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落ちこぼれの私が最強の悪魔に転生したらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、治安維持部隊の演習に行く
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秘伝!直伝!

「うってつけと言うとレインさんは身体強化の魔法が使えるんですか?」

「もちろんさ、私の母の一族に伝わる魔法でね」


そう言うとレインは踊り子風の衣装を示して優雅にポーズを取った。


「この衣装は伊達じゃないのさ」

「じゃあ踊りが関係してるんですか?」


ルナの言葉にレインは頷く。

踊りは古来から神前で捧げ物として踊ったり、祭礼で踊ったりと儀式と深く根付いている。

魔法使いや巫女の踊りの中には鳴らす楽器の音色や揺れ動く衣装の布などを使い、視覚や聴覚を介して相手になにかしらの魔法や催眠術を掛ける方法がある。

これらはある意味で聖術と同様に厳しい条件があるのだ。


「相手に踊りを見せること、そして意識と魔力を集中させる事で音に意味を、踊りに力を持たせる」


まずは見てて、とレインは鈴を取り出して両手に持った。

そしてそれを時々鳴らしながらステップを踏んで手を動かす。


シャンシャン


タンタン


足音と鈴の音、そして身振りを見ているルナはすぐに自身の体に変化を感じた。

体がポカポカと温かくなり始めたのだ。


「これは……」

「感受性が豊かだね、魔法的な意味でもだけど」


独楽のようにくるりと一周回って、レインは立ち止まった。

鈴の音を消し、まっすぐに立つとルナの体に起こった熱はまるでお湯が水に戻るようじわじわと消えていく。


「これが舞踊による身体強化。私は熟練しているが、あなただとどうだろうね」

「なにか条件があるんですか?」

「踊りは全部に意味がある事が多い。詠唱と同じなんだ」

「というと……踊りで身体強化の魔法をしようと思ったら一曲全部踊るんですか?」

「そこまではしないが、それに近くはある」


レインは鈴を見せる。そして先ほどと同じようにシャンシャンと鳴らす。


「これが詠唱の最初の一節だと思ってほしい。火の魔法に言い換えると『火よ』ってくらいかな」

「短い……!」

「そうだね、そしてこの動きで」


タンタンとステップを踏む。


「『燃えあがって』……くらいかな」


そして最後にくるりと一回転するステップを踏む。


「ここで『敵を撃て』になる」


そしてまたルナの体がじんわりと温かくなる。


「またあったかくなりました!」

「やりがいのある子で嬉しいよ」


レインはくすくす笑いながら言った。ルナはそんな彼女に疑問をぶつけた。


「ところで感受性ってどういう意味です?」

「芸術と人情を理解できないとどうも困るんだよ」


レインの言葉にルナは頭にクエスチョンマークを浮かべる。

それにシュトリクが溜息をつくと説明してくれた。


「音楽と、気持ちを理解してくれないと効きにくいってことよ」

「音楽と気持ち?」

「かける相手に『あなたの為にやってます』って言う事が伝わらないと魔力が乗らないから効果が弱まるの。思い込みみたいなものの力を利用するところもあるから」


その点、ルナちゃんはとっても強化しやすいわ。とシュトリクは言う。


「良い子だし、魔力を感知する能力が非常に高い。応援を素直に受け取って、魔力を十分に吸収できるから舞踊による身体強化ととっても相性がいいわ」

「ルナちゃんに問題があるとするなら音楽の知識だろうけど、これも音と身振りに集中してくれたら問題ないね」


二人はルナの頭を撫でながら言う。ルナはまるで猫のように目を細めながらされるがまま。


「あー、もう可愛いわぁ」

「ほっぺたもちもち」

「うゆゆゆゆ」


しばらくいいようにされた後、レインは何事もなかったかのように言った。


「身体強化がしたいならステップと楽器と相手を思う気持ちが必要だ」

「さっきも聞いたヤツですね」

「そうだね、それで君に必要なのはステップと楽器ということになる」

「む、むずかしそうです」


ここで舞踊による身体強化がなぜ使い手の少ない希少な魔法なのかということに帰結する。

まず掛け手に求められるのが


・踊りの技術

・楽器の技術

・相手への真摯な気持ち


が必要であり、さらに受け手にも


・音楽への理解、もしくは興味

・音がしっかりと聞こえ、もしくは踊りが見えること

・相手が自分を応援してくれていると自覚すること


と、様々な前提条件がかかってくる。

だがこれをクリアできれば聖術よりも素質的なハードルは低く、通常の魔法よりも魔力の消費は少ないのだ。

それでいて効果は高めであり、身体の負担も少ない。

これだけ書くと前提条件さえクリアできればいい事づくめに見える舞踊の身体強化だが実際は即効性に乏しく、どうしても準備時間が必要な事、高い効果のものほど効果を発揮するのに時間がかかることがあげられる。

それ故に効果はともかく実用性が問題視されて徐々に廃れつつあるのだ。


「まあデメリットが無視できない魔法だからね、ルナちゃんがもし覚えてくれていたら断絶する可能性も減るから覚えてて欲しい」


ルナはちょっと気軽に教えてもらうつもりだったのが廃れつつある伝統技術の担い手にされそうになっていてちょっと困惑した。


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