先生のお悩み!
テスト期間、それは学生にとって頭を悩ませる時期である。
成績の高低、試験の合否、補習の有無。
いつだってこれらに生徒は一喜一憂する。
「うわー!赤点ギリギリ!」
「進級キツくなる!勉強しないと!」
生徒達は誤魔化しようのない点数に頭を抱えるものや
「今回は大丈夫だったね」
「やっぱり予習復習は大事だよ、言った通りでしょ」
「だね!」
日頃の努力によってその苦悩とは無縁の者もいた。
しかしテストに頭を抱えるのは何も生徒だけではない。
「うーん……これは流石に……」
そのテストを作る教師もだ。
「どうかなさいましたか?」
頭を抱えるハンプティダンプティこと、薬草学を主に教えているルイージ・ボーボは声を掛けてきたアダムに気づいてため息をついた。
「今回のテストの結果なのですが……」
「どれどれ」
答案用紙の束を見てアダムは思わず目を疑った。
「どれもこれも満点ばかりじゃないですか」
「……そうなんです」
ボーボは自分が担当している学年の生徒がほぼ満点ばかりを収めている事に悩んでいた。
自分のテストの内容が悪かったとは思っていない。そして生徒達が劣等生ばかりとも。
しかしながら皆が一斉にテストを受けて点数がほぼ同じかつ満点ばかりというのはいくらなんでもおかしい。
ボーボは他の先生のクラスの答案などを見て、まちまちな点数を取っている生徒ばかりなのでなおさら自分のクラスだけが変だという事実に頭を抱えていたのだ。
「ボーボ先生の担当は確かCクラスでしたね」
アダムはこっくりと頷いたボーボには悪いと思いつつも彼の担当クラスとその下に続くクラスの中にいる生徒には頭を悩ませていた。
A、Bクラスは言うなればエリートが多いクラスであり多少家などのメンツに絡む問題は起こすが基本的に優等生が多い。問題行動は御家の恥になるためである。
「そうですね……」
しかしCクラス以下になってくると上に行けない劣等感と下を見た際の優越感が混ざって妙な行動を取る生徒が一定数現れる。
彼らには名家というにはやや劣る御家の生まれのものもいるので余計にそう言ったものが刺激されるのかもしれない。
頑張ってもBには、ましてやAクラスに入れる実力もないがかといって平均以上の実力はある。
そんな中途半端な実力が彼らの妙な自尊心を育ててしまう。
優等生クラスに付き従って自己研鑽や将来の就職に役立てる者も、向上心を失ってただ惰性で通っているものもどういった訳か下のクラスをバカにし始めるのである。
どちらも生活の上で上手く行かないストレスと半端な実力故のプライドが悪く作用した結果だろうか。
「不正の疑いがありますな」
「うぅ……そうでしょうか、やはり」
ボーボは心当たりがありつつも生徒を疑いたくないという気持ちが捨てきれなかった。
頑張った結果なのではとそう考えたかったのだ。
ボーボは以前の実技大会でルナ達Fクラスが頑張っているのを見て、生徒の努力というものを再確認したばかりだったからである。
「心当たりがあるのでしょう?」
「風の魔法、それも微弱なものが……」
「風か……」
アダムはそれを聞いてすぐにいくつかの心当たりを思いついた。
そして、それを防ぐには教員の中で自由に動ける時間と知識のある者がいない事もわかっていた。
「仕方ありませんな、臨時で実力テストをするしかありません」
「ですがそれは……」
「大丈夫、試験監督は私がやりますから」
忙しいのでは?というボーボにアダムは大丈夫、と短く答えた。
「ウチは少人数ですから、その日だけ先生に彼らの面倒を見てもらえれば結果はすぐにでも出るでしょう」
「本当ですか!それならありがたいことです」
「まあ、やってみましょう」
そう言うとボーボは悩み顔から一転して笑顔になり、アダムの手を取ってブンブンと振った。
「あの子たちの頑張りを見てから一度授業を受け持ってみたいと思っていたのです!問題解決のみならずそのような機会をいただけて感謝しかありませんよ!」
彼は強いて整った顔をしているわけでも、強い魔法が使えるわけでもなかったがこうした人懐っこさと温厚な性格、そして人好きのする笑顔で皆に慕われていた。
「あの子たちは良い子たちばかりだが居眠り癖のある子がいるのと、難しい言葉を続けて聞くと頭から全部抜け落ちてしまう子がいるのでその事だけ気を付けていただけたら、ボーボ先生なら大丈夫でしょう」
「そう言っていただけると私としても安心です、授業は簡単な薬草の実習にしてみますね」
アダムは自分の忠告に従って授業の準備を始めたボーボに笑顔で頷きつつ
(さて、悪ガキどもをどうしてくれようか……)
と内心で教師としての決意を固めていた。
おそらくはカンニングの類であろうが、それをクラスぐるみでやっているというのはいただけない。
授業の日程に調整をいれつつ、アダムはまずボーボのクラスの授業風景を観察することにした。




