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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、水軍の船長と出会う
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駄々をこねるなよー!

ルルイエはウェパルがふざけている事に一縷の望みをかけて彼女の顔を見る。


『・・・』


たぶんマジだ。あわよくばって感じで確実に狙っている。

寿命なんぞあってないようなものの悪魔にとって百年はそこまで長くはない。

大人の悪魔にとっては三百歳を越えたくらいからどうでもよくなる。人間から悪魔になった者も老齢に達してからなので当然ながら時間に頓着しなくなる。

ルナなどは彼らからすればよちよち歩きの乳幼児同然なのだが・・・。


(子供の百年とか許す訳ないでしょうに!)


百年は流石にルナも嫌がるだろう。ルルイエとしても許容できるものではない。大体の悪魔は百年で成人と見なされる事が多いが悪魔換算で大人になるまで預からせろなど到底了承できない。しかし目の前の大悪魔はルナとの交流を心待ちにしていたわけで、それを頭から否定するとさらに面倒なことになる。


『十年も百年も論外よ、わかってるでしょう?あの子はまだ十六歳!子供を親から引き離すなんて!』

『むぐぐ・・・』

『あんな子だから御両親も深く彼女を愛しているわ』


そう言うとウェパルが目に見えて弱っていくのがわかる。彼女はなんだかんだ言ってバエルよりは常識的なのだ。


『なら・・・』

『なに?』

『ならあのジジイを黙らせる方法を考えてよ!』



いえーい、ワシ、またあの子に手紙書いてもらっちゃったもんねー!


アモンが冷え切った目で見ているのもどこ吹く風。バエルは集会がある度にそう言っていた。

イポスとラハブは既に集会にも来なくなった。律儀なウェパルとなにかとお使いを頼まれるルルイエ、そして大悪魔の序列次席としてバエルの副官的なポジションのアモンがいつもバエルの自慢話を聞かされていた。


『そ、それは・・・まあ、そうなんだけども・・・』


返す言葉がない。しかしである、今の状態は確かにバエルに対してかなりのアドバンテージを得られる状況ではある。


『まあ実際ね?何年とか何カ月とか言われると困るわけよ』

『短かったらいいわけね?』

『そう言う事になるけど・・・ヶ月単位はダメよ?』


ルルイエは常識的な期間を頭の中で思い浮かべる。一週間?それでもかなりきついが・・・。


『二十八日くらいか・・・』

『ギリギリを攻めないでくれる?』

『ヶ月じゃないわよ』

『そういうの屁理屈っていうのよ』


ルルイエは頭を抱えた。普段ならこんなバカげた会話なんかしないはずなのに。こんなに、こんなに物分かりの悪い奴じゃないのに。どうして、どうしてこんなことに・・・。


『頭痛くなってきた』

『出直して来たら?』

『嫌よ、こういうのはさっさとまとめて帰るに限るもの』

『ちっ』

『舌打ちしたわね?』

『うん』

『くききーっ!』


変な声が出た。ルルイエにも限界はある。

そろそろこの海域を滅ぼすか、などと考えていたところ宮殿からずるりと太い一本の何かが飛び出した。

まるで一筋の糸のように漂うそれがルナだと気づくのにそう時間はかからなかった。


『せーーーーんせーーーーー!』


笑顔でやってくるルナもといアービルの姿だと知覚できた途端にルルイエはなんか色々と救われた気がした。

癒しが向こうからやってきた。おそらくはティナの真似をしてこちらの疲労を狙っていたであろうウェパルが作戦が崩れてしまったとばかりに眉間に皺を寄せている。


『来てたんですね!』


広い海では体の事を気にしなくていいからかその巨体を動かし、光の届かない海底で陽光のような笑顔(個人差あり)を浮かべながら二人の所にくるとまるでウェパルの羽衣のように巻き付き、四対の腕でルルイエを抱き留めた。


『そうよぉ・・・そうなのよぉ・・・』


アービルに抱きしめられ、急激にストレスから解放されたせいかルルイエの言葉遣いが怪しくなっている。

癒し効果は覿面だ。


『先生うねうねですねぇ』

『そうよぉ、海だとこうなるのよぉ・・・』


悪魔の姿になっているからかルナも全く動じた様子もなくルルイエの言葉と同時にうねる触手の束に触れて笑顔を浮かべている。ウェパルもルナに巻き付かれた状態でちょっとだけ嬉しそう。


『ウェパル様、私ここに旅行で来たんです』

『そう聞いてるわ』

『なのでそう遠くない内に帰らないと』

『・・・うん』


ウェパルはアービルの言葉にしょんぼりした様子で頷いた。


『でも、まだ帰る日じゃないです』

『・・・!』

『少しの間だけでもここにいますから、帰る日にはちゃんと送り出してほしいです』


アービルはそう言うとウェパルの額に口づける。悪魔化して巨大化しているとはいえその体のサイズは未だに大人と子供ほども差がある。全長で言えば超えてはいるが。


『わかったわ、でも今日だけは泊ってもらうから』

『はぁい』


それじゃあ、とアービルはウェパルに手を引かれて宮殿まで戻っていく。

ルルイエはそれを見送ると交渉の結果を伝えるべく踵を返した。




『ただいま・・・』

「おかえんなさーい」


ティナたちがロッジですこし不安そうにしながら待っていたがルルイエが戻ってきたのがわかるとティナが早速近づいてきた。


「どーだった?」

『とりあえず今日は泊まるって言ってるわ。けどちゃんと帰る日には合流できると思うわ』

「そっかー、とりあえず一安心だね」


ティナはルナが帰る日までには戻ってくると知って一安心。カティナ達も同様だった。

ただ一人イシシだけがまだ不安を抱えていた。


(嬢ちゃんがウェパルだけじゃなくてセイレーンたちにも好かれたらどう転ぶかわからんよな・・・)


言わぬが花か、イシシは煮詰まってしまったスープを水で薄めながら海を見つめた。


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