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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、水軍の船長と出会う
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開祖の聖職者、二コラ!

ウェパルが出向くハメになるほど大暴れした二コラであったが彼女にもちゃんとした思惑があった。

彼女はとにかく自分達を高く売り込みたかったのである。

頭目である自分があっさりと屈してはワイルビーの民や自分の部下が低く見られると思っていたのだ。


『そうしてこの地に私はやって来た』


どんな奴が待っているのかとウェパルは身構えた。

しかしウェパルが出向いてからの交渉はさほど難航はしなかった。


「どうしてですか?」

『ニコラも私が出てきた事で交渉における一番大事な格を得ることができたと思ったんでしょうね』

「格?」

「あれだよ、多分ニコラさんは物資の多寡じゃなくて『偉い人が交渉に来た』って名目が欲しかったんだよ」


不思議そうにしているルナにティナが補足するとルナはなるほど!と手を叩いた。


「ウェパル様と交渉した実績があれば他の人と話した時も強気に出られるんだ」

『そう言うことよ』


大悪魔が交渉に赴いた人物が治める集落となれば確かな箔がつく、ニコラはまずもってそれが欲しかったのだ。

そしてウェパルはその思惑を見抜き、それでいて堂々たる振る舞いを崩さないニコラの事を確かに気に入った。

このような剛の者を引き込めばニコラの部下達やその影響下にある者達は軒並み信者として自分にも付き従う。

悪魔にとってカリスマのある教祖足り得るニコラの存在は有り難いのだ。


『そして二コラは身に余る野心すら抱いていた』

「野心ですか?」

『海を支配して大船団の長になるという野望をね』


ウェパルの力を持ってすればそれは容易い。しかしその代償は遠からぬ身の確実な破滅だ。

しかし二コラはそれを厭わぬほどに豪快な人生を望んでいた。


『悪魔はそう言った輝く火花のような生き様が好きなの。だから喜んでその望みを叶えようとしたわ』


その言葉から二コラの野望が未然に防がれたであろう事に気付いたティナはどことなく嫌な予感がしていたが黙って続きを聞くことに。


「叶えようとした・・・?」

『来たのよ・・・奴が』


ウェパルは忌々しそうに歯を軋らせる。あらゆる悪魔の天敵、エトナ―襲来である。


『二コラと契約を交わそうとして此処に来たら・・・』


笑顔で顔を出したウェパルを出迎えたのはニッコリと笑みを浮かべたエトナ―だった。

大悪魔である自分が何度も行き来しているのがアダになったのだ。悪魔の気配に敏感な聖職者ならばいつかバレるだろうとは思っていたがまさかこんな時にやってくるとは、とウェパルは己の迂闊さとエトナ―の勘の鋭さに歯噛みした。


面白そうなことやってんじゃん


その一言と共に視界が一瞬暗転した。明滅する視界と激痛が走った頬、そして杖を振り抜いた体勢で立っているエトナ―の姿を見てすぐさま自分が殴られた事に気付いた。

二コラは!?と頬を抑えながら距離を取ったところ・・・


『鼻血を流して倒れてる彼女が視界に映って・・・』

「うへえ・・・」


契約を交わすはずだった彼女は折れた剣を握りしめたまま鼻血を流して失神していた。顔に痛々しい鉄拳の痕を残して・・・。諸行無常である。周囲の激しい剣戟の痕と破壊の痕跡が彼女の必死の抵抗を物語っていたが、それもエトナ―の前では虚しいものだった。


『あの時の!ヤツの邪魔さえなければ・・・!この地を起点にした海洋国家が出来上がってたのに・・・!』


大悪魔、渾身の悔し泣きである。ウェパルからしてみれば娯楽と信者と自身が地上に拠点を作るための構想が全て水の泡になった瞬間であった。


「え、じゃあ開祖の聖職者って・・・?」

『たぶんエトナ―と二コラの話が混ざったんじゃない?その後はホントに当たり障りのない契約に書き直されて・・・二人で抵抗する度に殴られて・・・』


大悪魔と腕っ節のある海賊の抵抗である。相当なものだっただろう。普通なら海の近くでこのコンビに敵う相手は居なかったはずであった。


『二コラがヤツの首にカトラスをぶっ刺した時に・・・エトナ―が笑顔で二コラの首を絞め返してるの見てたら・・・どっちが悪魔かわかんなくて・・・』


二コラは恐らくその人生で一番の驚きと恐怖を覚えていただろう。この世に大悪魔を殴り倒し、首に剣を突き刺しても死なないヤツがいると知ったのだから。

その瞬間を思い出してウェパルは浜辺に蹲った。ルナが小刻みに震えるウェパルを必死に慰めている。

セイレーンたちも普段は恐怖の象徴であるウェパルをここまで完膚なきまでに叩きのめすエトナ―に改めて恐怖を覚えていた。


『もうやだ・・・あいつなんなの・・・』

「ウェパル様・・・泣かないで・・・」


ウェパルの涙を拭いながらルナも若干もらい泣きしている。そしてティナはワイルビーに伝わる伝承を遠い目をしながら整理していた。


(ガラバのおじさんって・・・ホントのことは知らないんだろうなぁ・・・)


彼の、そして今に伝わる祭礼の際の彼女は海に飛び込んで人魚になったことになっている。

実際はエトナ―に漏れなくボコボコにされて調伏された哀れな海賊の一人だったのだが。


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