バレた!?
アダムは内心で大立ち回りを演じたルナに対して苦々しく思っていた。
(助ける為にとは言え自分から仕掛けるとは……)
悪魔と名門魔法使いが二人仲間に居るとは言え無茶をしたものだ。
人質を上手く使われていたら思わぬ反撃を食らっていたかもしれない。
そうでなくてもサロンのゲストに被害が出ていたかも。
「まったく無茶をする」
「結果オーライだろ?」
エトナ―はへらへらしつつもアンヌの治療をしつつ答える。
「正体隠しの問題もあるぞ」
「あのマスクはいろいろと魔法がかかってる。大丈夫さ」
エトナ―はそういって楽天的に考えていたが、アダムはそういった偽装の魔法には欠点がある事を知っている。
内心でひやひやとしていたが、口に出すわけにもいかずそそくさとその場を離れるルナの判断に任せるしかなかった。
「ふうっ、ちょっと緊張した」
ルナは高鳴る心臓の鼓動を感じながら人気のない場所にやってきた。
それから少ししてルナの影からトリニティが姿を現すとぱちぱちと手を叩いて喜んでいる。
「お見事です、誰も死なずに済みましたね」
「手加減が難しいんだよね」
マスクを外そうと手を当てた時、トリニティがおもむろにその手を留めた。
「?」
「誰か見ています」
ルナがその言葉を受けて蝙蝠の権能を発動させる。悪魔としての能力は超常的なものだけでなく、実際にその姿の通り動物の力を操る事も可能なのだ。
「シィッ!」
音波を飛ばして周囲をレーダーのように探るとトリニティの言う通り誰かがいるようだ。
「引きずり出しますか?」
「ううん、まずは声をかけよう」
隠れている誰かにルナは声をかけることに。
「隠れているね?誰?」
ルナが声を出すとバレていると観念したのか女学生が姿を現した。魔法学校でルナに招待状を渡した二年生だ。
「あ、あのさ」
「?」
「あなた……フラウステッド……さんよね?」
ルナはそれを聞いて少し困った事になったと思った。マスクだけじゃ誤魔化せなかったのだと。
魔法の効果がある事をルナは知らないが、偽装の欠点である『顔見知りを騙せない』という部分に引っ掛かったのだ。
ただ二年生もルナが悪魔化が使える学生であると思ったのかどこか遠慮がちに話しかけている。
「どうします?」
「私に似た別人ってことにしよう……でないとまずいから」
「あの……?」
ひそひそと話している二人に二年生は不思議そうにしていたがすぐにルナは笑顔を見せた。
「人違い、というより似た人の姿を借りているだけです」
「えっ?」
困惑する二年生にルナは人差し指を唇に当てて言う。
「あまり他言なさいませんよう」
マスクを着けたままルナは大悪魔の姿に変身し始める。四対の腕を広げ、体を大きくしながら二年生の前に立つとマスクを外し、八つの目を開いて二年生に微笑みかけた。
「ね?全然違うでしょう?」
「は……はい……」
二年生がへなへなと腰を抜かしたのを見て少し悪いと思いつつルナはその姿を元に戻すとそのまま踵を返した。
「帰りましょう」
「かしこまりました」
トリニティは壁を通り抜ける形だけのポータルを開いて元の姿に戻ったルナと共にそれを潜った。
壁を通り抜けるだけの簡単な物だが潜ってすぐに閉じれば相手からすれば転移したように見えるだろう。
「よし!誤魔化せたよね!?」
「間違いありません」
二人はトリニティの魔法で何度か壁を通り抜けてサロンの建物の外に出るとまた何食わぬ顔で倒れたままの受付の横を通り過ぎて元の場所に戻ってきた。
「ただいま戻りました」
「何してたんだ?」
「誤魔化してました!」
アダムはその言葉を受けて頭にクエスチョンマークを浮かべていたが深く考えないようにした。
今は異端者連中の方が重要だと思ったのだ。しかしまさかルナが力業でバレそうになった正体を誤魔化してきたとは思うまい。
「それで、エトナ―さんはなにを?」
「どうにも魔道具の影響を受けた生徒がいるようだ」
エトナ―が倒れていたアンヌの様子を見ている。途中で妨害したとはいえ洗脳されかかっていたのだ。
その治療だろうか。
「エトナーさん、どうでしょうか?」
「うん?ああ、どうにもこの手の権能は種類が多くて困ってるよ」
エトナ―は面倒くさそうにアンヌを見ている。見た目に現れない症状の治療は非常に厄介だ。
また彼女は現在意識がないので言動から推し量ることもできないので余計に対処を難しくしている。
「魔道具からは何もわからないんです?」
「ぶっ壊したからどうにも」
ルナがエトナ―の指さした先を見るとエトナ―の鬱憤を受け止めた魔道具が歪な形にひしゃげているのが見える。
水晶を咥えた悪魔の彫像のような見た目だったはずがエトナ―の鉄拳を受けて水晶は砕け散り、彫像の顔は殴られた跡がくっきりと浮かんでいる。
夢に出そうなくらい悲惨な見た目だ。




