大会って……どっちの?
アダムはテイロス達に何も知らぬルナが困らないようにと注意するつもりであったがここで困った事が起こった。
「ただいまー!」
旅行から帰ってきたティナたちに大勢のオマケがついていた事だ。
「このおっ……御仁は?」
「今おっさんって……」
「ㇱッ!」
魔法学校になぜかイシシがついてきたのである。イシシが何故ついてきたかというと船で帰ってくる最中の出来事である。
「イシシのおじさん、そういえばなんか空飛んでなかったっけ?」
こうティナが尋ねた事がきっかけだった。
ウェパルの難癖を回避して契約を完了したイシシ達だったがその際にイシシはウェパルにルナ達に何かあった際に力になれるようにと彼女から力の一端を借り受けていたのだ。
「そうだった、実はウェパルから力を借りてな」
「えっ!じゃあおじさんも魔法使いになったんだ!」
「そうなのか?」
知識のないイシシからすれば頭に?が浮かぶ状態だった。
ティナたちからしても知識がそれほど差がないためイシシが魔法を使えるようになったと思ったのだ。
「しかし魔法なんて使ったことがないからわからん」
「それもそうか、魔力については?」
「……知ってたら苦労しないと思うよ」
クロエがぼそりと呟くとティナもそれもそうか、と思い至りうーんと考え込む。
感覚派の集まりであるFクラスはこういった時に全く無力である。
「そういえばウェパル様は嵐を呼ぶ力もあるんでしたね?」
カティナの言葉にイシシは頷く。その力でイシシは二度もえらい目に遭っているのだ。
「嵐か、そういえばあの暴風を耐えた分だけ力が宿るとかなんとか……」
「じゃあおじさんは人が吹っ飛ぶ勢いの風が起こせるってことか」
「そうかもしれん」
イシシは自分が浴びた暴風を思い出していた。そんなとき、ふと鼻がむずむずと……
「ぶえっきしっ!」
「ぎえーっ!」
イシシがくしゃみをするとその時を思い出すような暴風が吹き荒れた。当然狭い甲板は阿鼻叫喚である。
ティナとクロエが派手に吹き飛び、カティナがひっくり返った。
甲板には吹き飛んで塩の袋の上で伸びている二人と、ひっくり返った衝撃で頭をぶつけて失神したカティナと鼻水を垂らしたイシシが呆然と立っているだけという地獄のような状態が広がっていた。
「なんてことがありまして」
「そりゃ災難だったな」
カティナは思い出したように頭を擦りながら言う。
「それでこうやって先生とこに来たんだ」
「全く難儀な話だ」
イシシはそう言うとにっかりと笑いながら言った。
「悪魔の権能となると普通の魔法とは違うがどちらも何よりイメージが大切だ」
「そんなもんなのか?」
「そんなもんなの?」
ティナとイシシが揃って首を傾げたのを見てアダムは頭を抱えた。
「ユピトール!お前はわかってて当然だろうが!」
「うわぁ!ごめんなさーい!」
「ええい!筆記からやり直してやる!」
「ふぎゃー!」
「お邪魔ー」
アダムは帰ってきた問題児達とイシシの相手にかかりきりになってしまった。
「ぶえっきしっ!」
「うぎゃああ!」
教室では度々暴風が吹き荒れた。
しかもティナがそれに巻き込まれて勉強が捗らなかったので結局テイロス達への助言は後回しになってしまった。
「よし、準備はいいか?」
「はい!」
それから数日後、装飾を拵え終えたテイロスは剣を手にダズと一緒に準備万端と言った様子である。
今日は発表会の当日。二人は送られてきた出場の案内を見る。
「剣心発表会と」
「剣新発表会……」
「「ややこしい」」
剣の心を発表する会と、剣の発表会だったのが妖精食いの騒動で会場が壊れた為に場所が変更になり装いが新たになった剣の発表会なので剣『新』発表会 というわけなんだろう。
「もうちょい捻った名前ならわかりやすかったのにな」
「どっちも名前だけじゃ内容まで想像できませんもんね」
ダズとテイロスは封筒から申込用紙を取り出して記入するとそれぞれを作業台に置いてルナを待つことに。
「おはよー!」
「おお、来たか。おはようルナちゃん」
「フラウステッドさん、おはようございます」
そわそわしていると待つ時間も長いものだがルナはそんなことを知る由もない。
そして予め二人が頼んでいた時間にクインクを伴って歩いてきた。
「きょうはクインクさんもお手伝いに?」
「そうです……あふ」
旅行中にルナが居ない夜はあまり寝付けずまだ寝不足気味だったクインクはまだそれが抜けていないのか欠伸をしながら答えた。
「グレートソードは重たいが会場まで運べそうか?」
「大丈夫、父さんに秘密兵器を貸してもらったから!」
よく見るとクインクが小さな一輪車の荷車を持っている。
どうやら荷台に切っ先を乗せて転がしていくようだ。
「これで運ぶと楽だって言ってた」
「クインクさんが押せばさらに楽になりますね。これだとまるで騎士と従者みたいだ」
グレートソードを携えたルナと剣を運ぶ補助をするクインクは本来の立場も相まってずいぶんとしっくりくる。
ダズがそう言ったのを聞いてルナとクインクは少しだけ自慢げに胸を張った。




