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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、水軍の船長と出会う
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ほらみろ!な結末

その後、ルナは夜はウェパルの宮殿。朝は皆と離島で遊ぶという形に。セイレーン達も加わって本来ならばあり得ない面子での海遊びに興じた。

最初こそルナの逗留は宮殿内でも賛否が別れていたがやがてルナの人柄とウェパルの上機嫌が合わさって海の悪魔達の中でもルナは比較的早く受け入れられた。


しかしである。


「もう帰るよー!」

「もうちょっとだけ!もうちょっと!」

「伸びるー!焼く前のパン生地みたいに伸びるからー!」


数日後、帰路に着こうとする中、浜辺でルナを海に引き込もうとするセイレーン達とそれに抵抗するティナ達。

ルナを綱に見立てた綱引き状態である。


「だーめだってばぁ!」

「そんな事言わずにぃぃ……!」

「み”ー!」


セイレーン達はルナが居る時の宮殿の快適さに慣れきって手放したくなくなったのである。

何せルナが居れば魔力の放出によって空気が良くなるのと、ウェパルが上機嫌で雰囲気が良くなるのだ。

普段は威厳たっぷりで恐ろしいウェパルもルナが居るだけでニコニコしているのだ。上司の機嫌を取らなくていいので部下達も仕事がやりやすい。


「あーあ、やっぱりこうなったな……」

「イシシのおじさんも見てないで手伝ってよぉ!」


イシシはため息をつくとルナの手を掴んでセイレーン数人ごと引っこ抜いた。エルドに負けない怪力である。


「助かったぁ、それにしてもなんでこうなるってわかってたの?」

「うむ、なんとなくウチのじーさんが現役だった時にそっくりな感じだったんでな」


小さな頃、イシシは祖父にすごく可愛がられていた。鬼のように恐れられるイシシの祖父は商才も統率力もあったが根っこは海賊の気質。

怒れば恐ろしいし、怒ってなくても恐い見た目なのだ。

しかも手も足も出すのが恐ろしく早かったため殴る蹴るの被害にも部下は悩まされていた。

例外と言えば彼が将来を嘱望しているイシシが来ている時だけだった。祖父の本能か、孫が来るとニコニコしていたのだ。

そうなるとどうなるかと言うと皆がイシシを何かにつけて引き留めるようになったのだ。

子供が職場にいるのはともすれば邪魔になりかねないものだったが、それでも拳骨の雨が降ることに比べれば雲泥の差だった。


「なんてことがあったんでな」

「おじさんとこも大変だね」


ティナとイシシが話しているのを他所に浜に打ち上げられたセイレーン達はルナに縋りついて哀れっぽい視線を送っている。


「寂しいですぅ……」

「そ、それは……うーん……」


こうなるとルナが困るのがわかっているためだ。

ルナに迷惑をかけると本来は激怒するウェパルも逗留が延びるかも?という淡い期待が勝ったのか知らん顔をしている。


「さて、こいつらを振り切ってどうやって嬢ちゃんたちを送り届けるかだが……」


イシシがうーん、と考え込んでいる。セイレーンたちの哀願にルルイエの制止がいつの間にか加わって非常にカオス。

ウェパルはそれを遠くからちょっと期待しつつ見守っている。


そんな時である。


「おーい、なんか面白い事やってんじゃん」


その声に子供を除く全員が凍り付いた。

全員が恐る恐る首を向けたところ、くたびれた修道服を翻して一人の聖職者が離島にやってきた。

小さな船に乗り、のんびり揺られてやってきたようだ。


「え、エトナー……!」

「きゃいきゃい騒いでんなぁ、私も混ぜろよ」


にっかりと笑顔を浮かべた瞬間である。


「「「きゃー!」」」


全員が悲鳴を上げ(イシシ含む)、そして全員が散り散りに逃げ出していく。

ルルイエはルナを抱いて即座に転移し、ウェパルは腕を伸ばすとセイレーンたちを回収して即座に海に、イシシは子供たちを全員船に乗せて全速力でオールと帆の力で離島から逃げて行った。


「お、おい……なんで逃げるんだよ!」


エトナ―は納得いかないといった様子で頭を掻いた。ちょっとばかし自分も若い子に混じってキャンプでもと思っただけなのにである。


「誰も居ねえんじゃ居る意味ねーじゃん……」


ちぇっ!とつまらなさそうに乗ってきた船に目をやるとサハギンたちが船を三分割している最中だった。


「こ、この野郎!」


わー!とサハギンたちはそれぞれが船のパーツを持ってこれまた散り散りに逃げて行った。

取り残されたのはエトナ―ただ一人である。


「わ、私の出番これだけ……?」


離島に一人取り残されたエトナ―のつぶやきが潮騒に紛れ、そのまま消えていった。







「イシシのおじさん!なんで逃げるのさー!」

「か、体が勝手に動いた!」

「そんなに!?」


ティナたちはイシシがエトナ―にひどい目にあわされたのは知っていたがまさか即座に逃げ出すほどとは思っていなかった。


「と、とにかく港についたら新しい船に塩を積むからお前さんたちはそれに乗って帰るといいぞ」

「はぁい」

「上りは速度が出ないからまたカティナの嬢ちゃんの力を借りるかもしれん」


たのんだぞ、とイシシが言うとカティナは頷いた。


(帰りはルナちゃんと別行動かぁ……)


結局ところどころルナと離れ離れだったのでちょっと残念と思いつつ。

船に揺られるティナたちも、ルルイエの転移で一足先に街に戻ったルナも、そして海の悪魔達も。


また、こんな風に会えるといいな。


そう思いながら港へ、街へ、海の底へと戻っていく。

楽しい旅の思い出はいくつかのハプニングをスパイスに楽しい思い出になるだろう。


また次があればいいな。


誰もがそんな風に思えた旅だったから。


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