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どこからともなくまぎれこんだ!

ルナ達が困り果てている最中、サロンに侵入した異端者も突如としてサロンの会場にやってきた異物に動揺していた。


「おい!どうなってる!何故奴がいるんだ!」


サロンに似つかわしくない黒いローブを身に纏った男性がもう一人の男性に怒鳴り散らしていた。

彼らの話題に上っているのは会場に何の前触れもなく現れた聖人こと、エトナ―の存在だった。


「俺が知るか!」


モノクルに紳士風の服装を身に纏った男性はローブの男に対して怒鳴り返しながら魔道具を操作している。


「このサロンを乗っ取って俺たちの組織拡大の為に使う予定だったのに……!」


ローブの男は壁に寄りかかって倒れているアンヌと魔道具を操作してアンヌに何かをしている男とを見やると忌々しそうに周囲を睨みつけた。


「主催者の一人を洗脳できるだけでも僥倖だろ、見つかる前にずらかればいい!」


彼らが持ち込んだ魔道具は対象に無条件で友愛の感情を植え付ける洗脳用の魔道具で、悪魔の権能が宿った禁制の魔道具である。それを社交界で信用のあるタイユラン男爵とその令嬢に使う事で上流階級や魔法界の重鎮の来るサロンやパーティを把握し、魔道具で洗脳して組織を拡大する作戦だった。

今回はその計画の最初期に当たるもので、あえて小規模な学生サロンから開始したのだが……。


「聖人め……」


どう言ったわけかエトナ―が会場に現れたのである。その顔を見た瞬間にローブの男は寿命が縮んだ気さえした。


「受付に高い金を払ったのに連絡がないとは……俗物めが」


モノクルの男は金で雇った受付がエトナ―の襲来をこちらに連絡しなかった事に憤慨していた。

男たちもまさか受付がエトナ―になんの関係も無しに失神させられているとは思うまい。

そんな手が早いエトナーにトラウマを植え付けられている悪党は多い。そもそもが不死身の存在であるが故に戦って勝てる相手ではなく、それを差し引いても恐るべき戦闘能力を持っている。


「まだ終わらんのか?」

「もう少しだ、クソ、小娘のくせにしぶといぞ」

「気絶させたのが悪かったんじゃないのか?」


そうこうしている内に二人の耳に足音が近づいてくる音が聞こえて来た。

ローブの男はギョッとして目を向けると僧形の女性が笑みを浮かべてやってきている。


「ようようよう!お前ら何やってんだよ」

「せ、聖人!」

「様をつけろよゴミカス野郎!」


瞬時に距離を詰めたエトナーがローブの男の腹部に強烈な一撃を叩き込んだ。


「おぐっ……うげえっ!?」


メキメキと音を立てて拳がめり込んでいく。そして背中から衝撃波が抜けるとローブの男は血を吐いて膝から崩れ落ちた。


「友愛の感情を呼び起こす魔道具か?司る悪魔が多いから探すのめんどくせえんだよな……誰に頼んだんだ?」


ぴくぴくと痙攣するローブの男を跨いでモノクルの男に近づくとエトナ―は指の関節をゴキゴキと鳴らしながら笑みを浮かべている。

その実、笑顔の裏は怒りの感情が渦巻いている。貴族区での異端者の悪事は枚挙にいとまがない。

エトナ―はこういった時に貴族連中に聞き込みをさせられるのだが貴族や上流階級の非協力的な態度や口先だけの信心を見せつけられることに辟易していた。


「う、動くな!このサロンには俺たちの仲間も入ってきているんだぞ!」


モノクルの男はアンヌを人質に取りつつ、魔道具を翳した。


「何人だ?」

「は?」

「何人入ってきた?それなりに用意したんだよな?」


笑顔のエトナ―はあっけに取られるモノクルの男に笑みを浮かべたままこめかみに血管を浮かべて言った。


「ケチな人数だったらただじゃおかねえぞ?」

「ひっ!」


獰猛な獣が牙を見せるような笑みを見せられてモノクルの男は慌てて懐から笛を取り出した。


「笛……?いや、犬笛の類か?」


男が笛を吹くと、音が鳴っていないように一般人には聞こえるだろう。

しかしこれも魔道具の一種であり、緊急事態を仲間にだけ知らせるようになっている。


「エトナ―が接敵したか?風の魔法に似た気配だな。エルフの使う精霊語にも似ているが……」


アダムが耳に手を当てて魔力を集中させる。アダムはエルフたちの風に載せて言葉や思いを届ける魔法を熟知しているので似たような音を拾う事ができた。

ただし、その音を拾える例外もいる。超人的な感覚を持つ者と――


「ミ”ッ!?」

「笛ですね?仲間だけに聞こえるようにしているようだけど……魔道具か」


――悪魔たちである。突然響いた笛の音にルナとトリニティは不審がっていたが、そもそも音が聞こえないアルディーノとラウラはそれを見て不思議そうにしていた。


「なにかありましたかな?」

「魔道具ですね、風の魔法を特殊な加工をした笛に籠めて吹くと特定の人物にだけ聞こえる音にできるのです」

「それがお二人に聞こえたのですか?」

「私は風の魔法で言葉を伝達する術を心得ております、ルナ様はご友人にハイエルフがいらっしゃるようなのでそれででしょう」


トリニティは今度は悪魔であることを隠しつつもルナと自分が不審な笛の音を聞き取れた理由を説明した。

ハイエルフともつながりがあるのか、とアルディーノは別の所に驚いていた。


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