セイレーンは語る?
セイレーンは頭をフル回転させてルナ達をどう言いくるめるかを考える。
(なんだかあの子達は召喚陣で向こうに帰れると思ってるみたいね)
作る事は出来なくともセイレーンにだって転移陣と召喚陣の違いくらいは分かる。そして彼女達が立てている計画がいかに無謀なことかも。
『その案とってもいいと思います!』
「うわびっくりした!」
ヒソヒソと話し合っていたルナ達にセイレーンは出任せで賛成する事にした。
『大悪魔様が陣を作れば何処にだって行けるはずです!』
「そうかなぁ」
『それにウェパル様なら他の方々と連絡を取るのも容易いかと』
出任せを言いつつ、いざとなればウェパルが誰とでも連絡を取れるとセイレーンはさらに出任せを重ねる。
実際問題やろうと思えば出来る事なので嘘ではないが。
いざとなれば誰かに連絡できる。そうすることでルナ達の判断力を鈍らせようと言うのである。
「それなら安心かも!」
『そうでしょうそうでしょう!ウェパル様も喜ばれます!』
「わぁい」
全員がほぼ疑う事なく自分を信じるのでセイレーンはちょっと罪悪感を覚えた。
(だ、大丈夫かなこの子達・・・)
しかも自分達が半ば恐怖を覚えているウェパルに会えるとどこか嬉しそうにしているルナを見てセイレーンは思わずキュッとなった。
『そ、それじゃあ主様にお伝えしますね!』
「はーい、よろしくお願いしますね」
セイレーンはいろんな意味で辛くなったのかそそくさと海に戻っていく。それをさらに笑顔で見送るものだからセイレーンはたまったものではなかった。色んな意味で不運なセイレーンだったがさらに彼女に災難が続いた。
『・・・げ』
痺れを切らした主人が既に近くまで来ていたのである。ウェパルは巨体だ。その巨体が通り過ぎる際に発生する潮流と魔力の余波は彼女を遠くまで押し流していく。
『あ、あ、ああーーーーーっ』
仲間が啞然とした顔で自分を見ている。なんとタイミングの悪い奴だろうかと。
道を横断しようとした瞬間ジェット機が地面スレスレを通り過ぎて行ったようなもの。彼女はまるで撥ねられたように海中で錐もみ回転をし、そのまま遠くへ流れていった。
仲間は大慌てでそれを追いかけて行ったが、そのせいで誰一人としてウェパルに報告は果たせなかった。
「がはは!大漁だ!船を渡してもお釣りが出るくらいだぞ!」
開封作業は順調。老魔法使いもまさか船に魔法使いが乗っているとは思っていなかったのか死んだ目で開封されていく箱を見ている。
「およ?これだけなんかかかってる魔法が違うよ」
「そうなのか?」
「!それは、それに触らんでくれー!」
ティナがコンコンと箱を叩いたところ罠ではなく錠前の役目をする魔法がかかっているのがわかった。
二人が何だろうかと調べていると老魔法使いがその箱に縋りついてきた。
「これがお前さんの荷か」
「そ、そうだ!金、金なら払うから見逃してくれー!」
老人はおいおい泣きながら木箱にしがみついている。実際のところそう言った取引をしないでもないのだが・・・。
「どちらにしろ中身を検めなきゃ話にならんぞ」
「そ、それはそうだが・・・」
ティナはそんな二人のやり取りを他所に木箱に張られたラベルに注目した。
(・・・?この釘、魔法が籠ってる?)
ラベルを眺めているとそこに小さな釘が打ち付けてある。そこには魔力が籠っており、魔法を籠めた札がラベルと一緒に留めてあるようだ。そのラベルに目を向けると不意に視界がぼやけるのを感じる。
「宛先が読めないなぁ・・・この札のせいだね?」
ハンマーで釘を横から打ち、釘の頭を飛ばすと札を引きちぎった。すると阻害されていたラベルの文字がはっきりと見えるようになり宛先が浮かび上がってきた。
「購入者・・・『ガスタン・ギュント』・・・!」
その名前を見るなりみるみるティナの顔つきが厳しくなり、ぎりっと歯を軋らせた。ガスタンはルナの父親であるエルドの不俱戴天の敵であり、ルナとマリーの誘拐騒ぎにも関わっている事を本人たちから聞かされているティナは普段のへらへらとした態度を固くして木箱に書かれた名前を睨んでいた。
「・・・これ、きっとろくでもないものだよ」
「だそうだが、お前さんもこの送り主の関係者か?」
ティナの声色が変わったのを感じ取ってイシシは老人にずいと歩み寄った。老人が口ごもったのを見てイシシはナイフを耳に押し当ててさらに問いかけた。
「お前さんがこのガスタンって男と知り合いかって聞いてんだよ。それとも耳に聞くか?ああっ?」
「ひぃっ・・・そ、そうだ!ワシはガスタン様の部下だ・・・商品を買いつけるように頼まれた!」
老人は滝のように汗を流し、涙目であっさりと全てを白状した。そんな老人にイシシは鼻を鳴らしながら吐き捨てるように言った。
「ふん、口外できないように保険を掛けられるはずだぜ。ペラペラしゃべりやがって」
聞き出しこそしたもののイシシは情けない老人に嫌悪感すら抱いていた。もしこんな奴が部下にいたら命がいくらあっても足りないからである。誇りもなにもあったものではない。




