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なんともまあ……

職員は頭を抱えてうんうんと唸っていたがわれに返るとサキュラス達に書類を取り出して手渡した。


「とりあえず反省文用の原稿用紙とこちらのパンフレット渡しておきます。一週間以内に提出するように!」


サキュラスとディピトは原稿用紙と魔法に関する法律や規則に纏わる情報を書いたパンフレットを渡され、追い出されるように魔法局の生活安全課から出ていった。


「お手数をおかけします。私が責任をもって提出させます」

「魔法学校の先生ですか、生活指導の担当をなさっていた……」

「そうです、魔法学校のディーンといいます」


魔法学校の生活指導ということでアダムは何度か魔法局を訪れている。その中で治安維持部隊とも面識があった。

エルド経由で治安維持部隊の中では名うての魔法使いであるということも知られている。


「今回はどういった経緯でこの案件に?」

「なんというか、今回は偶然ウチの生徒があの二人の娘さんと知り合いましてね。生徒経由で相談をされてこういうことに……」

「それはそれは……大変でしたね」

「ええ、まあ……」


すこし他愛無い話をいくつか交わすとアダムは会釈して魔法局を後にした。


「さて、フラウステッド達のところへ戻るか」


魔法局に面した通りに出るとサキュラスとディピトがパンフレットを読んでいるのが見えた。


「どうだ、少しは魔法についてわかったか?」

「そうですね、とても興味深いです」

「知識を蓄えてる感じがしますね」

(ユピトールみたいなこと言う奴らだな……)


パンフレットを熱心に読んでいたにもかかわらず一切中身のある会話が出てこない。

たぶん、おそらくだが彼らもちゃんと学ぼうとはしているのだろうがいかんせん基礎基本がまったくなってないので理解できないのだろう。


「ともかく、魔法学校では基礎基本から教えてくれるだろうから図書室の勉強会に参加するんだ。いいな?」

「「わかりましたー」」


二人は呑気にそう答える。

アダムはもう怒る気にもなれず反省文についてあーだこーだと話している二人の声を背中に受けながらルナ達が待つ家へと向かった。


「戻ったぞ……って何をしてるんだ?」


アダムが借家に戻ると三人は呑気にお茶を飲んでいた。


「お茶してました、お二人はどうなりました?」

「反省文で許してくれるそうだ」


罰金がない、ということで隣で聞いていたディエはホッとした様子でお茶に口をつけた。

その横でティナがずびずびと音を立てて飲んでいる。


「はしたないぞ、ユピトール」

「こうすると美味しくなるんだよ?」


しらなかった?ととぼけるティナに溜息をつきつつアダムは自分も備え付けの椅子に腰かけた。

その後に続いてやってきたサキュラスとディピトは椅子が足りないので座れなかった。


「あ、すみません!私がどきますね」

「ルナちゃんが退いてもどっちか座れないから意味ないってばさ」

「お前も立ったらどうだ?」

「お茶飲んだら立つ~」


へらへらとお茶を飲み続けているティナ。ルナはそれを見て溜息をつきながら立ち上がった。


「とりあえず、皆さんに謝って、ちゃんと再出発してくださいね」


ルナの言葉にサキュラスとディピトは笑顔で頷いた。

アダムはやれやれと、ティナは笑いながらその光景を見ていた。


「これでワシらのすることは終わりだ、後はそちらで上手くやってくれ。事が片付いたら魔法学校で会おう」

「何から何までありがとうございます」


お茶を終えてルナ達は帰り支度を始める。地下室の掃除は諦めた。

ルナ達にはまた明日の日常が待っているのだ。

そしてディエ達にも、また新しい日常が待っているだろう。

帰っていく三人に手を振りながらディエはホッと一息。

父と叔父も立ち直るだろう。というよりまともな道に戻れるだろう。

そう思い、ディエは借家のドアを閉めた。




数日後、サキュラスとディピトは悪魔崇拝の団体を集めて宣言した。


「悪魔崇拝並びに召喚の試みは終了し、団体は解散します!」

「皆さんには楽団に専念してもらうことになります」


二人の言葉に構成員たちはホッとした表情でそれを聞いていた。


「よかった、これでもう変な触媒持ってこなくていいんだ」

「あのへんな飾りなんか意味あるのか聞けなくてさー」

「ねー」


ざわざわと皆が悪魔召喚の儀式をしなくていいということに安心した様子で話している。


「あ、あれ?もっとこう残念な感じとか……」

「無い感じだね……兄さん」


二人のつぶやきは皆の話に掻き消された。


「え、えーっとだね、私たちはこれから魔法学校に通うことになるんだけども」

「学費は向こうの用意してくれるアルバイトで賄えるみたいだから安心して欲しい」


サキュラス達は気づいていなかったが皆は悪魔崇拝の集会も楽団の打ち合わせのついでになりつつあったのだ。

怪しげな儀式も、無駄に凝った魔法陣とその配置も非常に不本意ではあったが演出の練習になった。

おかげでディエは歌唱力と演技力に重点を置いてレッスンを受ける事ができ、皆はそれを全力で支えられた。

そしてサキュラス達が真面目に学校に通う為に支出を控えるという通達は皆を安堵させるのに十分だった。もう役所や怖い衛兵たちに追いかけられる心配もない。余分な出費も。


「そういうわけだから皆はこれから楽団の一員としてディエを支えてやって欲しい」

「よろしくお願いします!」


二人が揃って頭を下げたのを見て一同はそれを拍手で迎えた。

そして、実は悪魔崇拝の団体はほぼすでに楽団の関係者しかいない事は黙っておくことにした。

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