サロンの騒ぎ!
ルナは壊れた魔道具とアンヌを交互に見やる。
アンヌは未だに意識が戻っていない。
魔道具は頬を思い切り殴られたかのように悪魔の彫像がひしゃげており、どこか悲しげに見える。
「この魔道具が誰のものかわかれば良いんだけど……」
ルナは魔道具を見つめてみたものの、その答えが出るはずもない。
トリニティに視線を投げてみるものの、彼女も別段何か知識があるわけでもなかった。
「魔道具がダメなら彼女の治療に専念するしかないか……」
とは言ってもそれもエトナ―がついているのでやることは少ないかもしれない。
そう思いつつルナはエトナ―の隣に立つとアンヌの顔を覗き込んだ。
「どうでしょうか?」
「うーむ、呪いというより暗示に近いからなぁ……解き方がわからんことにはなんとも」
「この人達に聞けばいいのでは?」
そう言って倒れているリーダー格の異端者を指さすとエトナ―はふむ、と少し考えて。
「それが手っ取り早いな」
と短く呟くと他の使用人たちにサロンの運営と教会への通報を伝えると二人とアンヌを連れて別室へ移動することに。
「さて、それじゃさっそく尋問タイムだ」
人払いをして、誰も来ないように言い含めておいたので他には誰も来ないだろう。
エトナ―の顔を見る限り穏便な方法を取るつもりはないらしくアダムが顔をしかめている。
「んじゃ始めるぜー」
エトナ―は椅子に縛り付けた二人の顔面にバケツの水をぶっかけた。
「ぶあっ!?」
「うぶっ!ごほごほ!」
二人が目を白黒させながら目を覚ますと目のまえにエトナーが立っているので二人は仰天した。
「おはようさん、早速で悪いがあの魔道具な?あれの解除方法を聞きたいんだわ」
「ふ、ふん!私が教えると思うか!」
案の定というべきか、相手は洗脳が効いていると思ったのか、それともまだ仲間が全滅していないとおもっているのか強気だ。
「ああ、それならいいぞ。言いたくなるまで聞くだけだからな」
「な、なにをする気だ!」
エトナ―は金属でできたバケツを片方の男に被せるとそのまま杖でガンガン叩き始めた。
「うぎゃー!」
金属同士がぶつかるけたたましい音が鳴り、バケツを被せられたローブ姿の男は悲鳴を上げる。
「言いたくなった?」
「うぅぅ……」
バケツを持ち上げて問いかけたものの返事がないので再びバケツを被せた。
「そんじゃ行くぜー」
「ま、まってくれ!言う!言うよぉ!」
「そうかい、じゃあ早く言っちまいな」
エトナ―がかなり物騒な笑みを浮かべている。アダムは顔をしかめ、ルナとトリニティは抱き合って震えている。
「こわい!」
「おに!」
ルナとトリニティの声もどこ吹く風、エトナ―はバケツと杖だけで異端者二人を恐怖に陥れていた。
「適当こくと今度は濡れタオルだ。忘れんじゃねえぞ」
「ひぃぃ!」
「えげつない……」
アダムもドン引きである。エトナ―は異端審問官の経験もある。それに各地で布教や巡教をする傍らで各地の領主に排斥されて拷問に掛けられた経験もある。
彼女のそう言った知識は受けた経験もあって非常に効果的なものを良く知っている。
「んじゃ、まず嘘ついたらどうなるかから教えてやるぜ」
そう言うとエトナ―は水をたっぷり含んだタオルを用意するとモノクルを掛けていた男の髪の毛を掴むとそのままタオルで顔を覆った。
「ぶぐっ、ぐっ!うぐぐっ!」
「十秒我慢しな、聞こえてたらな」
モノクルの男はしばらく悶えていたがエトナ―がきっかり十秒で外したので難を逃れた。
「げほごほっ!お、げっ!」
激しく咳込みながらモノクルの男は青い顔をしてローブの男に縋るような目を見せている。
嘘をつかないでくれ、そう目が物語っている。
ここまでやればもう二人は嘘などつけないだろう。
「解除のやりかたはどうやる?」
「魔道具に解除と最初に唱えてから使用すれば解除できる!」
うそじゃない!と半泣きで叫ぶ二人。その事実を知ってその場の空気は微妙なものになった。
全員の視線がぐしゃぐしゃになった魔道具に注がれている。
「……お前、壊したよな?」
「……どうだったかな」
「壊したろ」
「どうだったかな」
「とぼけるんじゃない、こっちを見ろ!」
アダムがエトナ―の肩を掴むとエトナ―はぷいと顔をそむけた。
アダムがエトナ―の頬を鷲掴みにしてキレ気味で問い詰めている。
「なんで壊した?なんで壊した??なんで壊した?!」
「悪用されないように!」
「どうするんだこれは!」
「わからん!」
アダムは二人に尋ねる。
「他に方法はないのか?」
「聞いてない!魔道具を壊すつもりなんかなかったんだから聞いてるわけないだろ!」
「……だよな」
ローブの男のヤケクソな言葉にアダムは軽く頭を抱えた。
そこから少し離れた部屋の隅で椅子を並べた上に寝かされているアンヌをルナはじっとみていた。
「強い魔力を当てれば掻き消したりできないのかな?それとも沈静化させる魔法的なものがあれば……」
「悪魔としての権能があれば大丈夫でしょうけど、どうでしょうか」
そう言いつつルナはそっとアンヌの額に手を置いた。




