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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、水軍の船長と出会う
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ウェパルがやってきた!

ウェパルが出立したことなどまったく知る由もなくルナはちみちみと貝殻に名前を彫っていた。


「うぅ・・・緊張する・・・」

「軽く削るだけで大丈夫ですから彫るというより滑らせるつもりでやってみてください」


ガラバの指導を受けながらルナが貝殻にイシシの名前を彫っていく。イシシはそれを部屋の隅で見ながらそわそわとしていた。


(俺にもついにウェパルの赦しがもらえるのか・・・!)


祖父からもらったウェパルの赦しに不満があったわけではない。だが彼としてもいつか自分の護符をもらって一人前の海の男になりたいとも思っていた。伝統や仕事・・・受け継ぐものは受け継ぐ、それはそれとして自分だけのものというのが欲しかったのだ。

ウェパルの赦しに刻まれた紋様が自分の名前でない事。それがイシシにとってはコンプレックスに近いものだったのだろう。許されたからと言ってそれが正しいことか?という疑問もついてまわっていた。

それが原因で船でともに働く仲間や町に迷惑をかけやしないかという責任も。


「お、お、おおーっ!なんだが漲ってきたぞーっ!」

「やかましーっ!」

「でねぶ!」


どたどたと足を動かすイシシはガラバに引っ叩かれても全く動じていない。よほど嬉しいのだろう。

結局ルナが文字を彫り終わるまで落ち着かないままだった。


「ふーっ、できた!」


それから一時間ほど経った頃、息を吐いて顔を上げたルナのその一言でイシシの興奮は最高潮になった。


「つ、つ、ついに!俺の護符が!ウェパルの赦しが貰えるんだな!」

「海で祭礼を執り行う必要はありますがね」

「ガハハ!巫女と僧侶が揃ってるんだからそんなのもう済んだようなもんだ!」


勝ったな!と謎の勝利宣言をしながらイシシはとにかく上機嫌だ。


「んじゃ、俺は先に祭礼をする岬に行くからな!」


待ってるぞ!とイシシは言葉を残して慌ただしく走っていった。彼にとってはまさしく幸運と言っていいだろう。僧侶と巫女ができる聖職者の乙女、そして自分の名前が彫れるだけの大きな貝殻まで揃ったばかりかその巫女を担当するルナは大悪魔ウェパルの身内同然の存在である。


「なに?船長が護符を貰うって?」


その噂は港に停泊している船の船員たちにも届いた。

報告を受けたのはイシシが父親から譲り受けた三隻の船の内の旗艦とも言うべき命知らず号の副船長だ。彼はイシシの父親の代から船で働いていた古株だ。


「へぇ、なんでも巫女さんがやって来たとかで」


船員は副船長が苦い顔をしているのを不思議そうにしていたが思いがけない幸運が舞い込み長く山で生活していたイシシが帰ってきた事を伝えたのである。


「やっとだなぁ・・・」

「?」

「こっちの話だ、お前は持ち場に戻れ」


船員を追い払いながら副船長は船の様子を見渡し、そして溜息をついた。船員たちは自分の言葉に一々確認を入れてくる。そしてこちらが大声を上げてようやく動き始める始末だ。

トップの不在に船を預かる副船長である自分がそのような有様なのであちこちで精彩を欠いた船員たちの多い事。仕事の段取りやらは得意だったが船員に喝を入れたり風紀を正したりという厳しいことがどうにも苦手だった。イシシはその点が非常に上手かった。

笑顔で接していたかと思えば船が震えるような怒鳴り声を上げたり、傷ついた船員を慈悲深く助け起こす手で船員に容赦なく懲罰を加える。


「やっぱり上に立つ器量なんだろうか・・・」


三代揃って共通するのはやはり「強さ」という点だった。荒々しい海の男たちが揃って従うようなカリスマ性を発揮するには何よりも腕っ節や怖さが必要だ。それに加えて祖父はその豪胆さで、父はその冷酷さで、そしてイシシは祖父に似つつも大らかな性質で船員をまとめ上げる力があった。

三人はそれぞれが異なる性質を持っていたが共通するのは何事にも動じない勇気があること。

与える事、奪う事、褒める事、叱る事、それらすべてに躊躇しない。そうだと思えば即実行する。

間違っていたら、などとは考えない。必要だと思ったからやった。それだけである。


「俺にはやっぱ船長は無理かな・・・」


頭の中に豪快に笑うイシシが浮かぶ。そして副船長は肩を落として溜息をついた。

船員の中には自分を軽んじている者もいる。ふと、腰に差したカトラスに目を落とした。最後に抜いたのは何時だっただろうか。





「それでは私達も行きましょう。準備はできましたか?」


教会で祭礼の為の服装を取り出したガラバはそれをルナに手渡していた。それに着替えたルナは宿泊用の小屋から出てくるとくるりと回って服装を確かめた。


「はい、これでいいでしょうか・・・?」


純白の貫頭衣に真珠をあしらったネックレスが光る。日光教のシンボルと並ぶとその神々しさが引き立つようである。そして開祖の聖職者が身に着けていた帯のレプリカで貫頭衣を留めることでボディラインがはっきりと出ており朝日に負けない眩しさだ。


「可愛い!」

「これで男の前に出るの・・・?確かに儀式とかではこういう恰好するけどさ」


ティナはルナの姿に笑顔でそう答えたがカティナは少しその恰好の大胆さに難しい顔をしている。

貫頭衣は足元まで裾が伸びているがスリットは深く、太もも近くまで露わになっている。


「やっぱりこの人スケベなんじゃ・・・」

「な、ち、ちがっ!この恰好にも謂れがあるんですよ!」

「ホントに?だって聖職者なのにこんな大胆なスリットの入った服着るのかなぁ・・・ズボンとか履かないの?」

「だ、だからですね!?これには理由が・・・!」


カティナの視線が厳しくなったのを見てガラバは慌てて説明を始めた。イシシがさんざんガラバのスケベ度合いをネタにしていたのが此処にきて災いした形だった。

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