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大会のはじまり!

会場についたルナはその後も手厚いサポートを受けて会場の隅で発表会の開始を待つことに。


「凄い人だなぁ……」


椅子まで出してもらい、壁に立て掛けたグレートソードを時折見ながらクインクを抱っこしたままぼんやりとしている。

端から見れば出場者を応援しに来た家族みたいな見た目である。だれもルナが出場者だとは思うまい。


「こんなにいたら発表会も時間がかかりそう……」


そう思いつつルナは抱きかかえているクインクをあやすようにゆっくりと左右に揺らしながら発表会が始まるのを待っていた。




「それでは発表会の予選を行います!」


うとうとしていたルナは受付の言葉で目が覚めた。きょろきょろと周囲を見渡すと参加者たちが時折温かい視線を送りつつもぞろぞろと列を作っている。


「予選は剣の耐久性と切れ味を兼ねたテストを行います!順番が来たら係のものに紙を渡してください!」


美術品として刀剣の価値を競うはずだったよね?とルナは内心で不思議に思ったがやはり見た目だけでなく実用性も必要になるんだ!とルナは勝手に納得してクインクを抱きかかえたまま立ち上がった。


「みゅ・・・ううん」

「あら、起きちゃった?」


ごめんね、と頭を撫でながら言うとクインクははっとなった様子で目を開いた。


「ね、寝ちゃってました?!」

「大丈夫、まだ順番まで時間あるからね」


ルナはそう言ったがクインクは慌ててルナから降りると目を擦りながら首を振った。


「そ、そうはいきませんよ!私だってお手伝いに来たんですから!」


ルナがあらあら、といった様子なのに対してクインクはとにかくやる気だけはあると言った様子だ。

そのやりとりは親子か、歳の離れた姉妹のそれであり周囲の目線がどんどんと優しくなっていっている。


「ふふ、じゃあ一緒に並びましょうか」

「はい!」


ルナは安全と保護を目的に刀身に布が巻かれたグレートソードを抱え、空いた手でクインクと手を繋ぎながら列にならんだ。


「えっ、出場なさるんで?」

「ええ、友達の作った剣の発表会ですから」


列に並ぶと後ろに並んだ出場者が驚いた様子で声を掛ける。雰囲気だけなら親子連れが買い物の列にならぶようなのほほんとした様子なだけにルナの異質さが際立っている。


「それでは次のかた!」


困惑する出場者を後目にルナの順番が回ってきた。


「これでお願いします」

「はい……製作者『テイロス・ギガース』さん、出場者の……えっと?」

「ルナです、ルナ・フラウステッド」

「はい、ルナさんですね。代理の出場ということでよろしいでしょうか?」

「はい!」


年配の係員が受付を済ませると他の係員が目の前に台と板を用意した。

これを剣で切れということだろうか。


『すぅ……はぁ、ふんっ!』


ルナが隣をみると同様の列から進み出た人物が同じように用意された板を持ってきた剣で両断しているのが見えた。


『刃こぼれ、傷ナシ……合格ですね』


審査する係が剣の状態を確認して合格を出すとそのまま会場の奥へと進んでいく。

それを見てルナもそれに倣い、グレートソードの刀身を覆っている布を取り払ってクインクに手渡した。


「それでは……」


剣を手に板の前に立ったが、どうにも若い係員の視線が怪しい。どうやらルナに見とれているらしい。


「コラッ!グレートソードを振るんだぞ!ぶっ飛ばされんうちに下がれ!」


年配の係員が怒鳴ると若い係員は慌てて下がる。ルナは年配の係員に頭を下げると剣を握り……


「むぅーーん!……でやぁっ!」


大きく振り回して勢いをつけてから板に振り下ろした。その威力は板を叩き割るのに十分なもので、重量剣にも関わらずその切り口は鮮やかな物。


(グレートソードの使い方を知っているようだな、まだ若いが大したものだ……)


大きく振り抜いたにも関わらず地面にぶつけず、途中でぐっとこらえて立っている姿も審査する係には好印象であった。


「剣に傷もなし、刃こぼれも……うん、合格です!」

「わぁい!」


笑顔で次の審査を受けるための認定書を受け取るとルナはクインクを連れて会場の奥へと案内される。





「これは……大変な事になったぞ」


一方別の会場に連れてこられてしまったテイロスは周囲が華美な刀剣に囲まれている中で自分に割り当てられたスペースで一人ぽつねんと佇んでいた。

腰に帯びた剣の重量だけがテイロスの不安に対抗する唯一の要素だった。

剣心発表会では実技もあるからとアームガードなどもつけていたがそれも相まって美術館にヴァイキングが紛れ込んだような状態になっている。


「おーい、テイロス君!」


ダズがどうにかこうにかと言った様子でやってきた。人ごみを掻き分けてやってきたのかまるで誰かに襲われでもしたかのような有様だ。


「ダズ!どうなってるんだ?」

「わかりませんが、フラウステッドさんは剣心発表会の方に行ってしまったようで……」

「こまったな……、この剣も見た目が悪いわけではないが……」


刀身に浮かぶ紋様、鍔に使った金属もピカピカで美しく仕上がってはいるが装飾に宝石や貴金属をあしらった他の刀剣に比べると些か地味だ。

機能性重視で鍛えた剣なのでしょうがない部分はあるがそれでもルナの見た目込みでの高得点を狙っていたテイロスにとっては手痛い誤算だった。


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