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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、水軍の船長と出会う
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追跡!密輸船!

密輸船を捉えた命知らず号はカティナの援護を受けてぐんぐんとその距離を縮めていく。

その船影は皆が目視できるところになり、イシシはその甲板に人がいることも目視した。


「よし、アレを出しとけ。ちゃんとロープも繋げよ」


イシシが指示を出すと船員は大型の箱から一本の太い槍を持ちだした。槍というよりはもはや杭のような形だ。

その槍の石突に当たる部分に金属製の輪が付いており、船員はそこに荒縄を括りつける。


「これは?」

「追いついたときに相手の船に投げ込む槍さ、これで相手を逃げられないようにする」


イシシがそう言う横で船員達は鉤縄や鉤のついた棒、板などを甲板に並べて突撃の態勢を整えている。

その中で命知らず号はさらに船に接近した。


「よぅし、そろそろ俺の声が届くだろ」


イシシは周囲に耳を塞ぐように指示すると船首に立って大声で叫んだ。


『そこの船!帆を畳んで停まれ!停まらねえと腕ずくで停めるぞ!』


耳を塞いでも聞こえるほどの大声に船員達は思わず顔を背ける。それはルナ達も同様だ。

そしてその声は恐らく船にも届いただろう。イシシが遠眼鏡を覗くと船員がこちらの様子をうかがっているのが遠眼鏡ごしに見える。


「さて・・・停まるか、逃げるか」


カティナのおかげで速度はこちらが勝っている。逃げ切る事は難しいだろう。

さらに船舶はこちらの方が大型。人員や装備の点でも負けることはそうないはずだ。


「ちっ、逃げるつもりか」


しかし密輸船は驚いた事に高速で迫る命知らず号に対して逃走を試みるようだ。船員達が帆をきつく張って速度をだそうとしているのが見える。


「停まらないね」

「あんな船で逃げるとはいい度胸じゃねえか!」


イシシは停船命令を振り切って逃げようとする船を追跡しようとしたが・・・沿岸からやってきた密輸船と同規模の船に行く手を阻まれる。船員達はあ突然ベールを破って飛び出したかのような船の登場に驚いている。


「お、お頭っ!船が二隻現れました!」

「むっ!どっからあらわれやがった?!」

「魔力を感じます、姿が見えないようになっていたのかも・・・」

「そこまでするか?!」


隠れ場所の無いはずの海原から突然現れた船にイシシは眉をひそめたが即座に全員に戦闘準備に入らせる。

命知らず号の船首には衝角が付いている。おいそれと道を塞ぐことはできないだろうがそれでも二隻が迫る光景は十分な圧力だ。


「奴ら俺たちとやる気だ!どうせろくでもねえものを積んでるんだろ!構わねえ沈めちまえ!」


船員達は戦闘準備に入ろうとしたところをルナとティナが待ったをかけた。


「待ってください、ここは私達に」

「お任せだよん」

「何をする気だ?」

「帆を破壊して足を奪います、船はそのまま突っ切ってください」


二人は左右に分かれてこちらに向かってくる船を見据える。そしてお互いに手を翳すと


『火よ!燃え滾れ!』

『雷よ!高き場所に落ちろ!』


魔力を籠めて翳した手を上下に振った。するとルナの手からはまるで火矢のように鋭い火が飛び、ティナの手が電気を帯びたかと思うと立ち込めた暗雲がマストの上に雷を落とした。

こちらに迫ろうとした船はそれぞれが二人の魔法を受けてメインマストに火が点き、帆が瞬く間に焼け落ちた。


「すげえ・・・」

「あの子たちは魔法使いだったのか・・・」


船員達は驚いた様子で言う。今まで船内の掃除やらで使用していた魔法とはくらべものにならない威力の魔法だ。

真水の貴重な船の上では火がひとたび点けばもはや戦闘どころではない、相手の船はどちらも消火活動で手一杯と言った有様になり命知らず号の進路を塞ごうとして上げた速度を失い漂流し始める。


「こりゃすげえな・・・よーし、そのまま突っ切れ!」


イシシは船員に再び密輸船を追跡するように指示しつつ、ちらりとルナをみやる。


(尼さんが魔法を・・・?最近のはなんでもアリなのか?)


魔法と聖術は正反対の性質である。しかしそのような事情を知らずとも僧侶が聖術以外の特殊な術を使うことは見たことがなかった。その視線にルナが気づいたらしくイシシに目を向けると。


「色々あるんです、色々と」

「・・・なるほど」


人差し指を唇に当ててしーっ、とするルナを見てイシシは小さくうなずいた。

考えてもみれば突然ウェパルが巫女に欲しいなんていう存在だった。ワケありなのは間違いない。

ただイシシが危惧するのはそのワケアリの度合いだった。彼女がどれくらいの事情を抱えているのか、その底が見えないことだ。


(お友達は知ってる・・・っぽいな、慌てた様子がねえ)


先ほどまで陽気でお調子者の商人に見えていたティナが先ほどの一撃で船員達から強大な力を秘めた魔法使いであるという認識を持たれている。迷信深い海の男たちにとって雷を操る存在は天候を操る存在に近しい。

そんな彼女が聖術ではなく魔法で船を破壊したことに微塵も疑いや動揺を見せていないことからも彼女の特殊性はティナにとって当たり前のことという話になる。


「密輸船はどこだ!」

「あそこです!数分で接敵しますよ!」


イシシに船員が報告する。今度こそ拿捕するためにもイシシは一旦その疑問を頭から振り払うことにした。

こんな彼女達が援護してくれるのだ、負けるはずはない。


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