二棟目!
「ふーむ、これでは魔法もあまり効果はありませんな」
「入り口には魔法を防ぐ防壁なども立っているし、衝撃は扉に積んだ土嚢が受け止める構造になってますね」
どうやらエルドが参加するのを察知して防御を固めたのかも知れない。
「こうなると突入口を作るか、二階部分を攻めるしかありませんな」
「そうなんですが、それも対策がされていましてね」
指揮者が指さすと窓には魔法で展開したのか茨の植物が巻き付いており、二階からの侵入を阻んでいる。
「こうなると無理にでも突入するか」
「別に入り口を作るしかないですな」
そう言うと指揮者はエルドに道具箱を示す。
そこには普通サイズの掛矢が置かれている。
木製だが頑丈な木材を使用した掛矢は扉を破壊するのに十分な威力を秘めている。
「しかし片方だと流石のエルドさんも厳しいでしょう」
「それは何故です?」
エルドの問いかけに指揮者が指さすと、襲撃者側が何人かに分かれて壁沿いに歩いている。
そんな彼らに建物の中からなにやら落ちてくるのである。
「いててっ!」
「く、くそっ!」
中には土嚢に詰めていた砂や砂利だ。目や服の中に入って作業を妨害している。
「うーむ、なるほど。演習だから砂や砂利だが本番だと熱湯や岩が落ちてくるというわけだな」
「本格的!」
「し、城攻めなんですか?」
クインクがそんなバカなと言いたげだが、考えて見れば建物を倒壊させるような奴がいるのだ。
なんだか腑に落ちないが守る側の必死さは理解できた。
「とにかく、壁か扉を破って突入するのが次善の策でしょうが単騎では危険というわけです」
そこでエルドはふーむ、と考えてルナを見やる。
「それでは陽動を兼ねて三方向から攻撃を掛けよう」
「三方向と?」
「君等が扉に、ワシとルナが二手に分かれてこれで壁を叩く!そうすればいずれかの守りは手薄になるはずだ」
「なるほど!」
ルナがいつの間にか頭数に入っている。
クインクは一人仰天していたがルナは当然のように掛矢を手にやる気を見せている。
「ご、ごしゅじん?私達は応援に来ただけでは……?」
「参加していいらしいからお手伝いしてくるね!」
「ごしゅじーん!」
伸ばす手も虚しく、指揮者は正面のグループに指示を飛ばしてじりじりと一番守りの厚い正面玄関に圧力を掛けている。
エルドは左側に、ルナは右側に回り込んでいるのが見えた。
「ひ、一人にしないでー!」
クインクは仕方なく金属製の小さなスコップを手にルナの後ろを追い掛けて行った。
「相手方が三方に分かれました!」
「くそっ、どれが本命だ?」
守衛側は城に勤務したことのある兵隊上がりがいた為、防備をガチガチに固めていた。
必勝を期していたがエルドと言うイレギュラーが発生した為、先行きが不透明になってきた。
「正面は恐らく陽動だろうが、そうなるとあの大男だ」
「エルド・フラウステッドですね」
「あの男が相手となると単なる石造りでは不安だ、とにかく防御の厚い場所に誘導して時間を稼がねば」
そう言っている内に壁に近づいたエルドが豪快に壁を叩いた。
魔法を薄く張り巡らせ、壁を緩衝材のように包んでいるもののその一撃は音と衝撃で守衛側を仰天させた。
「ゆ、揺れてるぞ!」
「相手は一人だろ!?」
ドコドコと掛矢で壁を殴りまくっている。
衝撃を吸収する目的で防壁を張っている魔法使いは張り直しを余儀なくされるので時間が経つ毎に顔色が悪くなっている。
「妨害しろ!もしかしなくてもあのゴリラが本命だ!」
玄関に取り付いた襲撃者側のチームは扉にスコップやバールを突っ込んでいるがそもそも土嚢で物理的に埋まっているのでビクともしない。
そうなると緊急で対応すべきはやはりエルドだろう。
「上から落とせるもん落としまくれ!」
窓からぽいぽいと砂や砂利、植木鉢などが落ちてくる。
「うぐっ!むっ!くっ!」
砂が積もった上に砂利が乗り、植木鉢が乗って真っ二つに割れる。
砂の上に植木鉢の中身が乗ったまま残り、エルドの頭の上に花が咲いた。
それでもめげないあたりがエルドの頑丈さであり、強襲する際に抵抗を踏み越えてきた経験でもある。
頑丈さ以上に動作を止めない鍛錬を積んでいるのだ。
やせ我慢ともいう。
「なかなかひるまないぞ!」
「このやろう!」
お互いの意地の張り合いになってきている。しかし彼らには誤算があった。
ルナもエルドほどではないにしろ十分に怪力なのだ。
「えーいっ!」
ドーン!
壁を掛矢で叩くとエルドほどではないにしろ壁に大きなダメージが入る。
壁に罅が入るくらいだ。
「うそっ!あっちも!?」
「投げるもの……」
壁を叩きまくるルナに対して植木鉢を持ってきた守衛側の面々は相手が女の子なのを見ると露骨に躊躇った。
そして仕方ないので
「じゃーっ」
「ミ゛ーッ!」
如雨露で水を垂らし始めた。こちらは効果てきめん。
ルナは濡れるのを嫌がって右往左往している。




