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問題に問題が集まる!

トリニティがぐんにゃりしている間にもルナはバエルへの贈り物を作るべく素材集めに走った。


「先生、バエル様に贈り物をしたいのですが」

「ちょっと待ってくれるか?」


翌日、疲労が溜まって寝込んでしまったトリニティを部屋に残してルナは学校へ。

そこでアダムに知恵を借りに来たのだが……。


「何故悪魔の筆頭に贈り物を?」

「アモン様に贈り物をしたらバエル様が怒ったらしくて」


その一言でアダムは頭が痛くなった。魔界の序列、その一位と二位が並ぶ事などそうそうあるものではない。


「なんで贈り物をしたんだ?なにか特別な日だったのか?」


内心叫び散らしたい気持ちを堪えつつもアダムは尋ねる。


「トリニティさんが此処に来るのにアモンさんが凄く苦労なさったのでその慰労の品をと……」


それを聞いてアダムはあー、と何となく理由を察した。

ルルイエの話によるとバエルはルナをいたく可愛がっている。その様子はやや尋常ならざるレベルである。

そんな中で自分を差し置いて副官のアモンにだけ手作りの贈り物が贈られた事で不満を顕にしたのであろう。


「しかしフラウステッド、それはよくよく考えて渡さねばならないぞ」

「なんでですか?」


キョトンとしているルナにアダムはいくつかの例を挙げた。


「一つは名誉の問題だ。ここでアモンよりも優れた進物を捧げればバエルの名誉は保たれるが同時にアモンの名誉は失われる」

「ええっ!?」


なんで?と言いたげなルナにアダムは口をへの字に曲げて言った。


「わからんか?慰労の品と言って渡したのにバエルには何の理由もなく慰労の品よりいいものを渡すんだぞ?」


いくら上司と言えど義に悖る。とアダムは続ける。


「厳しい見方をする連中からすればお前の名誉も傷つくことになる」

「私もですか?!」

「当たり前だろ。労苦を労って品物を送ったのにその上司には請われれば唯々諾々とそれより良いもの渡すんだから

義理もなにもない奴だと思われるかもしれん」


そう言われてルナは困ってしまった。そこまで考えていなかったのである。

ルナはそう言った礼儀が絡む贈り物の経験などなかったのだ。

季節の上での贈り物などをアリシアと一緒にエルドの仕事場に届けたり、最近ではエトナ―と共に祭事に振る舞う料理などを作ったり配ったりという経験はあった。

しかし供物や進物の類は様々かつ特別な知識と配慮が必要なのだ。


「ど、どうしたらいいんでしょうか……」


おろおろしだしたルナを見てアダムはふーむ、と考え込んだ。


「アモンにはガラス細工だったな?」

「そ、そうですぅ……」


アダムはその手の贈り物でランクに関わりなく、対比が難しいものを用意すべきだろうと考える。

バエルが恐らく何を上げても喜ぶだろうがその中でアモンと対比が難しいもの。


「食べ物とかか……」

「食べ物ですか?」

「うむ、すぐ無くなってしまう物がいいだろう。それでいて自慢できるように配れる……細かいものだ」


ルナの頭には時折贈答用で送られてくるクッキーの詰め合わせなどが思い浮かぶ。

そこにオリジナリティを持たせるとなると……


「ビスコイト!」

「なに?」


アダムは思わず聞き返した。

ビスコイト。それはアダムにも食べたことのある、というよりもこの地域では割と普通に食べられるもの。

ただ一点違うところと言えばそれは発音や言い方の違いである。


「ビスコイトってビスケットのことだろ?」

「ちがいます!東の国で食べたものですから!」


アダムは頭にクエスチョンマークを浮かべていたがルナは思い立ったが吉日とばかりに走り出していった。


「おかーーーさーーーん」

「あら、どうしたのぉー……おろろろ?」

「ちょっとビスコイト焼くからフライパン二つ借りるね!」


まるでつむじ風のように台所を駆け抜けていったルナにアリシアは目を回しながら了承する。

小麦と砂糖、水とくるみを手にルナは手早く生地をつくっていく。


「えーと、これをこうして……」


小麦と砂糖を混ぜると水を加え、こねる。力が強いので混ぜ過ぎないように慎重にし、ちぎってそれぞれ小さな塊にしておく。

そして次に小型のフライパンに油を塗って熱し、そこに生地を置いてから熱したフライパンを重ねて蓋をしてゆっくり焼き上げる。

火力は魔法の火で調整が可能なので楽ちんである。


「試作品はどうかな……」


蓋代わりの上のフライパンをどけると両面がきつね色になった生地がほんのり甘い香りを放っている。


「匂いはいいね……!」


一口齧ってみると、アツアツの生地にくるみの香りが合わさってとても美味である。


「よし!この感じでたくさん焼けばなんとかなるよね!」


ルナはそのままビスコイトの生産に入った。一枚ずつ焼いていくので非常に時間がかかったが小麦とくるみがある分だけ焼き続けた。


「これだけあれば十分かな……!」


途中で味見したりクインク達に分けたりしたが、重ねてから布で包み、紐で縛って持ち運びができるようにしたビスコイトの束が二本できた。合計三十枚を焼き上げたのである。


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