結局どうしてだろう?
三人はサドローがどうして息子たちにそんなことを言ったのか。
それだけがわからなかった。
「とりあえず最低限の裏は取れた、後は関係者との確認だろ」
アダムを加え三人に増えた一行は再びディエと話し合うためにカフェにディエと合流し、資料で得られた情報を共有した。
「お祖父ちゃんは本当に悪魔召喚を?」
「魔法陣を描く担当で、魔法使いではありませんでしたがね」
「あの、そちらの方は?」
「魔法学校の教員です、彼女らの担任でもある。あなたの祖父の経歴は魔法学校の資料室でないと裏がとれなかったので協力させてもらったのです」
アダムがそう言うとディエは少し戸惑いつつも納得した。
魔法学校ならば魔法の歴史について触れられてもおかしくないと思える。
それ以上に教師という立場のある専門家の説得も必要だろうとも。
「それでは改めておじさんとこ行こうじぇ」
一行は再びサキュラスたちの待つ家に。
「ここで魔法陣の研究を……?」
魔法使いが多く生活している場所とはまったく異なる地域で活動しているサキュラスとディピトにアダムは呆れた様子だ。
「彼らに成功の見込みが無くてよかった。こんなところでは魔法局も教会もすぐには駆け付けられんぞ」
魔法局や教会の関係者がほとんどいないこの区画では当然ながら魔法災害に対する対策や魔道具の暴発などによる被害には対応できない。
手が回らないのもそうだが、普通はこんなところに魔道具なんて持ち込まないし、ましてや魔法陣を描くことなどありえないのである。
ここはそれくらい魔法に関係のない人々が利用する場所なのだ。
描いて使用すればたちまち周囲に悪影響が出るし、悪魔などが出てしまえば周囲の人間は無力な一般人だらけの区画だ。被害がどれほど甚大なものになるかは想像に難くない。
「も、申し訳ないです……」
「貴女に謝られてもな……」
ここで魔法陣の研究をやっているのが魔法学校の生徒だったなら即座に折檻&反省文&親呼び出しのトリプルコースだが相手は魔法の知識もない一般人。怒るべきやら、呆れるやら。
「おじゃまー!」
二人が話している間にティナが全く遠慮なしに家に入って行った。
ルナはそれをおろおろしながらついていく。もう学生新聞の記者の役はいいのだろうか。
「おや、記者のお嬢さんたち。父の話はどうでした?」
「悪魔召喚をした一団にサドローさんが居た事実はあったよ!」
ティナの言葉にサキュラスと隣で聞いていたディピトの表情が明るくなる。
やっぱり!といった思考が透けて見えるような喜色満面の顔だ。
「ただ、悪魔召喚をした時にサドローさんはいなくて、その間に所属してたところが事故で大変な事になったらしくてさ」
「そうなんですか」
「そう、それでサドローさんについての資料があればなーって」
前回取材を切り上げた際にティナはサドローについて詳しく聞きたいと言っていた。
それを思い出したのか二人はティナたちにサドローの遺品について話し出した。
「そう言えば君達なら分かることも多いかとおもって父の手記を探しておいたんだ」
「助かる!それが重要ですよ!事故の時に何してたとか、その後どうしてたとかが歴史とつながるかも!」
父が思いがけず歴史的事件の影にいたかもしれない。その言葉はサキュラス達にとってとても魅力的な言葉だった。
二人は運び込んでいた機材の中に入っていた古びたトランクを持ってきた。
「これに父の手記とか当時の製図とかが入ってる」
「ほへー、それで……中身は?」
「……」
「もしもし?」
ティナは当然中に何が入っているのかを問うたが二人は目線を泳がせている。
ちょっと嫌な予感がした。
「もしかして鍵をなくしたとか?」
ティナの言葉に二人はこっくりと頷いた。予感的中である。
もしかしてそのせいで二人は肝心な事を知らないのでは、そうティナは思った。
ちらりと視線を動かすと同じように少し呆れた様子のルナがいる。
「しかしその事なら心配ご無用!助っ人を連れてきているのさ!」
「助っ人?」
「そう!私達の魔法の先生です!」
どうぞ!と紹介されたアダムはティナに苦い顔をしながら二人の前にやってきた。
「どうも、二人の担任をしているアダムといいます」
「これはこれは、それで……どうやってこのトランクの鍵を?」
もしかして魔法ですか?と言いたげな二人にアダムはちょっと申し訳なく思いつつ
「申し訳ないが鍵開けに関しては手作業です」
そう答えた。そしてアダムの予想通り二人はちょっとがっかりした感じ。
「特殊技能といえばそうなんですけどね……」
「なんか杖でちょちょいとやる感じがみたかったね、兄さん」
サキュラスとディピトのやり取りにアダムは脱力しつつも懐から開錠道具を取り出してトランクの鍵の開錠作業に取り掛かった。
「どんな感じ?」
「あまり複雑な構造ではない感じだ、そう時間はかからん」
カチャカチャ、と音を立ててトランクの鍵が動くと少しして鍵が開く音がした。




