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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、水軍の船長と出会う
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なくて難癖、悪い癖!

ウェパルはジロジロと船の値踏みをしている。ティナは商品を買い叩こうとする嫌な客のそれに酷似した態度に思わず身構えていた。イシシはそれとは対照的に落ち着き払っていて堂々としている。

そんな二人に共通していたのはどちらも『面倒事』に対処するという認識だ。


『・・・一ついいかしら』


来た!二人はウェパルの言葉を待つ。どうせ碌な事がないだろう。ティナは船に飛び移る際に船体にそれなりに傷が入っている事は確認している。船尾にイシシが投げた槍が突き刺さったままなのも。

こういうのは大きな値引きポイントである。自分でもそこを突いて値引きを行うだろう。

さらに厄介なのは彼女が金銭で取引しているわけではないということ。相手はルナを諦める代わりにと銘打っているので非常に厄介なのだ。


(どうせ釣り合わないとか言うんだろうなぁ・・・)


人間一人と船である。常識的に考えればどちらを得るのがお得かは考えるべくもない。

中古とはいえ船を得れば商売ができるし、操船の知識や経験を実地で学ぶことができる。そうでなくても人を雇って貿易や運輸業に手を出すこともできる。それがどれだけの価値をもたらすかは未知数ではあるが少なくは無いだろう。


『この小汚い船ではあの子と釣り合わないのではないかしら』

((きたーっ!))


ティナとイシシは揃って嫌な予感が的中した。当然ではあるが普通の物なら市場において相場がある。

宝石にしろ貴金属にしろ大抵は値段が決まっているのだ。だからこそ「それならこらくらいのものを用意しようか」となるわけであるがここで問題になったのは取引に扱われるのが人であることだ。

人の相場なんてあるわけがない。というより「あってはならない」のである。人がこれくらいの値段と言う事をやってしまうと日光教に睨まれるわけなので「人に値段なんてつけられないよ」と建て前を通すわけだ。


「そんなことはないぞ、これだって十分に航行能力もある」


イシシはそんなウェパルにあっけらかんと答える。どうやらイシシはとぼける作戦でいくようだ。

お互いに明確な価値の基準を設けなかったからである。ウェパルは船をもってこいとしか言わなかった。

そしてイシシは約束通り船を持ってきた。しかも戦闘で傷ついているとはいえちゃんとした船である。


『あの子がこんな小汚い船と同等の価値だと?』

「あのお嬢ちゃんの価値なんぞ知らん!船は船だ!」


もしもここでルナに価値に高い価値があるのでは?と少しでも認めようものなら相手はそれに対して自由に価格を吊り上げようとする。その為にイシシは知らん知らんと言い続けるしかないのだ。


「それにちゃんと分捕った船だ、綺麗かどうかなんぞ契約書にはない!」


イシシは契約書を取り出すとその文言を一字一句確かめる。そしてそこに船の状態や種類についての記載はない。

なので契約に則って考えるならばイシシが正しい。しかしウェパルはそんなことどうでもいいのだ。

そもそも海洋を支配する彼女にとって船なんぞいくらでも用意できるし、その気になれば他の海洋国家を脅して作らせてもいい。わざわざ戦いで傷ついた船なんぞ欲しくもなんともない。


『・・・』


契約が完了すれば自分が介入する機会が失われてしまう。そう思うとウェパルはどうしても了承できなかった。

しかし彼女も悪魔である。契約を違えることはできない。両手をわなわなと震わせ、全身で嫌々と言った様子を見せながらも彼女は頷いた。


『わ、わかった・・・』

「では契約は完了だな!」


ぎりっと誰にでも聞こえる音で歯を軋ったウェパルはイシシを睨みつけている。

しかしイシシもこのまま恨まれるのも面白くないのでウェパルの興味を逸らす話題を探していた。

そしてその視線にティナが映った。


(実際問題、嬢ちゃんや魔法使いなら悪魔とも適切な距離で付き合えるだろうし、魔法使いなら悪魔と縁ができても困らんよな・・・?ならいっそご機嫌伺いをやってもらうか)


悪魔の対処は基本的に魔法使いと聖職者の分野、前者は交流を、後者は撃退や封印をする立場だ。

イシシにとっては聖職者であるルナならばウェパル相手にも真っ当に話ができるだろうと考えた。


「話は変わるが、人魚の入り江に滞在するらしいな」

『?』


怒りに任せて船を叩き潰しそうなほど不機嫌なウェパルに聞こえるようにイシシはティナに問いかけた。

ウェパルが聞き耳を立て、ティナがそれに頷くとイシシはさらに続ける。


「あのお嬢ちゃんも一緒に滞在するんだって?」

「そうだけど・・・」


それがどうかしたの?とティナが言う。イシシはそれを見て時折ウェパルを見ながら腕を組んで言った。


「あそこには古くからの言い伝えとかがあるはずだが、嬢ちゃんは知ってるかな」

「うーん、聞いてないかも」


ティナはそれを見てなんとなくイシシのやりたいことが分かったのかそれとなくイシシの会話に参加した。


「この地の言い伝えに詳しいものが居ればいいんだが・・・」

「そうだねぇ、ルナちゃんも知りたいと思うよね」


二人してちらちらとウェパルを見ながら話をしている。そしてわかりやすいことに最初は怒り顔に近かったウェパルの表情が徐々に興味を惹かれる感じになってきているのだ。


(もうちょっとかな・・・)

(港町に八つ当たりされるとかなわんから頼んだぞ)

(はいよー)


二人はひそひそと話つつウェパルの出方を待った。


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