どうやって?
サピスキアの能力をもってすれば皆に何かしらのペナルティを科す事ができるようだが……。
「どうやって教室に入るんだ?」
「変装、する」
「体格は誤魔化せんぞ」
アダムがそう言うとサピスキアの首がまた傾きそうになったが、本人もなにかしら真面目に考えているのか堪えている様子。
「は、箱に、入るとか……!」
「お前の入れる箱か……」
カティナとアダムがサピスキアを見る。
身長はともかく体型は鳥型のそれなので下半身が大きく、サピスキアが入れる箱というのはかなり大きなものになるだろう。
教室にあるロッカーなどは論外である。
「布でもかぶせてた方が現実的じゃないか?」
「テストする部屋を変えるとかどうでしょうか?」
サピスキアの為だろうか、先ほどから積極的に案を出してくれるカティナにアダムはその熱意を微笑ましく、いじらしいと思った。
「それはアリかもしれんな、準備室が隣にある教室ならこいつも目立たないし」
「そうですか!」
カティナは有用な提案ができたと思ったのかどこか嬉しそうである。
サピスキアも首をくるくると動かしている。
「すこし下見をして場所を見繕っておくか」
「そういえば始祖様が新館を歩くのは大丈夫なんですか?」
「早朝なら大丈夫だろう。準備室のある教室なら大抵寮からも遠いしな」
そこでアダムが借りる事にしたのは薬学の実習室だった。これはボーボが担当する教科でもあるからだ。
空いてる日がわかりやすいし、調整してもらうにしても相談しやすい。
「実習室ですか、わかりました。机と椅子もちゃんとありますので大丈夫です」
「ありがとうございます、これでなんとかなるでしょう」
実習室では大きな机がいくつかあり、数人が一つのグループになって向かい合うことも多いが薬学に実習室は普通の教室と同じように机を並び替えることもできるのだ。ボーボはアダムに実習室の鍵を預け、重ねて生徒をどうかお願いします、と念を押すと彼も彼の授業の準備に戻っていった。
「ふむ、これで大丈夫か。あとはどうなるか……」
数日後、Cクラスでは登校してきた生徒達が話し合っていた。
「なあ、今日テストあるって聞いた?」
「うん、なんでも前のテストのやり直しするって」
「なんで?」
「もしかしてカンニングバレたんじゃ……」
一人がそう言うと、周囲がざわついた。
しかし別の生徒が
「いや、ありえないでしょ。先生も何も言ってなかったし」
「そうだよね」
そう言うと皆も不安には思いつつもバレてないだろうと思い始めた。
それにバレたらバレたでクラスのほとんどが加担しているのだ。
怒られるのは自分だけじゃないという楽観的な心理が皆に深く考えさせないようにしていた。
「おはよう、皆揃ってるかな」
それからさらに少ししてクラスに全員が揃った頃に教室にアダムが入ってきた。
他のクラスの、それも学年が違う担当が入ってきたので全員が驚いているとアダムは周囲を見渡してつづけた。
「えー、聞いている者もいるかもしれないが今日は前回のテストのやり直しがある」
「先生、いいでしょうか?」
アダムが今日の予定を伝えていると生徒の一人が手を挙げた。アダムはその生徒に顔を向ける。
「なんだ?」
「ボーボ先生はどうしたんですか?」
「ああ、ボーボ先生は今日は臨時で別クラスの担当をしてくれている。テストの試験監督なら別クラスの担当でもできるから今日は私が担当になった」
アダムがそう答えると生徒達も納得したのか何も言わなかった。
ただ、とアダムは今回の再テストの理由を述べた。
「実を言うと別クラスの生徒がカンニングをしていた事がわかった。詳細は伏せるが学年のテストは内容が被ることが多いのでテストの点数の信憑性を示す為にも再度テストをする必要が出てきたわけだ」
「私達が無関係なのに再テストなんですか!?」
一部の生徒が驚いた様子で答える。アダムは内心で白々しい、と思いつつも何食わぬ顔で答えた。
「君達が無関係なのは重々承知しているが、このままではせっかく取った点数の意味が違ってくる。良い点を取った者ほど暗に疑いを掛けられるからな」
ここのクラスは平均点が高いし、とアダムは言った。
生徒達は少し不服そうにしていたがここで拒否し続けるのも不自然だと思い、再テストを受けることになった。
「もう一つ、公平性を保つために教室も変更するぞ」
「教室もですか?」
「ああ、そうだ。聞き耳を立てたり遠見の魔法をつかって問題用紙をのぞき見した事例もあるんでな」
アダムは魔法学校の生徒達のカンニングの歴史を先生や学校のOB、OG達から聞いていた。
生活指導の担当であることの副産物である。
ヤンチャ小僧たちの面倒を見てきたアダムにとって彼らの手練手管の周到さには時折そう言った手段を職業として用いて来た身でありながら驚かされる部分もあったほどだ。
柔軟な発想と魔法という便利なツールを利用して彼らはテスト勉強や補習から逃げおおせるのである。
「それでは筆記用具だけを持って薬学の実習室へ移動するように」
アダムがそう言って教室を出ると生徒達はぞろぞろと移動を開始する。
「教室変えるのかぁ」
「まあ授業潰れるしいいんじゃない?」
「そうだねー」
Cクラスの生徒達は思い思いに私語をしつつも教室を移動していく。
まさか自分達が既にカンニングの疑いを掛けられているとは夢にも思っていない様子である。




