表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、水軍の船長と出会う
317/332

偉い人(悪魔)はおだてろ!

ティナはイシシとあれこれと話す素振りを見せつつ、情報を少しずつウェパルに聞こえるように喋っていく。


「私達は旅行のつもりだったけどルナちゃんは勉強に来たからやっぱり知識は大切だと思うなぁ!」

「祭礼の勉強だったな、儀式は一回やったし後はその謂れをちゃんと教えてくれるひとがいれば完璧だな」


ちらっ、とイシシとティナがウェパルを見やると先ほどとは打って変わって期待に満ちた表情をしている。

おそらくはルナが土地や祭礼に関する話を聞きにくるのではと考えているのであろう。後は彼女が正気に戻る前に行動あるのみ。


「ようし、契約も終わったし戦利品を移したら嬢ちゃん達を人魚の入り江に送っていくぞー」


イシシは船員の尻を叩くといそいそと捕虜になった水夫を合流した死なば諸共号に、戦利品を勝者の総取り号に積み込んで帰り支度を始めた頃にウェパルはイシシを呼び止めた。


『待て』

「ん?なにかあったか?」


ウェパルは船をとんとんと叩いて言った。イシシが不思議に思っていると思いがけない言葉が。


『これはいらない、持って帰れ』

「持って帰れって言われてもな・・・」

『お前の祖父と同じことだ。非常に、ひじょーーに不本意ではあるがお前は私の難題を乗り越えた。乗り越えて欲しくなかったけど乗り越えた』

「ぶっちゃけるなぁ・・・」


すごく嫌そうな顔をしているウェパルにイシシは流石に呆れた。そんなイシシを気に留めることなくウェパルはぶつぶつと何やら唱えると船に向かって息を吹きかける。すると驚いた事に戦闘で傷つき、汚れていた船が瞬く間に新品同様に直っていく。


『これで新しく商いでも始めるがいい、街に交易品を卸すとかな』


イシシはそう言われてウェパルの言いたい事を理解した。彼女はルナとの繋がりを持ちたいのだろう。

そこでふと、イシシはウェパルにある提案をした。


「そうだ、アンタは魔法の道具については詳しいか?」

『多少はな』

「なら俺と取引をしよう」


ウェパルはその言葉に首をかしげる。これ以上に何かあったか?と思いつつ続きを促すとイシシは先ほどの矢を取り出した。


「これを貢ぎ物として受け取ってくれ」

『・・・矢か、なにやら魔力を感じるが・・・弓は?』

「これだな」


弓と矢をそろって掲げるとウェパルは眉間に皺を寄せた。そしてイシシに鋭い視線を向けた。


『呪いの弓矢、そんなものが何の役に立つというのだ?呪いは我らの得意分野、そんなものが・・・』

「これはどうやらあのお嬢ちゃんと敵対する人物が買い求めたものだそうだ」

『!』


イシシはそう言うと少し芝居がかった仕草を交え、うろうろと甲板を歩きながら言う。


「俺はたまたまこれを拿捕した船で発見したが、俺には魔法の道具の知識なんぞわからない。つまり、これがどういうものかはアンタしか知らないよな」

『・・・』

「その危険性を知り、俺からそれを回収して悪用されないように保管していたとしらそれは・・・」


嬢ちゃんか、その家族を守ったことになるよな?とウェパルに聞こえる大きさで、まるで独り言のように言った。


『なるほど、本当にそう言うところはお前の祖父にそっくりだ』

「さてな、それで・・・どうするね?」

『いいだろう、望みを言え』


イシシは頷くとウェパルに言った。


「俺に加護を授けて欲しい」

『お前に?』

「ああ、勘だが・・・なんとなくあのお嬢ちゃんとは縁がありそうでな」


イシシはそう言うと命知らず号で待っているルナを見る。

今回の騒ぎではなんだかんだ言ってかなり世話になった。それでいて彼女はそんなこともおくびにも出さないで船にのほほんと揺られている。


「・・・あんな子がバカを見るような目に遭わせたくないだろ」

『海の男がそんなことを言うなんてね』

「受けた恩は返さなきゃいかん。俺にできる事はそんなに多くないが・・・何かあったら助けになってやりたいんでな」


ウェパルはそれを聞いて考えるそぶりを見せるとイシシに言った。


『良いだろう、お前があの子の助けになるというなら・・・この風を受け取るがいい』

「風?」

『嵐を起こす風だ。お前が耐えられた分だけ風はお前の手の内に』


ちょっと嫌な予感がしたがイシシはここまできたらと覚悟を決める。そしてウェパルがイシシに向かって手をまるで張り手でもするように突き出すと


「む、う・・・うぉ・・・!」


突風がイシシの全身を叩いた。まさしくそれは暴風雨の時に吹きすさぶそれであり、それがイシシの周囲に吹き荒れている。


『どうだ?』

「まだまだ!」

『ならばさらに強くするぞ』


ウェパルが力を籠めると風はさらに強まり、雨も混ざり始める。イシシは懸命に耐える。


「あぶぶぶぶぶ」


凄い顔になりながら耐えている。


『ブッ・・・!』


ウェパルが噴き出すくらい凄い顔だ。しかししつこいくらい耐える。顔の皮膚がびろびろと波打っている。

ウェパルはもうすでにイシシを直視できていない。


『も、もう限界か?』

「うべべべべぇ、あばばば」

『ふぐっ!』


イシシはそれでもしぶとく耐えていたが笑ったウェパルが風向きの調整を誤り・・・


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉお?!?!?!?」


下からもろに風を受けて豪快に船から射出された。





「おい、あれ・・・」

「すげえ船長空飛んでる!」

「イシシさーーん!なんでぇーーー!?」


ふたたび大の字で空高く舞い上がったイシシの姿を見て命知らず号は大騒ぎになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ