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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、水軍の船長と出会う
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人魚の入り江

すいすいと進む船はそのまま美しい浜が広がる入り江へと差し掛かった。


「到着だ、ここが『人魚の入り江』だぞ」


左右を岩壁に挟まれ、波も穏やかなこの一帯は見る人を魅了する美しい風景が広がっている。


「すごーい」

「海が透き通って見えます!」


浜辺は祭礼に使われる貝を拾う浜などと同様に貝殻や白い砂が流れ着く為に非常に透き通っており、水深が深くなるにつれて青い色に変色していく幻想的な雰囲気である。


「よし、それじゃ宿泊施設にむかうぞー」


桟橋に船を停めるとイシシは慣れた手つきで船を固定する。

皆を降ろすとロープで頑丈に固定する。


「厳重ですね」

「流されたら大変だからな」


船が島と港を繋ぐ唯一の移動手段である。その気になれはルナとクインクは自力で帰れるがほかの面々は島に取り残されてしまうのだ。


「船がなくなった時は?」

「お嬢ちゃんは帰れるんだろ?」

「そうだね」

「じゃあお嬢ちゃんに先に帰ってもらうしかなくなっちゃうなー!」


イシシが叫ぶと入り江までついてきていたセイレーンが持っていた銛やナイフを引っ込めて海の方へ戻っていく。


「油断も隙もありゃしねぇ・・・」

「船沈めてまでルナちゃん引き留める気だったのね・・・」


ティナが呆れながら言う。おそらくはこのところウェパルの機嫌が良くないからだろうが部下であるセイレーンたちもちょっと必死になっている。しかしながらルナは飛べるのでその気になれば一滴も海に触れることなく帰れてしまう。


「泳ぐにしてもまずは小屋を掃除しなきゃな」


イシシはそう言うと島の入り口で待っているルナ達の元へ。




「ここらへんにあったはずだ・・・あったぞ」


イシシの案内で歩くこと数分。離島は山が中心部に聳え、宿泊施設はそのふもとにある。

人通りは全くないが時折人の手が入っているのか道がしっかりと残っており、迷うことなく歩いてこれた。


「ここが元は聖職者が修行に使っていたロッジだ」


イシシがそう言いながら指さした先には少し古びてはいるが立派なロッジが建っている。

規模からしても10人近い人間が暮らせそうなほどだ。


「開祖の聖職者様も使っていたのでしょうか」

「どうだろうな、それは生き字引に聞くべきだろう」


イシシは伝え聞いた部分は知っていたがあえて答えなかった。ウェパルが教えたがるだろうし、ネタバレをしたらうるさいのがわかりきっている。


「さて、それじゃあ二手に分かれて掃除する組と食事の支度をする組に分かれよう」

「食事ですか・・・そういえば何も持ってきてませんが」

「ここらへんで釣れる魚もある、保存食を最近補充したから使えるはずだぞ」


まずは班決めだな。と皆を分けることに。そこで決定したのは掃除班にクロエ、クインク、カティナだった。

食事の支度にルナ、ティナとイシシが補助に入ることになった。


「ティナの嬢ちゃんは保存食の調理だ、火は起こしていってくれるから簡単な物を頼むぞ」

「あいさー」


倉庫を開けると干し肉や麦などが袋に詰められている。ティナは袋を一つ取り出すと中身を確認し、にんまりと笑顔を浮かべた。


「これなら麦がゆがつくれるかも・・・!」


干し肉も程よい塩加減で干されており、一緒に煮るだけで美味しくなりそうである。

それ以外にもマメや乾燥させた果物などもあり、食事には困らない。

調理器具もロッジには備え付けられており、ロッジの前にある石組みのキャンプファイヤー用のスペースに鍋を持ってくるとティナはぽいぽいと材料を入れる。


「水は?」

「井戸があるぞ」

「はーい」


井戸から水を汲んで鍋に注ぎ、そこで麦と細かく砕いた干し肉を入れて煮込む。ついでにマメも放り込んでおく。

ティナは意外とこういった屋外での調理に慣れている。


「あとはできるまで火を見とくだけでいいよん」

「じゃあその間に魚を釣りに行くか」

「はぁい」


イシシはティナに鍋を任せ、ルナを連れて離島の端にやってきた。こちらはロッジにほど近く、聖職者たちがいざという時の食料を確保するために開拓した釣り場である。


「ここで釣りをするのも乙なもんだぞ」

「そうなんですか」


ルナは釣りはしたことがない。ぶっちゃけ百足に変身して海の中を大口を開けて泳いだあと口の中身をぶちまけたら大漁の魚が手に入るだろうがそんなことは思いもしないのだ。

イシシから簡素な釣り竿を貰い、針に練り餌をつけて垂らしてみる。


「これでしばらく待つんですね」

「そうだ、それでだな・・・」


そう言いかけた所でルナの釣り竿がしなった。ルナが引っ張ると大きな魚が引っかかっている。


「釣れました!」

「大物だ!すごいぞ・・・うん」


しかしなんだか魚の様子が変だ。どうにも動きが悪いような気がする。それから続けざまに二匹、三匹と釣れるともってきた魚籠はすぐに一杯になった。そんな不可解な状況にもまったく知識のないルナは笑顔だ。

しかしイシシが不審に思い、こっそり海面を覗くと案の定セイレーンと目があった。


(こ、こいつら・・・!)


ルナが釣り針を垂らすとセイレーンたちはその針を追いかけて魚を引っ掛ける。

そしてくいくいと糸を引いて当たりを知らせる。するとなにも知らないルナはそれを引いて魚を釣り上げる。

とんだ接待プレイである。


「そろそろ良いだろう、取りすぎるのは良くないからな」

「はぁい」


セイレーンたちの努力のおかげで魚籠は魚で一杯である。そしてイシシはこんなことをしているセイレーンたちに呆れるやら同情するやら。


「こんなに釣れると気分がいいだろう?」

「?・・・はい!」


やや大げさな言い方で問いかけるイシシにルナは首をかしげたが笑顔で頷いた。接待が上手く行ってセイレーンたちも一安心である。


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