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一方そのころ……

Cクラスがカンニング騒ぎの中、Fクラスはというと。



「おはようございます、皆さん」

「「「おはようございまーす」」」


ボーボが教室に入ってくると着席していたルナ達はボーボに挨拶を返した。


「今日はディーン先生の代わりに私が授業を担当しますよー」


そう言うとボーボは乳棒と乳鉢など調合に使う道具が入った箱を教壇の横に置いた。。

皆が何をするのかと好奇心に満ちた様子で見ているのを見てボーボは笑顔になる。


「座学も大事ですが魔法に関わる事、食べること、飲むこと、そう言ったことはやってみない事にはわかりませんね?」


ボーボの言葉に全員が頷く。ティナは特に大きく頷いている。


「私の担当は薬草学、魔法使いには欠かせないボーションの調合方法などを教えています」


今日はポーションとマナポーションの作り方を勉強しましょう。とボーボは言う。


「じゃあ今日は実習ですか?」

「そうです、ですが最初はポーションの材料を覚えるところから始めましょう。調合は午後からです」


ボーボは白墨を滑らせて黒板にポーションの材料を書き出していく。


「やってみない事には、と言った手前ですが材料くらいは覚えないと話になりませんのでね。今からいう材料をノートに書いていってくださーい」


そう言ってまず書き出したのはモギヨとハクドク、シケツグサの三種類である。


「これらの三つは安価で手に入りやすく、効果が確認されている定番のものです」

「はい先生!」

「はい、フラウステッドさんですね?どうしました?」

「聞いた事があるものばかりですけど……これって野草でしたよね?」


ルナが手を挙げてした質問にボーボは頷いた。


「その通りです!これらは皆山や野原で簡単に手に入るもの。それでいて効果が高く、加工方法や選別の方法を知る事は皆さんにとって大いに助けになるはずです!」


魔法使いは神秘を操る存在であるが、治癒や治療に関しては教会の領分であるため治癒魔法などの劇的な効果のある治療法は知らないか使えない者がほとんどである。

中には独自の理論で治癒魔法を組み上げる者もいるがそのレベルの魔法使いはもはや悪魔の領域に足を突っ込んでいる。

そもそもが治癒術は聖術の範疇であり、仕組みが違うから仕方ないのである。

なぜなら魔法使いは一から自分でやるのに対して聖職者は大いなる存在から力を借りて行うという決定的な違いがある。


「魔法で出来ない事は不便ですが、多少の道具があれば作成できるポーションや薬草を服用する知識があればどこでも傷薬を用意できます」

「これが咄嗟の命を救う事になるんですね」

「そうです、聖職者の方々も万能ではありません。彼らも治療を重ねると疲労しますし、人によっては重病、重傷の方を優先しなくてはならない。その時に何もできないとあっては人としても、知識の研鑽を積む魔法使いとしても辛い思いをする事にもなります」


ボーボはそう言うと懐から古びた腕章を取り出した。


「それはなんですか?」

「これは私が戦地で魔法薬の医師として働いていた時のものです」


ボーボは腕章を机の上に置いて自分が薬草学を教えるに至った事を話し始めた。


「当時、魔法使いというのは兵士というより攻城兵器や投石機といった扱いでした」


ボーボが当時属していた組織では魔法使いは陣地の破壊や城壁の破壊などを狙って魔法を行使する役割が割り当てられていた。

ボーボはその中で魔法薬を作り、兵士達の治療に当たるという別の役割があった。

医師という役割は兵士達にとって命に関わる役職の為重宝されたが同じ魔法使いである戦闘部隊にはいつも軽んじられていた。


「私の魔法は土と水だったので攻撃には向かなかった、それ故に医師としての技術を磨いていたのです」


当時のボーボにとって同業者のはずの魔法使いから格下に見られていた事は屈辱以外の何物でもなかったが、エリートである彼らが同時に羨望の対象でもあった。彼らは治癒術を魔法で代替することもできたのである。

聖術の領域に足を踏み入れていた彼らにとってせっせと薬草を混ぜ合わせてすりつぶしたり、煎じて薬に作り変え、傷口に塗って包帯を巻くようなボーボのやり方はとても原始的に見えていただろう。

ボーボと彼らの魔法使いとしての技量はまさしく天と地ほどもあったのだ。


「しかしその幻想はあっけなく、最悪の形で砕けました」


戦いにはいつも勝ち負けのどちらかがやってくる。勝っても負けてもボーボの仕事は無くならないが負ければ自分の命も心配しなくてはならない。

とある敗戦を経験した時、ボーボは持てるだけの医薬品を持って仲間とともに脱出し、追っ手から逃れた地で負傷兵の手当をしていた。兵士達はボーボがおらずとも多少の止血や傷を衛生的に保つ方法を知っていたが……。


「その魔法使いたちは殆どが帰ってきませんでした。理由は明白です。彼らは兵士達よりも医療の知識がなかった」


常に怪我を負う事が多い兵士達は治療を受ける内に医術とは言えないまでも応急処置のやり方や農村出身者が薬草などの知識を持ち合わせていた。

しかし魔法使いたちは治癒や止血に魔法を使用していた為に敗走という混乱と消耗の中で魔力を使い果たした状態ではなすすべが無く、結果として戦場から逃げる内に病や失血により命を落としたのだという。


「ほんの少しの止血が、傷口の消毒が命を左右することは少なくありません、緊急事態ともなればそれがさらに顕著になります」


技術が発展しても傷薬や止血剤の重要性は変わらないのだ。


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