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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、水軍の船長と出会う
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昔話の戦い

しかしいくら強いと言っても所詮は魔物、エトナーに敵うはずもない。神器である杖の能力を解放した一撃により首を落とされた魔物は海中に沈んだ。

巨体故にその流れた血は付近の海を染める程だったと言う。


いーい運動になった・・・あん?


ぶくぶくとあぶくを起こして沈んでいく巨体を見送って踵を返した時にエトナーは違和感を感じて振り返った。

沈んだはずの巨体が浮かび上がる?そんな感覚である。

その刹那に水面が爆発したかのような勢いで水柱が上がる。そしてそれがただの水柱ではなく、長く太い大蛇のような体を持っていることが確認できた。

肩に担いでいた杖を構えて振り返ると目の前にもう一体、全く同じ個体がいたのだ。


再生したか・・・いや、こりゃ兄弟か!驚いたなぁ!


兄弟の仇を前に憤怒と喪失の涙を流しながらエトナーを睨みつける姿が山のように聳える。しかしエトナーに退くという選択肢はない。二度目の戦いが始まりかけた刹那、怪物の片割れはエトナーを前に退く事を選び海底へと身を翻した。

エトナーは聖術で捕らえようとしたが海洋に溜まった夥しい量の血とその穢れが聖術の展開を妨害し、効力が弱まった為に怪物は拘束を引き千切って逃走した。


「エトナ―さんから逃げおおせるなんて・・・」

『状況が悪かったんでしょうね、地上なら間違いなく仕留めていたんだろうけど』


聖術の効き目や奇跡の発動が困難になるとエトナ―も海の上で行動することが難しくなる。そうなると海洋生物が人間でしかないエトナ―の追撃を振り切る事は容易かったのだろう。

逃げおおせた怪物は怒りと空腹を鎮めるために獲物を探し始めた。そうしてワイルビーは未曾有の危機に直面することになった。


嫌な予感がする!


二コラがその事に気付いたのはおそらくはウェパルとの度重なる会合による感覚の慣れ。気配を察知することができるようになったこと。ウェパルのような強大な感覚が鉄火場を潜ってきた二コラの勘に触れる感情を帯びてやってきたのだ。


GAOOO!


粘っこい殺気を纏い、怪物はワイルビーに来襲した。まるで津波が押し寄せる寸前のような、皆の心にけっして無視のできないざわめきを与えながら怪物は海中を進んだ。

兄弟の仇!まずは似たようなヤツを食って腹の虫を宥めたい!そう思い、怪物は漁にでていたワイルビーの民を襲った。海に慣れた漁師といえど所詮は非戦闘員である。ましてや相手は聖人が相手取る怪物だ。

最初の犠牲者はぱっくりと開いた口に船ごと飲み込まれ、海中に消えていく。


化け物がでた!海竜かなにかだ!


ワイルビーの高台に設置された警鐘が鳴り響き、ワイルビーの住民は高台に走った。本来は津波などの災害を知らせるための物だったがその用途から外れてはいなかったと言えるだろう。

報せを受けて逃げ遅れを高台に避難させた二コラは騒ぎの原因が海にでた巨大な魔物と知り、剣を携えて海へ走った。慌てふためく一部の者が悪魔の仕業だと口走った。

しかしウェパルがそのような事をするはずがない!と一蹴して眼前に広がる景色に目をやる。

その光景は想像を絶するもので、津波と共に海中より姿を現した怪物はウェパルを越えようとかという大きさに膨張し、怒りと空腹で口を開けていた。

ギラリと赤く光る瞳は感情を何より表し、開いた口は建物すら丸のみにしてしまいそうなほど。


「ウェパル様よりデカい・・・」

『魔物が一時的に、命を削って体を大きくすることがあるの。海で生きる魔物がもつ切り札みたいなものかしら』


人間の筋肉がパンプアップするようなものらしい。あまり珍しいものではなかったようだが元のサイズがサイズなだけにその効果は絶大で、筋力だけならウェパルも手こずるほどの力を手に入れていた。

二コラは小舟に乗って海原から顔を出す怪物に真向から立ち向かった。逃げるなど最初から選択肢に入っていない、ワイルビーの顔としても海の民としてもここで引いては誰も海に出られなくなる。そうなればワイルビーは再びなんの希望もない寒村に逆戻りだ。そんなことはできなかった。


GUoooooooooo!


ウェパルが海流をまるで鋸のように操り、怪物の肉をまるでするどい爪のように引き裂いた。怪物が痛みに身を捩る度に津波が起こり、海にほど近い場所は赤く染まった波をなんども浴びる。残るのは破壊の痕跡だけだ。

二コラはそんな中で船を巧みに操り波を乗り越えて進むとウェパルの肩に飛び移って彼女と共に戦う覚悟を決めた。


「カッコいいですね!」

『ええ、確かにあの時のあの子は・・・』

「ウェパル様もですよ!」

『そ、そうかしら?』


ルナが思い描いていたのはまるで神話の一ページ。肩に乗った二コラが剣を抜いて怪物と対峙しているシーンだ。

実際は二コラがマストに張られたロープを伝ってのぼるようにウェパルの髪の毛を掴んで登り、肩によじ登ったのだが。


ぶっ殺してやんぜ!


二コラは剣を抜いて怪物がウェパルに飛び掛かるのを待った。彼女の剣は威力だけならエトナ―も納得するだけのものだった。対人スキルが洗練されたものではなかったために彼女には通じなかったが筋力、そして剣の一撃はどちらもその当時の戦士たちにひけを取らない剣の名手と言えた。

そして怪物が飛び掛かった刹那。大口を開けた怪物がウェパルに噛みつこうとした瞬間に二コラは口の中に飛び込んだのだ。


覚えときな!ワイルビーの二コラ!お前を仕留めたヤツの名を!


上あごと下あごを掴んでウェパルが食い止める中、二コラはその剣の一撃で怪物の下あごを削ぎ飛ばした。


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