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受けの次は……?

皆がなんとはなしに気後れして一歩進む人が居ない。

こう言う時に一番乗りできる人は勇敢だ。


「よ、よし!俺が行く!」


一人の男性が名乗りを上げた。

おっかなびっくりと言った様子だが無理もない。

彼らは体格こそ良いが鍛冶師だし、ルナに至っては魔法使いの女の子である。


「お願いします!」

「はい、それでは行きます!」


審査員が剣を振り上げて駆け寄ってくる。


「はっ!」

「ぐっ!」


キーン!と金属がぶつかる音が響く。お互いに力任せ、真っ向から打ち合ったのである。


「はい、それでは審査に入ります」

「えっ?」


構えたまま固まった男性の剣を調べる審査員。すると目ざとく刃毀れした部分を見つけたらしく腰から赤い旗を取り出した。


「刃毀れしてますね!失格です!」

「えーっ!」

「あと打ち合った時にヒビが入った音がしたからです!」


最初こそ納得できないと言った様子の男性に審査員は今度は小さな金槌を取り出すと刀身の樋に軽く当てる。

するとキーン、と言う高く澄んだ音が。


「今叩いた所が大丈夫な所、そしてヒビのある所が」


叩いた瞬間、カン、となんだかすっきりしない鈍い音が。


「ここにヒビがあります。危ないのでやりませんが二度目を受けると折れるかもしれません」

「そ、そんなぁ……」


剣が折れる。そう言われて男性はがっくりと肩を落とした。

丹精込めて作った剣がたった三回の試しで寿命を迎えてしまったのだからしょうがないのかもしれない。


「発表会の入賞の基準はまず耐久性!」


そう言ってひとさし指を立てる。


「次に切れ味!」


二本目の指を立てる。


「最後にそれを扱う心持ち!」


ラストは精神論的な試験があるらしい。それを潜り抜けた人の剣が晴れて発表の場に出られるとのこと。

此処に出るだけでもそれなりにステータスになりそうだが……


(やっぱり出るからには発表まで行きたいよね)


ルナはそう思い、二番手に立候補した。


「はい!じゃあ次行きます!」

「おお、グレートソード!頑丈さと使い勝手の良さが売りの武器ですね」


審査員が剣を構える。ルナもそれに倣って構えを取った。


「!……受けの構えというわけですか!」


ルナはグレートソードの切っ先を相手に向け、両手で逆手に持ったまま掲げるように柄を持ち上げた。

ともすれば棒高跳びの助走体勢にも似た構えだ。

しかしこの構えは相手の間合いの外から体重を乗せた突きができるだけでなく切っ先を下げる事で相手の横凪ぎの攻撃を受け、振り下ろしを流せる防御に特化した構え。

グレートソードの間合いの為に相手が槍でもない限り突きで攻撃されることもないという鉄壁の構えである。

無理に距離を詰めれば切っ先が相手の剣よりも先に胴体のどこかに食い込む。


(思った以上の威圧感だ……これは見た目からは想像もつかない)


剣の重量もさることながらルナの筋力によって切っ先がブレることなく相手に向かっている。

革製の防具を貫いた事は実証されているのでその威力を想像すれば致命傷を与えることは容易いだろう。


「いきます!」


審査員は一歩踏み出すと同時に切っ先に自分の剣を乗せるようにぶつける。先端はどうしても力がかかりにくく逸れやすい。

それを利用して刃を滑らせ自分の間合いに入ろうとしたのだ。


「むんっ!」


ルナは切っ先に感じる力に対抗してぐっと力を籠めると上から押し付ける力と釣り合う。

そして刃先の上を滑らせてこちらに近づこうとする剣に対し、ぶつかった瞬間に剣をわずかに右に捩った。


「くっ!こんな技術を……!」


ぴたりと剣が触れあったまま硬直する。これは西洋剣術の一つで、鍔迫り合いの際、刃がぶつかり合った状態で片方が剣を捩るとへこんだ剣の刃の部分が食い込んで動かなくなるというもの。

本来ルナには難しい芸当であったがテイロスの剣が鋭く頑丈なため剣を叩いた際に審査員の剣に刃が斬りこんでいたのだ。


「剣のおかげ……ですっ!」

「ううっ!くっ……!」


審査員の顔が赤らみ、腕に力が籠るとギギッ!と刃が食い込む。

審査員は自分の剣が悲鳴を上げていることに気付き慌てて降参した。


「参った……!十分ですっ……!」


息を吐いて力を抜くと剣を手放した。

審査員の剣にはグレートソードのつけた傷が深々と残っており、審査員はそれを拾い上げると荒い息を整えながら溜息をついた。


「この剣はまだ使う予定だったんですがね……」


ルナの持っている剣を見やるとまるで何事もなかったように鈍く光っており、傷らしい傷もない。


「文句なく、というより文句のつけようがありませんね」

「剣が一級品ですから!」


むん!と自慢げに笑うルナに審査員は思わず苦笑した。


「すみませんが少し拝見しても?」

「どうぞ!」


ルナからグレートソードを受け取って審査員はその剣の質を見ようとしたが両手にかかる重量に驚いた。

たたらを踏みそうになったのをこらえ、剣を調べる。


(これだけの重量の物を私の一撃に負けず操ったのか……その芸当をして合格を勝ち取った理由が……)


剣だけのはずがあるまい、そう言いたかったが剣が逸品であろうことも間違いないのであえては言及しなかった。

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