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問題に問題があつまる! その2

ルナがお菓子を焼き上げた頃、別の場所で問題が起きていた。


「なんですって?」


流行りのドレスを身にまとったルルイエが耳打ちされた情報に目の色を変えた。


「タイユラン男爵家が主催するサロンにあの子が?」

「は、どうにも学校の上級生に招待状を贈られた様子」


ルルイエは外交に携わる形で他国の宴席に出席していたがその事を聞くとむむむ、と考え込んだ。


(タイユラン男爵令嬢、学生向けのサロンとはいえ参加者には貴族の子弟も多いし保護者も……それ以前にあの子はまだそう言った所には行ったこともないはず)


そう考えていると彼女の密偵はさらに続けた。


「どうもサロンにて騒動があったらしく、その解決に姫君が関わられたと」

「あの子が……」

「そしてその場に聖人が居合わせたと」


そこでルルイエの機嫌は急降下した。


「なんですって!」


座っていた椅子の肘掛を握りつぶしたルルイエの怒り顔に密偵は戸惑ったが彼女はエトナーの思惑をなんとなく察していたのだ。


(あの生臭坊主!前にルナちゃんを連れて逃げた事を根に持ってたのね!)


なんて狭量なやつ!とルルイエは歯をきしらせた。

ワイルビーではやってきたエトナ―に皆が蜘蛛の子を散らすように逃げ出した事を覚えいている。

その際にルルイエはおそらくルナ目当てで来たであろうエトナ―を前にルナを連れて逃げたのだ。

おそらく船を壊したヤツの次くらいには恨まれてるだろう。


「いかがいたしますか?」

「放っておきなさい、大事無いなら私が気に留めることもない……」


密偵はそう言いつつもそわそわしているルルイエを見かねて一つ提案をする事にした。


「それではお手紙を書かれては?」

「手紙?」

「サロンは半ばで終わり、おそらくはまともな交流も何も無かったはず。そのことを心配する手紙を書けば姫君もお喜びになるのでは?」

「それもそうね……」


ルルイエの頭の中にはがっかりするルナの姿が浮かぶ。それを慰め、あわよくば好感度上げときたい。

そう思いつつ手紙を書こうとして……、それよりもポータルを開いて顔を見た方が早いなと思い指を弾いた。


「……何の用だ、アモン」


ポータルを開いた先に居たのはルナではなくアモンだった。どうやら座標に干渉して自分の所へ移したらしい。


「忙しいようでなによりです、ルルイエ」

「なんの用かと聞いているのよ。またその小汚い服を虹色にされたいの?」


ルナの顔を早く見たいルルイエはいつになく不機嫌だ。そしてそれをみると追い打ちを掛けたくなるのが彼らとルルイエの関係でもある。


「おお、怖い。嬢の贈り物が無ければ挫けてしまいそうだ」


そう言うとアモンはガラス細工の花を大事そうに持ちながら香りを嗅ぐかのように口元に花の部分を持ってくる。

めちゃくちゃ気に入っているようだ。


「贈り物ですって?」

「ふふふ、サロンでは大活躍、エスコート役を手配した時の慰労を兼ねて贈られた品なのですよ」


アモンの得意満面の口ぶりにルルイエの顔がミシリと人外の特徴を示し始めた。かなり怒っている状態だ。

しかしここでアモンは致命的なミスを犯した。

距離を無視する魔神の前に現物を見せてしまったことだ。


「なるほど、しかし……花は萎れるものだ」


ゴキキ、と空間や自身の首を捻じ曲げながらルルイエは呟くともはやどの指かもわからない異形と化した手で花を指さすとその花がまるで生花のように萎れた。


「あーーーーーーっ!」

「「ざまーーーーーーっ!」」


ルルイエの声と背後のバエルの声がハモッた。悪魔はこういった時にまったく容赦がない。


「この性悪が!貴様よりにもよって嬢の手作りの品を!」

「あーあ、壊しちゃったわね。なんて送り甲斐の無い、粗雑で、野蛮な奴なのかしら!」


壊した側であるはずがルルイエは憤慨して悪魔の姿を現し、口から火炎を吐きながらポータルに迫るアモンをゲラゲラと笑いながら指をさしてなじった。


「じゃーね!おバカさん!次からはちゃんと宝箱に仕舞っておくのね!」

「ころ、ころっ!殺す!殺してやる!ルルイエぇぇぇ!!!」


アモンが飛び掛かった所でポータルにひびが入り、微塵に砕けた。


「あーあ、相変わらずバカ犬ね。そのポータルは千里眼の類なのに飛び掛かって……」


密偵は魔界の序列二位に真っ向から喧嘩を売ったルルイエにドン引きしていたが、ルルイエが席を立ったので恐る恐る尋ねた。


「あの、どちらへ?」

「あの子の元に行くの。もう此処に用はないわ」

「えっ、でも外交……」

「適当にやってなさいな」


密偵、二度目のドン引きである。

しかし大悪魔に指図できるものがほとんど存在しないのと同様にルルイエに指図できる存在も少ない。

そこいらの王族程度では彼女の前には何の権威も権力もないのだ。


「それじゃあね」


そう言うと背景に溶け込むようにルルイエは姿を消した。一応の指示を示した手紙が残されていたのが不幸中の幸いだろうか。

密偵はそれを拾い上げて溜息をついた。


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