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エルフ語の弱点!

ふむ、とアダムは思案する。

ジャミングだけではその場限りである。もしかすると通用しないと使わなくなる可能性もあったが、それではいたちごっこだ。


「ふーむ、エルフ語をわかる者にビシッと言える何かがあればいいのだが」

「うーん、そうなると……」


カティナがうーん、と考える。


「ディーン先生が使えるものとなると難しいかもしれません」

「そうか……」

「ところで、エルフ語をわかる人にビシッとってどういう……?」

「実はエルフ語を悪用してカンニングやら授業中に私語やらしている不届き者がいてな」


それを聞いてカティナの顔つきが厳しいものになった。

当然だろう。自分の種族の言葉を悪用していると言われては面白いものではないはずだ。


「ボーボ先生の受け持っているクラスなんだが……」

「それってもしかして、あのまん丸な先生でしょうか?」


カティナの言葉に噴出しそうになりながらも肯定するとカティナはさらに眉間の皺を深くした。


「あの先生は私達が実技大会に出た時、真面目に応援してくれた人なんです。そんな人をエルフ語を使って欺くだなんて!」

「そうだな、あの先生はとても熱心な先生だからな」


怒ってくれている事が嬉しいのにまん丸という言葉がどうにも頭から離れずアダムは床か天井を交互に睨んでいた。

その途中でなにかを見かけた気がしたが気にしないようにしつつ


「そうなると始祖様の御力を借りるべきです!」

「サピスキアのか?」


むん!とルナの真似をして意気込むカティナにアダムは尋ねると肯定するようにうなずいた。


「始祖様なら強引に言葉を上書きすることができると思います」

「そうなのか?」

「たぶん!」


ん?とアダムはカティナの言葉に引っ掛かるものを感じて首を傾げた。


「たぶんってなんだ」

「私は若輩者なのでわかりません!でも始祖様ならなにか知ってるはずです!」

「ひ、人任せか!お前何でそんな自信たっぷりなんだ!」


そうは言いつつもサピスキアならばできそうではある。

そしてこういった話をし始めると……


「呼んだ、かな?」


噂をすれば影である。元々旧館で寝泊まりしているのでルナ達も含めてサピスキアとの遭遇率は高い。

トタトタとこちらに近寄ってくると、くるくると首を動かしながらアダムを見つめている。


「まあ、呼んだことは呼んだが」

「話は、きかずとも、理解している」


サピスキアはそう言うと自慢げに胸を張る。


「エルフ語を、悪用する、生徒を、こらしめるんだね?」

「……最初からそこにいたろお前」


しかしアダムには気配と同時に視界の端に隠れていたサピスキアが見えていたのである。

サピスキアはそう言われると首をこてんと90度近く傾けて黙り込んだ。


「……」

「無視するな!」


都合が悪くなると首を傾げて無表情のままとぼけるので非常に不気味である。


「始祖様!どうかエルフ語を悪用する不埒者を懲らしめてください!」

「うむ、わかった、なんとか、しよう」


そしてアダムを無視してカティナの言葉に力強く頷いている。


「それで?どうやるんだ?」

「私の、言葉を、乗せる」

「お前の言葉を?」


サピスキアはそう言うとこくりと頷いた。


「エルフ語を妨害して、お前の言葉を流すのか?」

「エルフには、敬意を、もたない者を、罰する、言霊が、ある」

「言霊か……だがそれじゃあ聞いた者が皆かかるんじゃないのか?」


言霊とサピスキアは言うが、罰に使われる言霊というともはや呪言の類に近いだろう。

何の効果があるかは聞かないと分からないが呪言は聞いた者全てに等しくかかるものだ。

当然教室のような密閉空間で呪言を唱えれば無実なものやアダムなども無差別に襲うだろう。


「大丈夫、これは、エルフ語を、使う者に、向けられる」

「エルフ語を使う者に?」

「ああ、指定が、細かい。だから、ねらった、相手に、とどく」


ふふん!と自慢げだ。アダムとしても周囲に被害が及ばない方法ならば大助かりだ。


「しかしそれはどうやってやるんだ?」

「近づかないと、いけない」

「はい、撤収ー!」


踵を返したアダムにサピスキアは素早く抱き着いた。


「ええいはなせ!お前は本来此処にいる事も秘匿されているんだぞ!」

「そこを、なんとか」


ずるずると引きずりながら逃げ出そうとするアダムにしっかりと鋭い爪を食い込ませてサピスキアは頑強に抵抗する。


「いだだだ!バカ!やめろ!」

「お役立ち、だよ」

「デメリットが大きすぎるだろ!」


それからしばらく押し問答が続いたが、結局エルフ語を妨害しつつ反省を促せる手段を探すのが難しいのでアダムは非常に不本意ながら折れることになった。


「それで、近づくってどれくらいだ?」

「十メートル、くらいかな。一人に、伝われば、皆に、伝わる」


エルフ語の魔力はエルフにしかわからない微細なレベルではあるが会話している者同士で共通のものがやり取りされているらしい。感じ取れるエルフからすれば糸電話のような感じなのだろう。

なので一人に届けば後は会話に参加している者に芋づる式に伝わるというわけなのだ。


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