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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、水軍の船長と出会う
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開祖の聖職者!・・・ってどんな人?

聖職者らしからぬ女性とは言ったものの、ウェパルの話によると彼女は元々聖職者ではなくイシシのような海の民だったとのこと。


『杖ではなく剣を、法衣ではなくバンダナと麻の服とズボン。靴すら履いてなかったわ』

「なんで裸足なんですか?」

「昔の靴は船の上はとっても滑るからだよん」


ティナの補足を受けてルナはへー、と感心したように頷いた。当時の靴底は木製の物が多く、濡れた甲板では凄く滑ったのだ。それに湿気で腐りやすかったため海賊や漁師は素足な事が多かった。


『良く知ってるわね』

「靴は旅にとっても大事だったから親が凄くこだわってたのさ~」

『なるほどね、話を戻すけど・・・』


ウェパルがそう言って再び彼女の事を話し始める。


彼女の名前は二コラ。ワイルビーがまだそう呼ばれていなかったころ、その土地に流れ着いた荒くれ者を束ねる女傑であった。

ワイルビーは今のような港町ではなく、小さな集落であった。一説によれば犯罪者や追放者を隔離するための場所であったとも。そんな場所は荒くれ者や世間からつまはじきにされる者達の行きつく先でもあった。


『そんなところでは神の威光も陰るわ。なにせ農業にも適さない、海もその当時は私達の独壇場。小舟で繰り出せば即命を落としかねない場所で漁をし、山に入って獣を狩って生きるか』


どちらも命がけだったわね。とウェパルは言う。そのような場所にまともな施設などあるわけもなく、当時にはまだ聖職者もほとんどやってこない場所。頼れるのは僅かな資源と自分達の腕っ節のみだ。

それでもその土地で暮らしていれば人々はその土地を故郷と定め、その土地で生きていく決心をする。

二コラはその時に船で漕ぎだした命知らずの海の民。


『剣だけで海の魔物とやり合える数少ない存在、当時でも貴重な存在だったんじゃないかしら』


漁の危険を減らすだけでなく襲い来る魔物すら生活の糧とした彼女の勇名は次第にウェパルの耳にも届くようになっていた。


「すごいですね、剣だけで・・・魔法も使わなかったんですか?」

『学校もなにもなく、下手をすれば文字も読めないような連中よ?魔法なんて使えっこないわ』


ルナはそう尋ねたがそもそも魔法は貴重な才能なのである。しかも仮に才能があったとしてそれを磨く場所と知識が無ければ実用的なレベルに達するのは難しい。それが戦闘となると猶更である。


『私としてはそういう奴は仲間に引き込んで、利益の代わりにそいつを信者にしてしまうのが良いと考えた』


当時のワイルビーはまだまだ発展途上、村に毛が生えた程度の規模だった。そう言ったところなら初期投資も少なくて済む。最小の投資で最大限の感謝や信仰を得られるとウェパルは考えた。

聖職者のほとんどいない土地ならば支配も容易いとも思っていたのだ。


「発展させるなら投資けっこういるくない?」

『商売としてみるならね、でも食料や資材だけで信仰を得られるから悪魔としては安上がりなのよ』


元よりウェパルは海を支配し、金銭は貢ぎ物があるのでどうとでもなる。しかしながら恐怖以外の信仰を集めようとするとどうしても日光教にぶつかるし、何かを信仰する余裕のある土地だったりすると知識や生活の余裕から新たに何かを信仰させるというのは難しい。

その点、食料や資材を有難がってくれる宗教知識的な意味で無垢な存在は貴重だったのだ。

追放者や荒くれ者は総じて力ある者を信仰する。そして海の民ならば自分を信仰させるのは容易い。

それが食べるのにも困っている信心の薄い連中ともなればなおさら。


『私は二コラと接触を試みた、セイレーンを派遣して会話を試みたのよ』


食料と言葉によって接触を試みたところ、二コラは思いのほか好意的だった。

彼女はそう言った利に敏く、自分達を仲間に引き入れたいという思惑を察していち早くウェパルと交渉を始めた。


『そこからが・・・まぁ、大変だったわ』


二コラはとても豪胆な性格をしており、名代で派遣されたセイレーンや地上で行動が可能なサハギンなど半魚人たちではとても交渉をまとめられなかったのである。


てめえらそれでアタシらを養うつもりか!おとといきやがれ!


そう言って蹴り出されて怪我をするサハギン、下着代わりの貝殻の胸当てを取られ、胸を隠しながら逃げ惑い恥ずかしさから泣き出すセイレーンなど彼女の暴れっぷりは枚挙に暇がなかった。

剣一つで海の上で魔物と渡り合うような女である、陸上では彼らに勝ち目がなかったのだ。


「な、なんか・・・エトナ―さんみたい・・・」

『ま、まあ・・・そうね』


皆のイメージがイシシからエトナ―に変わった。当時を知るセイレーンはこの場にはいなかったがウェパルの言葉を聞く限りルナと同様の感想になったようだ。一斉に同情を帯びた視線がウェパルに注がれる。


『そ、そんな目でみないで・・・』


そんなやりとりが続いた中でとうとうウェパルが自分から出向くしかなくなったのである。


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