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偵察

次の日、早速アダムはボーボの授業風景を見学しに来た。


「今日はディーン先生が見学に来ているので失礼の無いようにね」

「「「はぁーい」」」


ボーボの言葉にCクラスの生徒達は疎らに返事をした。

その時点でかなりの数が不真面目であることを示しており、アダムは拳骨を落としたいのを堪えながら見学を続ける。


「それではテキストを開いてください」


ボーボが黒板に文字を書き始めた所、その時点でさらに数人がなにやらゴソゴソと別の事をし始めた。

アダムは同じテキストとメモ帳を片手に教室の一番後ろで全体を見渡していたのでバッチリ見えている。


(コイツら……)


ボーボの授業は薬草学が主であるが彼の調合技術はコロンなど医療関係者も参考にするほどのもので、咄嗟の事で命を救う止血剤やマナポーションに関する豆知識などが語られている。

彼らは自分には縁のない知識だとでも思っているのだろうか。


しかし気付いていないのか、それともそういうふりをしているのかボーボは板書を続けている。


「ふーむ」


アダムはきょろきょろと生徒達の後ろ姿を見ていたが……ふと、一人の生徒に目が行った。


(耳がすこし長いな……、風魔法の気配はこいつか?)


人相に血筋は割と出やすい。特に種族としての特徴ともなると顕著である。

獣人はもちろん、エルフやドワーフなどの精霊種の血が流れていると顔立ちや魔力などに特徴が現れるのだ。

エルフの血が流れている者は耳に特徴が出やすく、ドワーフやノームは体格と性格にその種族の特徴がでやすい。


(炙り出すのは容易いがここで知られて警戒されるのも面倒だな。知らんふりをしておくか)


そう思いつつ授業風景をメモしつつ特徴のある生徒をピックアップしていると


『先生の授業つまんないね』

『そうだね』

『薬草とか本で調べればよくない?』

『店で買えばいいよね』


ふと、アダムの肌に風の魔法から由来する言語が飛んできた。

風に乗せて話すエルフ語だ。

エルフという種族そのものと付き合いの長いアダムはエルフ語を理解できるのだ。


(こいつら……!)


ボーボはもちろん、アダムも理解できないだろうと高を括っているのだろう。

授業中に堂々と私語をしている。しかもボーボを侮辱するような内容の言葉まで混ざっている。

アダムはここまで来ると怒りを通り越して彼らの事が心配になる有様だった。



「どうでしたかね、私の授業は?」


休憩時間にボーボはアダムに授業の内容について職員室で尋ねた。

アダムはそれに対して少し考えると


「不真面目な生徒が多いですな、中には色々と困った子もいるようで」

「そうですか……、他の生徒の邪魔になっていないならと思っていたのですが」


どうやら薄々生徒達が授業を真面目に受けていないことは気づいていたようだ。

しかしその中に真面目な生徒がいると信じているようで、そちらを優先しているらしい。


「たまには怒らないとだめですよ?」

「そうですがどうにも、私が怒っても効果が薄いようで」


アダムはボーボを見て少し考えた後に悲し気に目を逸らした。

彼が顔を赤くして怒鳴った所で確かにまったく迫力はない。

それどころか陰でかえって笑われるだけだろう。


「仕方ありませんな、まあ彼らを懲らしめるのは私がやってみましょう」

「お願いしますよ」


ボーボはそう言うと教材を抱えて別の教室へと向かっていった。

アダムも仕方なく、Fクラスに戻って対策を練ることにした。


「ふーむ、こうなるとワシもエルフの力を借りるしかあるまいな」


まずはテストの際に最も猛威を振るっているであろうエルフ語の対策に乗り出すことに。


「ディーン先生、お話ってなんでしょうか?」


まず最初に話をしに行ったのはカティナだった。森の中で暮らしていた純血のエルフである彼女ならばなにかしらの対処法なども知っていると思ったのだ。


「エルフ語を阻害する方法などはあるか?」

「エルフ語を阻害……ですか?」


不思議そうにしているカティナにアダムも内心でカティナに同意したい気持ちだった。

何故こんな事をしなくてはならないのか。


「阻害……とは違いますがエルフ語にはいくつか問題があります」

「問題?」

「風の魔力に敏感なことと、あとはそうですね……声の大きい人に弱い事があげられます」

「声が大きい?雑踏の中では聞こえにくいとかか?」


アダムがそう言うとカティナは首を横に振った。


「いえ、正確に言うと波長が強い人ですね。感覚の鋭いエルフ同士だったり、家族同士だったりすると誰かの声が混ざっても識別できるんですけど」

「ですけど?」

「始祖様や私の両親、族長のようなエルフ語の熟練者が語気を強めると私達の声を先生は識別できなくなると思います」


ここらへんは普通の声と同じですね。とカティナは言う。


「その強い波長というのは誰でも出せるのか?」

「まあ意味が通らない言葉だらけになったり、耳を塞ぎたくなるような音にするだけなら……」

「そんなものか」


できれば再発防止を兼ねた警告を発したいがどうやらアダム単体ではジャミングが限界のようだ。


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