やったね!な結果を目指して
「それでは合格者はこちらへどうぞ」
ルナは合格を貰い、案内されて会場のさらに奥へ。
「御主人は剣士の才能もあるのかも……」
「そんなことないよ、剣と私でもわかるように教えてくれたお父さんたちが凄いだけ」
クインクが何やらぶつぶつと呟きながら後ろをついて歩いている。
それに笑いながらルナは答えながらグレートソードを抱えて歩く。
「誰もいませんね……?」
「教えてもらったのはこっちだと思うんだけどなぁ」
人通りはさらに少なくなり、人々のざわめきが遠くなっていく。
会場の賑やかさから少しずつ遠ざかっていくような気がして、どうにも別の場所に来たかのような錯覚すら覚える。
「いい結果がでたら皆でお祝いしよう」
「わぁい」
なんて呑気な事を話しながら進んでいく。
すると会場の最奥にブースが作られている。
そこに立っているガタイの良い男性はルナを見ると不思議そうにしている。
「君……発表会の参加者かい?」
「そうです」
「ここは最終試験のブースだ、二つの試験を合格してから来なさい」
そう言われて回れ右を指示される。しかしルナ達は二回の試験を突破しているので当然困った。
「えっと、合格してきましたけど……」
「?……、嘘は良くないぞ」
「板を割るのと剣を受ける事、それでどちらも剣に傷を作らない事……」
ですよね?とルナが尋ねると男性は少し驚いた様子を見せつつルナの持っているグレートソードと彼女を交互に見やる。
「ちょっと悪いがテストさせてもらうぞ」
「ええっ?」
男性は設営に使われているらしい角材を取るとルナに突き付けた。
それを見てルナは仕方なくと言った様子でグレートソードを構えようとしたが
「ちょっと待ってください、それはどういうことですか?」
意外にもクインクが抗議の声を上げた。
男性は子供のクインクが前に進み出たので少し戸惑った様子を見せた。
「どうもこうもない、見た目と言い分で判断するのが難しすぎるからさ」
「なんですか!じゃあ御主人が剣を振るようには……振るようには……えーと」
「自分で言うならせめて自信をもって言うべきじゃないか?」
時折ルナをちらちらと見ていたがそのたびにルナが剣を振り回すにはちょっと似合わない見た目である事を再確認してクインクはどんどんとトーンダウンしてしまう。
「でも!でもですよ!ちゃんと合格してここに行きなさいって言われましたもん!」
嘘ついてません!とクインクが食い下がるので男性はやれやれと角材を道の端に立てかけて溜息をついた。
「わかったよ、その子がこんなに言うなら嘘とは言えないな」
「ありがとうございます」
「いいんだ、元といえば俺が難癖をつけたのが悪いんだから」
男性はそう言うとブースのドアを開けた。
「試験はこれで最後、ちょっとした問答さ。お嬢ちゃんがなんて言うか楽しみではある」
どっちにしろらしくないからね。と男性はそう言って笑みを浮かべた。
「……目が腐りそうだ」
所変わって剣の新発表会で審査員を務める男性、ドルトンは溜息をついていた。
剣や鎧の鍛冶とその鑑定に長く携わってきた彼は会場で自分に売り込みをかけてくる商人や鍛冶師の剣とは名ばかりの置物の列に辟易としていた。
「これはどうでしょうか、剣の紋様に金箔をあしらった……」
商人が目の前の剣の形をした金属の塊について一生懸命語っているのが聞こえる。
宝石や貴金属のギラギラした光が彼の目を刺激し、思わず彼は目を細め、顔をしかめた。
「まあ、悪くない品だと思いますよ」
「そうですか!」
当たり障りのない言葉を吐き出してドルトンは次のブースへ。
彼が自分にとっての苦行にも等しい作業を続けているのはまだ見ぬ新しい才能をゴミ山の中から発掘するためだ。
彼が見たいのは貴金属でも商人の下卑た笑い顔でもない。
一片の妥協もない職人のこだわりなのである。
「目が痛いぞ、どうなってる」
「質がどんどんとひどくなりますね」
年配の審査員は眼鏡を拭きながら見るに値しない華美なだけの剣をスルーしていく。
彼らとてなにかしらこだわりがあるのだろう、もしくはこうしてでも活動資金が欲しいのかも。
剣の需要は戦争が減って、同様に減りつつはあるが獣のいる道、盗賊の出る街道、誕生日や成人にゲン担ぎや邪気払いに送る品など祭礼に使われたり日用品として持ち歩く者はまだまだいる。
その中で一番金が稼げる祭礼に使う刀剣類のシェアを得るために商人たちは華美な剣を売り込んでいるのだ。
「剣は飾りか……」
「嫌な話ですな」
鍛冶師はともかく商人にとっては丈夫で壊れにくい剣など利回りの悪い名剣より一本で値が張り、宝石などと抱き合わせて売れる宝剣の方がいいのである。
そう言った商人のスタンスからか名剣と宝剣の間にはいつしか大きな溝と違いが産まれていた。
発表会もいつしか人の流入が滞り、出場者も似たような人ばかり。
二人がリストに大きく、濃くバツ印をつけたい気持ちを抑えながら当たり障りのない点数を記入していく中でふと、目を引かれるものがあった。
(はて、見た事のない人だな……)
ドルトンの目にはまるでヴァイキングのような大柄の男性が剣を棚に置いて腕を組んでいるのが見えた。
彼の大きさで錯覚しそうになるが肉厚で鋭い長剣である。
そしてそれはドルトンが愛してやまない剣が放つ鈍く、危険な鋭さを秘めた輝きであった。




