質実剛健!
テイロスは周囲の盛り上がりに比べて自分の所が随分と静かな事に少しがっかりした様子だった。
「テイロス君、そう気を落とさないで」
「そうだな、それにルナちゃんは向こうできっと頑張ってる」
そう言い、テイロスは飾り棚に自分の剣を置いて鞘をその隣に添えた。
(そうとも、見た目はともかく中身はきっちりと詰まってる!)
負けるもんかよ、と鼻息を荒くして腕を組んだ。
「おやおや、随分と地味だね」
時折、鍛冶師に出資しているらしい商人が自分のところの剣と見比べてテイロスの作品を批評し始める。
審査員ではないはずだが、そうやって競争相手の意気を挫こうというのだろう。
「ええ、宝石に比べたら地味でしょうね」
「君は?」
「共同製作者です、まぁそちらの宝石は素晴しいですが土台が頂けませんね」
「土台?」
「ええ、宝石を乗せている土台の質がどうにも」
ダズがもったいない!と言った様子で商人のスペースに向かうとルーペを取り出して宝石を覗く。
「ふーむ、トパーズですか……おやおや輸入品、色味は良いですがちょっと……」
「馬鹿にするな!この剣に使っている宝石は……」
「えっ、あれは剣だったんですか?アクセサリーにしては随分と大きいと思っていましたけど……」
「むぐっ!」
それは失礼しました、とダズは大袈裟に肩をすくめた。そして商人にこっそりと耳打ちする。
「そのトパーズ、微かに濁っています。恐らくあなたが払った金額よりずっと安い値段で売られている代物ですよ」
「ば、馬鹿な何を根拠に!」
「ノームの鑑識眼を舐めてもらっては困りますね。若くとも宝石、貴金属の鑑定こそが生業ですので」
ダズはルーペの前後を入れ替えると自分の帽子についたエンブレムを商人に見せるように拡大した。
ダズの一族は鉱石や貴金属鑑定を家業にしている。その鑑定眼は折り紙付きなのだ。
商人はそれを見て顔を赤くするやら握りこぶしを震わせたりしていたがすぐに鼻を鳴らして自分のスペースへと戻っていく。
付き合って居られるか!と捨て台詞を吐いたので二人は内心で笑いをこらえるのに必死だった。
「ダズ、君を相方に選んだのは間違いなかったな」
「ふふふ、そうでしょうとも」
二人は互いに拳をこつんとぶつけ、先ほどよりもさらに堂々と発表会に臨んだ。
「次の審査は突きです、こちらの革の胴当てを突き通してください」
会場の中ほど、今度は突きの威力を確かめるようだ。ここまで来ると流石にルナもここが剣を美術品と捉える発表会ではない事が肌で感じられ、受付の人が早とちりしたのだろうと気づいた。
「でも、やるしかないか!」
テイロスの鍛えた剣は展示用のはずだったが刃引きはされておらず、むしろ下手な所を触ると指を切りそうなほど鋭い。
そうでなくても切っ先は鋭く尖っていて危険な輝きを時折放っている。
「さて、突きだね……これもこの剣には有利!」
柄の長いグレートソードの鍔元近くの刀身には刃が付いておらず、刃との境目に小さな返しが付いている。
これはグレートソードが近距離で戦う際、もしくは刺突を行う際に刃の無い部分を握って槍のように突き出すためである。
「ええい……やっ!」
長さと重量、そしてルナの腕力によって革製の防具はいとも容易く貫通した。しかし……
(揺れたッ!)
(すげえっ!)
(でかいっ!)
審査員以外は違うところを見ていた。だって男だもの。
「合格です!傷一つなく、刺突にも迷いがありませんでしたね」
「ありがとうございます」
こうしてルナはとんとん拍子で発表会を進んでいく。
今度は何を試すのだろうか?板を斬ってその際の切れ味と耐久性を、次に刺突によって革製の防具を突き通した。
「第二審査まで合格した方はこちらへ!」
受付の人が声を上げているのにクインクと共についていくと二度目の審査でかなりの人数が絞られたのか人はどんどんと疎らになっている。
「どこまでいけるかなぁ」
「御主人ならきっと優勝です!」
「そう言う大会だったっけ?」
剣の心という発表にも関わらず今のところ剣の技量と耐久性と切れ味という実用性に全振りしたような内容だ。
此処からどういう風な発表会になるのだろうか?
「それでは次の審査に入ります」
まだ審査を続けている人がいるにも関わらず受付の人はさらに審査を続けるようだ。
ルナはその声のする方に目を向けると今度は剣を携えた人が立っている。
「今度は受けです、引き続き剣が耐えられるかどうかをテストしますが技量が許すのであれば受け流してくださっても構いません」
ルナはそれでは剣の質がわからないのでは?と一瞬考えたが剣を携えた人はかなりの使い手らしく受け付の言葉は審査員の技量の高さ故の言葉なのかもしれない。
ルナは気合を入れてグレートソードの柄を握りしめた。




