大きなくしゃみをした。


「お゛ばよ゛う゛ございま゛ず」

「ホームルームから居眠りとはいい度胸だぞアッテンボロー」


凄い声になっているが、黒板の文字を見るとダズは目を擦り、懐紙を取り出して盛大に鼻をかむ。


「今日の一限目はエルフ語の授業です?」

「わかるのか?」

「触りだけなら」


ダズは欠伸をしながら答える。

魔法の知識や力量こそ一年生だがそのほかの知識ではかなりのもの。

それ故にか座学ならば優秀である。


「それで、純血のエルフがなぜ秘匿された森に暮らしているかわかるか?」

「始祖のエルフが産まれる可能性が最も高いのがハイエルフ、そして始祖のエルフはすべてのエルフの知識を持ち合わせた歩く大図書館といったところだからでしょうかね」

「起こしたかいがあったな、正解だ」


ハイエルフから産まれる始祖のエルフを独占できた時、その人はエルフを介した遍く情報を知ることができるという。

Fクラスにとってサピスキアは時折変なことをする人面鳥の友人くらいの認識しかないが、世間ではこの変な人面鳥を得られるかどうかで政局が変わる国もあるのだ。


「さて、それでだな……カティナが家族宛てに書いた手紙がどうやら届いていないらしい。家族に安否を告げるためにも一度帰郷する必要が出てきた」


アダムはそこで、と皆に問い掛ける。


「アインザッツが一人で帰郷するには少し心もとないが、その場合誰をつければいいと思う?」


同行者を選ぶとしたら?とアダムはつづけた。

Fクラスは全員が少し考えた後


「「「「「ルナちゃん(さん)」」」」」

「エトナーさん……あれっ!?」


ルナ以外がルナを指名した。

驚いているルナを他所にアダムは皆に理由を尋ねる。


「ユピトール、何故だ?」

「ルナちゃんはカティナちゃんと一番仲良しだし、強いし、知り合いも多いよ」

「……同じく」


付き合いの長いティナとクロエはカティナが好む人物であり、単体での能力と知り合いの多さから推薦したようだ。


「腕っ節なら負けないが、俺はドワーフだからエルフの里には行けない」

「こちらも、金属の臭いが落とせないでしょうから」


男手ということで候補に挙がるはずの二人はエルフとの相性から同行を断念するしかない。

そもそもダズは腕力だけなら他の面々と似たり寄ったりだし。


「私はそもそも旅が無理だしね」

「私は平気だけど、両親の許可がもらえるかわからないので……」


イングリッドとマリーは自分の体質と家庭環境から辞退するしかない。

本来なら双方種族的にかなり有利なのだが、イングリッドは発育不良で旅どころか登校すら怪しい有様。

マリーも誘拐騒ぎに巻き込まれたので両親や家族が長距離移動にいい顔をしないのだ。

そうでなくても子供の二人旅など普通は許可しないだろう。


「そして私とクロエちゃんは」

「言わんでいい、お前らは補習がある」

「ふぎゃー!」


元気印のティナはそもそも単位が怪しく、留年しかかっている。

クロエも実は似たり寄ったり。どちらも感覚派の魔法使いのため座学が壊滅的なのだ。


「そうなると各地の寺院や神殿を利用できて、知り合いの多いルナちゃんが最適だよね」


ティナの言葉に皆が頷いた。

ルナはイシシと知り合いなので海路ならば護衛付きで利用できる。

エトナーの弟子なので日光教のバックアップを受けられる。

ルルイエの弟子なので各地の魔法使いの拠点を利用できる。

バエルの孫なので悪魔の力を無償で借りられる。

クインクが居るので上級悪魔の力も使える。

オマケにティナ経由でユピトール商会の交易ルートを通ることもできるのだ。


推されるのも当然だろうか。


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