サロンについたら?
ルナは最初、サロンでちゃんとやれるか不安だった。しかし今は……
「酒とか出るかな?」
「マジでやめてくれ」
エトナ―の存在がとにかく不安だった。彼女の自由すぎる振る舞いがなにか問題を起こすのではと思い始めていたのだ。
「受付の人を誰も助けませんね……」
トリニティの心配そうな声が聞こえて来た。考えてみたらもう問題は起きていた。
警備が来たらエトナ―はつまみだされても文句は言えない立場だ。
これでどうやって魔法使いの人達と仲良くするのであろうか。
しかしエトナーは何時だって不退転の存在である。
彼女を心変わりさせるのがいかに難しいかはアダムの態度からも容易に察する事ができた。
「相変わらずとんでもない人を連れてるのう」
そんな声がしてルナは前を向いた。すると目の前にはなんとアルディーノが立っていた
サロンに来るためか彼も正装を着ており、杖を突いている。
「アルディーノさん!」
「知り合いなのか?」
アダムの問いかけにルナはこっくりと頷く。
「はい、以前ルルイエ先生と一緒にお悩みを解決したことがあって……」
そう言うとルナはあっ、とアルディーノの隣に居る女の子を見て声を上げた。
「ラウラちゃん!」
「ルナさん!」
アルディーノの隣に居た女の子こと、ラウラもルナの姿を見ると嬉しそうに駆け寄り、お互いに手を取って再会を喜んだ。
「会えてよかった、学校が違うから会う機会がなくて……」
「ホントに!会いたかった」
かつてアルディーノを助ける為、ルルイエとティナと共に屋敷中をひっくり返して整理整頓したくなるという奇天烈な呪いに掛かったラウラを助けた事がある。その際にルナ達はアルディーノと旧知の仲であったルチオとの仲直りにも一役買ったのでアルディーノとその友人であるルチオ・リパラトーレの両名と親交があるのだ。
アルディーノは切断に特化した恐るべき魔法の使い手であり、ルチオの家は魔法陣や遺跡などの古物を当時の姿にまで修復できるという稀有な魔法の使い手である。
「お手紙でしかやり取りができなかったからね」
「うん、本当に……お洋服もとってもお似合いですよ。ルナさん」
「ありがとう、ラウラちゃんもとってもおしゃれね」
二人が揃うと笑顔が溢れる。子供の無邪気なやり取りは大人にとって大きな癒しの一つだ。
しかしそんな中で一つだけ、ラウラはルナのある一点を見つめて少しだけ残念そうにしている。
「?」
「……ルナさんはズルいですね」
「???」
ルナは不思議そうにしているがエトナ―はラウラの視線がルナの暴力的なスタイルに注がれているのがわかり、にやにやしている。
「発育は個人差があるからな」
「うぅー……」
年齢はルナの一個下だという。そのせいか身長もルナより低い。
そんな鬱憤のようなものをぶつけるようにラウラはルナにだきついた。
「ラウラちゃん?!」
「……ママよりおっきいのはズルい」
エトナ―はそれをみて、あらー!とおばちゃんのような反応を見せている。
ルナは少し驚いたが別段嫌がる様子もなくラウラにされるがままだ。
「ラウラ、はしたないぞ。サロンでやるべきことではない」
「は、はーい……」
アルディーノの言葉を受けてラウラは我に返ったのか恥ずかしそうにしながらルナから離れた。
普段は好々爺なアルディーノも真面目な顔をすれば立派な貴族然とした紳士である。
「ですけど、おじい様」
「なんだ」
「私もあんな風になれますでしょうか」
ラウラがちらちらとルナを見ている。そしてそのたびに自分の体を見ているのを見てアルディーノはようやく彼女の意図するところを知ったのかルナのスタイルを見て言った。
「ラウラ、彼女の見た目は確かに良い。しかし彼女はそれ以外も素晴らしいところがあるだろう。まずはそこを見習いなさい」
「それはそうなのですが……」
「見た目も中身が伴ってこそ輝くのだ。彼女はそれが釣り合っているからそう見えるのだ」
アルディーノは懇々とラウラに説いている。
「まあ、若い子の胸がデカかったら確かに男は皆見てくるよな。デカけりゃモテるぞー、うへへ」
「お前も女だろ」
「まぁな、とはいえ私がぴちぴちなのはもう上っ面だけだから気にならなくなって何百年って奴だ。若い子のが一番よ」
エトナ―はけたけたと笑っているのをアダムは呆れた様子で呟いたがそれにさらに常人には理解できない返答が返ってきてアダムはこめかみを押さえて唸った。
「不死身だの長命だの不老不死だのはこれだから困る」
「大変ですね」
「お前もあっち側だよ」
トリニティがフォローに入ったが彼女も悪魔である。マトモではないのだ。
溜息が止まらない。軽い頭痛も。
ルナとラウラとアルディーノだけに今からでもならないだろうかとアダムは考えていた。
そうすれば全てが丸く収まるはずなのに。余計なものがでかすぎる。




