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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、水軍の船長と出会う
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こんどこそ祭礼だ!

食事を食べ終わり、お茶で一服したところで皆はいそいそと片付けを始める。岬まで目と鼻の先にある。


「それでは祭礼の内容ですが」


気を取り直してガラバが祭礼の手順を教えてくれた。


「私の言った通りに海に向かって言ってくれればいいですからね」


ガラバはそう言うと祭礼で毎回述べられる祝辞について話し始める。


『新しき信者が加わることお祝い申し上げます。偉大なる海の支配者ウェパルよ、母なる海の守護者よ。我らの祈りを聞き届けください』

「新しき信者が加わることお祝い申し上げます。偉大なる海の支配者ウェパルよ、母なる海の守護者よ。我らの祈りを聞き届けください」

『この者、新しき信者にして海に生き、糧を得るもの。彼に偉大なるウェパルの加護を与えたまえ!』

「この者、新しき信者にして海に生き、糧を得るもの。彼に偉大なるウェパルの加護を与えたまえ!」


真似をして言って見ると淀みなく言えたのでガラバは笑顔で頷いた。


「良いですね、これなら大丈夫かと」


そうして何度か練習しながら岬へと移動する。岬には毎年の祭礼で使うらしい小さな祭壇がある。そこは四角くきり出されており、お立ち台のようでもある。


「ここで先ほどの祝辞をお願いします」

「わかりました」


ルナは祭壇の上に上がると大きく息を吸い込んで大きな声で叫んだ。


「新しき信者が加わることお祝い申し上げます!偉大なる海の支配者ウェパルよ!母なる海の守護者よ!我らの祈りをお聞き届けください!」


そう言い、手を合わせて祈る。ウェパルに深い感謝を込めて。そうすると俄かに空の様子がおかしくなり始めた。

波が止んで突然に凪の状態になる。風も、波も、全てが停止したかのようだった。


「こ、これは・・・!」


そしてそれを破るように雷雲を含んだ雲が現れ、俄かに天気が悪くなり始める。ガラバとイシシはその事に驚いていたがルナだけがその空間の変化に笑顔を向けた。


「いと貴き御方!我が元へ!嵐を運ぶ強大なる公爵よ!幻惑の艦隊を呼び、恐るべき力で敵を滅ぼす御方!我が縁に応えよ!」


両手を天に掲げて叫ぶと海に巨大な渦巻きが起こり、雷鳴がとどろいた。後ろに立っていた為にガラバ達は気づかなかったがルナの瞳は縦に裂け、八つの目で天を仰いでいる。近しい者が現れたためだ。

名を与えた悪魔が此処に来る。縁を辿り、祈りを得て、この地に顕現するのだ。


『Gaaaaaa!!!!』


巨大な波しぶきを上げて、山のように巨大な美女が姿を現した。海中に沈んだ宝石も霞むような妖艶な雰囲気と、大時化の海を思わせる強大な魔力を持った絶対的な存在が目の前に顕現した。

そのサイズは停泊する船が小さく見えるほど。まさしく山のようだ。


「ウェパル様!この者、新しき信者にして海に生き、糧を得る者!彼に偉大なるウェパルの加護を与え給え!」


ルナが高らかに叫ぶとそれに呼応するようにウェパルは咆哮を上げた。それはまるで突風のように皆の顔を叩き、ガラバはもちろん、後ろで見ていたクロエ達も吹き飛ばされそうになっている。


『ああ、愛し子。我が名を受け継ぐ姫君・・・また会えてうれしいわ』


ウェパルは笑顔を浮かべてルナに手を伸ばした。その指先に手を添えてルナも微笑む。


「祭礼に参りました、積もる話はその後に・・・」

『わかったわ』


そう言って頷いたウェパルにイシシが思わず声を上げた。失神したガラバを助け起こしながらではあるが町を挙げて信仰する大悪魔の登場である。興奮するのも無理はない。


「ウェパル、我らが祭神の・・・?あのウェパルが・・・・!」


二人でいい雰囲気だったのをイシシの大声が遮ったからかウェパルはムッとした顔になって手を翳した。


『ちょっとうるさい』

「え?ちょ・・・ウワーッ!」


突風が突然に吹いて風を孕んだ凧のようにイシシは飛んで行ってしまった。どんどんと小さくなるのを見てウェパルはルナに視線を戻したがルナが驚いた顔でイシシを見ているのに気付いた。


『なにかいけなかったかしら?』

「あの・・・祭礼に臨む信者が飛んでいきましたが・・・」

『えっ』


飛んでいったイシシに目を向けると大の字の体勢で遠ざかっていくのが見える。ウェパルは何食わぬ顔で手招きをするとイシシが竜巻に乗ってそのまま帰ってきたかと思うと潮風を防ぐために植えられた木に引っ掛かった。


「あの人、ちゃんとした信者のはずなんですけど・・・」

『誰にだって手違いはあるのよ』

「そうですか・・・」


もう何も言うまい。ルナはなんとなくエトナ―やルルイエで慣れていたので流すことにした。

つっつくと取り繕おうとしてさらにひどい事になるだろうし。


「それではこの護符に加護をお願いします」

『ええ、わかったわ』


ウェパルは妖艶な仕草で唇に人差し指を当てるとその指をルナの額につけた。指の圧力で首がぐにっと後ろに倒れ、ルナは上を向いたような体勢になる。


「ミ”ッ!」

『これでいいわ』


指は大きく、指先だけでもルナの頭くらいはありそうだ。そんな指でちょんと突かれてルナは仰け反って二、三歩後ろに下がった。


「私じゃないですよぉ・・・」

『後で必要になるから』


笑顔で言うウェパルにルナはなんだかよくわからないが猛烈に嫌な予感がしてきた。そう思いつつも用件を済ませるべく抗議の意思表示も兼ねて貝殻のネックレスを掲げる。


「これです!こーれーでーすー!」

『うふふ、わかってるわ』


不満顔で抗議するも完全に遊ばれている状態だ。こうなると悪魔はなかなかに質が悪い。

頼んだ仕事に自分の都合をこれでもかと盛り込んでくるのである。特にたまにしか会えない身内ともなると。

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