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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、水軍の船長と出会う
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祭礼を執り行う!・・・の前にお昼ごはんだ

上機嫌のイシシを先頭に岬へと歩いていく。最初こそ男たちの興味と好色な視線が多かったもののイシシの後ろを歩いているだけでそれが激減した。


「イシシのおじさんってもしかして凄い人?」

「ガハハ、そうだぞ!なんてったって船長だからな」


笑ながら進んでいくイシシに皆が道を譲るのだ。ティナがそう思うのも無理はなかった。

初対面は山道から突然出てきたおじさんでしかなかったし、話してみると気さくな男性で話しやすくもあった。

イシシは船員には頼もしく、密漁船、密輸船にとっては恐怖の象徴であったがルナ達がそれを知る由もない。

実際、時折男たちを見る視線は鋭いものになっていたりもした。


「・・・おーい」


岬に向かう途中、港町を抜けようかというところで籠を持ってよたよたと歩く人の姿が。


「クロエちゃん!」

「・・・ちかれた・・・」


籠をよく見ると数人分の食事と大きめのボトルが入っている。どうやら連れていかれた先でお昼ごはんをごちそうになった際に皆の分を持せてくれたようだ。


「大丈夫?」

「・・・腕の感覚が無いよ」


ルナが代わりに受け取ると籠は飲み物のボトルの重量で結構な重さになっている。カティナとクインクがへろへろになったクロエを慌てて支えるとクロエは脱力したようにカティナに寄りかかった。


「・・・皆の分ももってけって・・・ありがたいけど重かった・・・」


クロエはFクラスの中でも最も非力だ。ルナやテイロスのような怪力組とは別にしても、性別の差があるとはいえ身長で言えば自分よりも低いダズよりも弱いのである。


「大丈夫か?この籠・・・ああ、宿屋のとこのおばちゃんだな」

「知ってるんですか?」

「ああ、男兄弟ばかりだったから女の子の面倒を見たかったんだろうなぁ・・・」


どうしてわかったのか謎だったがどうやら宿のサービスで旅行者向けに弁当を作っているらしい、それを示すロゴが籠に貼ってるのだ。港町には祭礼に使われる砂浜以外にも一般開放されている場所もあるらしかったのでそのためだろう。

宿屋の女将は男兄弟の長女として産まれ、実子も男ばかりだったので偶然見かけたクロエに世話を焼いてあげたのだろうとのこと。


「・・・声があちこちから飛んで来て、そしたら途中から目が回って、気がついたら宿にいたからびっくりしたよ」


クロエが途中からいなくなっていたのは失神して倒れていたからのようだ。宿屋のおばちゃんがそれを心配して宿に連れ帰り、おばちゃんに囲まれて目を回していたクロエを介抱もしてくれたようだ。あとで御礼を言いに行こうとルナ達は思いつつ合流したクロエを連れて岬へと向かった。



「祭礼も良いが・・・先に飯にしないか?」


岬に向かう途中でふとイシシがそんなことを言い出した。皆は一瞬呆れたが確かに時刻も昼を過ぎている。

反論しようにもルナのお腹が鳴ったのを聞いてしまってはしょうがなかった。

そして大げさにお腹をさすってはいるものの視線がちらりとルナを向いていることから気を使っているのだろう。


「そこで火を焚こう、枯れ枝もたくさんある」


そう言うとイシシは手早く枯れ枝を組んで火を起こし始めた。火を起こして何をするのかと思ったがどうやら干し肉をたくさん作っていたようだ。枝に刺してそれを焼き始めた。


「お前さん達も適当なとこに座って食べると良いぞ」


潮風に焼いた干し肉の匂いが混ざり始め、イシシに促されてルナ達は荷車に積んであったカバーを敷き布代わりにしてクロエが貰って来た食事を貰うことにした。


「何があるのかな?」


最初こそ皆の頭の中には潮風とともに広がる海の景色が映っていたが、やがて空腹からいそいそと包みを開けてみると人数分のパイ包み焼き、林檎のはちみつ漬け、山菜と茹でたタコの和え物と美味しそうなものばかり。皆は朝から教会に着くまで歩き通しだったこともあってお腹も減っていたためすぐに頂くことにした。


「このパイ、中にほぐした魚が入ってる!」

「タコってこんなに柔らかいんだね」


パイの中身は焼いてほぐした魚の身を香味野菜とともに味付けしてパイ生地で包んで焼いたもののようだった。

魚の旨味と野菜の味わいでなんとも絶品である。魚特有の生臭さなどもなく、非常に食べやすい。

そしてタコと山菜の和え物も同様で、どうやら香りの良い野菜をすりつぶしてオリーブオイルと混ぜたものでドレッシングを作っているらしくタコの臭みなどもなく、苦味もほどほどに抑えられている。小さな木の実が混ざっていたがそれが微かに甘く苦味をさらに抑えてくれていた。


「山にも近いから山のものと海のものがどっちも食べられるんだね、それにしても美味しいなぁ」

「港町のおばちゃんたちは料理名人が多いからな。男連中が意地でも陸に帰るまで死ねない理由にもなってる」

「ここにきて一番良かったとこですよね」


干し肉を齧りながらイシシは言う。こちらは残念ながら干し肉とガラバが持っていた硬いパンしかないが普段の船での食事はこれと大差がないらしくイシシは平気そうだった。


「ボトルの中は?」

「うーんこれはなんだろう、不思議な匂いだ」


コップに注いだ液体は琥珀色をしており、匂いだけではわかりにくい。だがどうにも穀物のようなにおいがする。


「あ、これ知ってる。これもお茶だよ」

「お茶なの?」

「そ、豆のさやを乾燥させてから煎るとお茶の葉っぱみたいな味になるんだ」


一口飲んでみると香ばしい匂いと微かな甘みが広がる美味しいもの。皆もルナに続いて飲んでみるが香りもそこまで強くないので食事のお供に最適な一杯である。ティナは商会で仕入れた商品でそれを見た事があり、サンプル品を飲んだ事があるという。豆を取り出した鞘をぶつ切りにして煎ることで香ばしさが出てくるのだ。

乾燥させてお茶っぱにする際に見た目が帽子に見える事から「シャポー茶」とも呼ばれる。

後に聞いたところによるとこのお茶にはお腹の調子を整える効果があるらしく、生魚に当たったり風土になじめずお腹を壊したりした人にも良く出されるという。

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