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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、水軍の船長と出会う
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大悪魔顕現!

スケルトンの船長はそのがらんどうになった眼窩でまっすぐに命知らず号の船尾に佇む聖職者の少女を見つめていた。その距離は決して近くはなく、見据える相手は未だに掌よりも小さく映っている。

それなのにだ。まるで、まるで山を見上げるような巨大な存在感が自分を見据えているのがわかるのだ。

まるでそれが、生き物として、個としての格を教えるような巨大な存在感。


肉に包まれていた頃では逆に気付くことはできなかったであろうその感覚に船長は震えが止まらなかった。


『ま、まさか・・・海の支配者の気配だと言うのか・・・』


少女の隣に立っていた小さな使い魔がみるみるうちに姿を変えて少女と同じほどの背丈に大きくなる。

その瞬間に小さく、目立たなかった気配が膨れ上がった。そしてそれは船長をさらに深い絶望へと追いやることになる。


『上級悪魔・・・!アークデーモンが何故ここに・・・!』


人外の魔物と化したからこそわかる。悪魔の中で本来人の前に現れる可能性があるであろう最上位の悪魔が立っている。そしてその悪魔はその少女の後ろに侍り、まるで愛玩動物かのように少女の肩に手を置いて甘えるような仕草をしている。


『ありえない・・・上級悪魔が傅く存在など・・・契約者とて・・・』


悪魔が人間を心の底から信頼する事は少ない。契約と義務によって従う悪魔は多いが上級ともなれば契約の内容に服従が含まれていなければまずもって力関係で対等になる必要がある。

天使を持って対等の状態を作り、その上で契約を成す者が多いが契約を交わしたのちであっても悪魔は様々な手段で契約者を出し抜き、破滅させようとすることが多い。

当然ながらそこに信頼によってなされた契約ではないからである。

古くからの慣習や土地に住む信者の系譜などでもなければ上級悪魔が無条件に人間に好意を抱くなどありえないのだ。


『上級悪魔を従える存在と・・・なると・・・』


船長は目の前に広がるありえない光景に本来ならば馬鹿げている考えが頭に浮かぶ。


ありえない


だがしかし


そんな船長の葛藤を他所に、船尾に佇む少女が笑った。上級悪魔に何かを言伝る仕草と共に少女は手すりに立って、そのまま海に身を投げた。


『飛び込んだ?!』


幽霊船を前に海に飛び込むなど自殺行為である。海の上では人間は無力だ。多少神の加護やら聖術を使えたところでそれは変わらない。


そう、人間ならば。



『Guoooooooooooooo!』


海面が隆起する。大質量が海底から飛び出す合図だ。そして、そこから飛び出したのはあまりにも巨大な存在だった。


『だ、大悪魔!大いなる者が出たーーッ!』


船長は絶叫した。魂からの叫びだ。だがそれに応える者はいない。海の上であってもまったく、これっぽちも格の合わない相手が何故か、何故かはわからないが自分達の前に現れた。現れてしまった。そのために身動ぎ一つできないのだ。

まるで縄のように、船体に巻き付いたその存在はまるで紙屑のように幽霊船を締め上げると呆気なく粉砕した。

海に落ちた幽霊も、甲板にいた魔法使いも。瞬き一つする間もなく海の底へと引きずり込まれていく。

その存在はまるで海龍のように長く、端の見えない体の長さをもってもう一隻に顔を向けた。


『慈悲が欲しいか』


金属が擦れるような音と共に船を一咬みで破壊してしまいそうな口が開いた。そして呆気にとられる船長にそう問いかけた。


『・・・へ?』

『今すぐ立ち去るか、海に消えるか。選んでいい』


太陽から隠れる為に展開した霧のおかげで全貌がわからなかったがその姿を見て船長は腰を抜かしそうになった。


(この大きさ、この吐息・・・め、冥府の大百足じゃないか・・・!)


声とともに吐き出した息が金属を溶かした。それは炎による熱でもなく。服や木にはまったく問題のない不可思議な吐息。そして尾の先が全く見えないほど長く、浮かぬはずの巨体が海底に着くほどの巨大な体。

海の男でもしっている、対となる陸の巨大な存在。冥府創造の大百足の伝説。神話の領域。

上級悪魔が傅くはずだ。と船長はもはや自分がこの場に存在している理由すらわからない状態だった。


『か、かえります!』


そんな中、短く、どうにか船長は答えた。舵を杖のようにして、足踏みするようにがたがた震える足を支えてどうにか答えた。


『そうか、なら、沖へ行け』

『わかりましたーーーーっ!』


落ちたゾンビや幽霊が逃げるように船によじ登ってくる。そして生き残りを満載した船は本来は陸の人間であろう魔法使いも乗せたまま風のような勢いで沖合へと走り去っていった。



『ふぅ・・・クインクちゃんおねがーい』

「はぁい、ご主人様」


人型に戻って難破船の残骸の上に立ったルナはクインクに持ち上げてもらい、命知らず号へと戻った。

船員達は揃って船首で戦っていた為にルナ達の方は見ていなかったようだ。ルナは少なくともそう思った。


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