試しにやってみよう!
エトナーがひっくり返っているのを知らず、ルナは帰路についていた。
「出来ることは分かったけど、どんな感じだったんだろ?」
ドアや長椅子を破壊するほどの強化が入っているとは思うまい。
「うーんとこ、うーんとこ」
のんびり歩いていると荷車を引くティナに出会った。
日課の鉄くず集めのようだがどうやら欲張ったのか色んな物が乗っている。
「ティナちゃん、なにしてるの?」
「鉄くず拾いながらガラクタも集めてるのさ!」
ティナは価値の有りそうなものや廃材を拾い集めては旧館に持ち込み、ダズやテイロスに修理してもらったりして商品にリサイクルしたりしている。
また彼女が集める木くずは高級家具などの端材が混ざっているためテイロスの作る武具の材料にもなる。
鉄くずも同様だ。
「これだけ集めれば今月は困らないかなー」
「お疲れ様だね」
ティナは学費を自力で稼いでいるためいつもお金を稼ぐ方法を探している。
先生が目を光らせている中にも関わらず何度か既にエルフの霊薬を売り捌いたりしているくらいだ。
「ただ、ちょっと、重くてさー!」
ティナはそこまで力が強いわけでは無いので木材や鉄くずの集まった荷車は重いだろう。
こんな時は大抵テイロスやルナが代わることになるのだが。
「あ、そうだ」
「?」
代わってくれないかなー、なんて思っていたティナはルナが何か思いついたらしいのを見て足を止めた。
「どったの?」
「実は身体強化の聖術を勉強しててね」
ルナは少し集中するとティナの背中に手を当てて
「ティナちゃんがんばって!」
と声に出した。
「もち!……で、なにしてんの?」
「え、いや、これで上手く行くかなーって」
首を傾げてティナは歩き始める。すると、荷車が軽くなっているのに気付いた。
「およよっ?」
「どう?」
「どうって、なんだか荷車が軽くなったよ!」
そう言うティナの足取りは先ほどまでと打って変わって軽いものになっている。
荷物が減った?と時折振り返っているがもちろん減ってなどいない。
「成功したね!やった!」
「聖術の強化と魔法の強化と何がちがうの?」
「ホントだと聖職者同士でないと使えないみたい」
「へー……へ?じゃあ私はどうなるのさ?」
私は尼さんじゃないよ?と不思議そうにしていたがルナもよくわかっていないので首をこてんと傾けるばかりだ。
「私はちょっと力の使い方が違うみたいだから」
「ふーん?でもさ、それって他の人にほいほい使っていい奴なの?」
ティナはなんとなくこの力の由来が本来の出どころと違うのではないかと思っていた。
感覚派であるティナはこれが普通の聖術ではない事を第六感的な感覚で掴んでいたのだ。
「大丈夫だとは思う、だってエトナーさんが教えてくれたし」
「あんまし大丈夫の基準に届いてないとおもうけどなー、その人」
ティナからすればルナの体質が常識はずれであるのと同じようにエトナー自身も常識はずれだと思っている。
言ってしまえば化け物レベルの者がお互いを常識的と言い合っているようなもの。
素直に信じていいのか疑わしいのだ。
「でさ、これってどれくらいで切れるの?」
「……」
尋ねてみたところルナは黙ったまま視線を泳がせ始めた、
「わかんないんだね!?」
「ご、ごめんね……」
「どうなるんだろ……」
さっきまでうんうん言いながら引いていた荷車の荷台が空っぽになったかのような感覚だ。
目的地に到着できるまで持ってくれればいいが、途中で突然切れたら困る。
もしくは日を跨いでも続いていても困る。
「とりあえずいつ切れたか覚えておくね」
「ありがと」
ティナは困ったように笑いながらそのまま荷車を引いて歩いて行った。
その背後を見守りながらルナは考える。
強力かもしれないが効果が終了する時間がわからないのは不便だ。
やはり逐次魔力を供給する形で発動する魔法型の身体強化の方がいいのかもしれない。
そう思ったルナはいざという時に備えて別の方法も模索することにした。
そしてさらに次の日。ルナはまた別の所を訪ねた。エトナ―はまだ教会で寝っ転がっていた。
本人曰く重ね掛けでえらい事になってるんだろうと言っていたが動く度に何か壊すのでじっとしているとのこと。
もちろん練習なんてできるわけもない。そういうわけで別の所に向かったわけだ。
「で、私の所に来たのね!」
どこか嬉しそうなのは銀の黄昏の幹部であり、ルナと仲良しのシュトリクだった。
彼女は優秀な魔法使いであったがどちらかと言えば物体を操作するタイプだ。
魔力を循環させるというより魔力を遠くに及ぼしコントロールするタイプなので強化とは別ベクトルなのだが……。
「まあ任せて、私は使えないけどうってつけの人がいるから」
そう言うと彼女が連れて来たのは彼女と同期であり、同じく銀の黄昏の幹部であるレインである。
踊り子風の衣装に身を包んだ彼女は父から受け継いだ人形を操り、使役する魔法と母から受け継いだ魔法がある。
ポエトの遺物から記憶を読み取る能力を利用して彼女は死別した両親の技術を継承しているのだ。




