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受付表をもらって出発だ!

テイロスも準備を終えていよいよ出発する時間になった。

四人は会場までとことこと歩いていく。


「ちょっと緊張してきた」

「大丈夫ですか?」

「テイロス君意外と緊張しいなんだね」


変化が乏しい上にドワーフ特有の髭面なので表情からは全く想像できないがどうにも動きがぎこちない。

ぎこちないといえばルナの後ろをついて歩くクインクも眠気に負けかけているのかヘロヘロしている。


「クインクちゃん、もうちょっと頑張って」

「はぁ……い」


返事も鈍い。相当眠いようだ。


「会場までは私が押しましょうか」

「そうだな剣も俺が運ぶよ」

「ごめんなさい、お願いしますぅ」


せっかく手伝いに来たのに、と申し訳なさそうにルナはクインクを抱き上げて後ろからついていくことになった。


「剣心発表会かぁ」

「何か気になるのか?」

「剣技も必要になるって書いてるからちょっとね」


ルナはエルドの手ほどきで簡単な武具の扱いを心得ている。魔法を志したのでそれが活かされる事がほとんどなかったが今回もしも剣心発表会にでていたらそれが役に立つかもと思ったのだ。


「剣の発表会はほとんど展示と説明だから大丈夫かな」

「メモを渡しときますね」


ダズから剣のコンセプトをまとめたメモを受け取り、それに時折目を通しながら歩いていく。





「受付はこちらでーす」


会場に向かう途中で広場に通りかかると剣の発表会の会場整理が行われていた。


「剣心発表会と剣『の』新発表会はこちらで受付ておりまーす!」


受付が声をあげている。恐らく主催者側もこれがとてもややこしいものなのだと思っているのだろう。

広場は剣を携えた男たちで犇めいている。


「わぁ、すごいですね」


女性の割合がほとんどない。ルナだけがぽつねんといるだけだ。

ダズも若干人ごみに紛れてしまっており、時折確認しないといなくなっても気づかないかもしれない。


「受付はあっちみたいだ」


一番背の高いテイロスが目を凝らすと声を上げている受付の場所が見えたらしい。

テイロスが歩き出したのに続いて三人は続いていく。

するとどういうわけか皆がこちらを見ている事にルナが気付いた。


「なんだか見られてる気が・・・」

「女性が珍しいからかもしれん」


テイロスはそう言っていたが実を言うと街では鍛冶場は非常に女っ気がない場所であった。

というのも鍛冶の女神は竈の女神でもあり、女性が居ると火の精霊を女性が働く場所に移してしまうという迷信があった。

鍛冶の女神は女性の、特に嫁入り前の若い女性の味方である。

伝承の習合で鍛冶の女神と家事の女神が混ざったからという説もあるほど鍛冶の女神は女性に優しく、女性が仕事に困らないように竈やろうそくの火が消えないようにしてくれたり、鍛冶場から産まれた家庭用品を長持ちさせてくれたりする。

また別の伝承では女性が武具を洗うと持ち主が戦功を得られたり、戦いからの無事の帰還を願う加護を得られたりと女性が武具を扱う事に関してに逸話も多い。

しかし悲しいかな、現実では煤だらけで高温、男臭く汗臭い場所には女性は寄り付かず、剣を買い求めるのは男ばかりで包丁なんぞを買いに来るのは主婦のおばちゃんや既婚者ばかり。

逸話や説話に関係なく鍛冶師はモテないのである。


(あいつ女連れだぞ・・・)

(ふざけやがって・・・女連れかよ)


事情を知らないテイロスはルナを連れて歩いてるのでその時点で非常に参加者からやっかまれていた。

しかもルナは女日照りの鍛冶師たちにとって目に毒といっていいレベルの少女。

抱えているクインクがすやすや寝ているのを見て、もしや子供か?などと勘繰るものも。


(既婚者……?まさかな……)

(嘘だろ、初参加っぽいのに既婚者なのかよ……)


街の発表会に参加しているのは皆修行中の鍛冶師も多い。彼らは若いが未熟故に所帯なんてまだ持てていない。

ついでに言うとモテない。

ついでに言うと悲しい事にダズも子供にカウントされている。


「受付を」

「……あそこへ行きな。ほらこれな」

「どうも」


受付も当然鍛冶師の関係者である。テイロスに対しては塩対応を極めていた。

投げ渡すように番号が書かれた紙を渡されるとテイロスは内心で不思議に思いながら紙を受け取る。


「あの……」

「後がつかえてるんだ、さっさとどいてくれ」


ついでに後列から押される形でテイロスはそのまま見えなくなってしまった。


「テイロス君がみえなくなっちゃった」


ルナは困ってしまった。グレートソードを持ったまま発表会の事を知っているテイロスとはぐれてしまった。

どうしようかと思ってダズを探すもののダズも雑踏に流されたのかいなくなっている。


「あのー……登録を……」

「えっ!登録!わかりました!どうぞどうぞ!」


ルナが言うと何人かが振り向き、女性と分かるや否や列が割れてルナが運ばれるように前列へ。

そして受付は目の前の少女に仕事できますアピールをしたいがためにルナの持っている剣心発表会のパンフレットを目ざとく見つけて即座に受付を終了させた。


「えっと、あの……」

「剣心発表会に登録ですね!わかりました!」

「えっえっ?」

「おい!会場まで運んであげろ!」


受付がテイロスとは正反対の笑顔でルナの受付を済ませるとスタッフが我先にとルナの抱えているグレートソードを奪い合うようにして運んでいった。


「それではこちらへ!」


ルナはまったく訳がわからないままに剣心発表会の会場へ連行されていった。


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