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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、水軍の船長と出会う
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ウェパルの赦しとは?

イシシとのやり取りもそこそこにガラバはルナ達を教会の中にある小さな部屋に案内してくれた。


「ここは?」

「ウェパルの赦しを作る部屋ですね」


一見すると何の変哲もない部屋だがよく見ると方角を表す模様や魔除けの紋様が壁に描かれている。

そして彫刻刀など文字を刻む為の道具も置かれていた。


「ここで名前を刻むんですか?」

「そうです、名を刻んで契約を祭礼で交わします。そうすることでただの首飾りではなく護符としての効果が出てくるんです」


彫刻刀で薄く削って名前を彫り、その後に祭礼に名前を彫った貝を首飾りに仕立てて祭礼を行う。

その際に祭礼を行うシスターや巫女が海に入って首飾りを掲げる。そして名前を読み上げてウェパルにその人を新たに信者として迎えてもらうように願い、それと引き換えに海に出て安全に仕事ができるように加護を貰うというもの。


「子供がたくさんいる時なんかは大変ですよ」

「たしかに・・・」


一人一人に貝殻を見つけて、名前を一人ずつ彫っていかないといけないのだ。腕のいい彫金師や彫師がいればいいだろうがそれだとお金がかかる。結果として日光教の僧侶やシスターがちまちまと彫っていくことになるのだそうだ。


「それじゃあさっそく彫っていきますが・・・その前に下書きをしてそれに沿って彫っていく形にしましょう」


ガラバはそう言うとイシシから受け取った貝殻を机の上に置いた。


「ええと、お嬢さんは何という名前でしたっけ?」

「ルナです」

「ルナさんですね、ルナさんはイシシ船長の名前を聞きましたか?」


そう言われてルナはふと、イシシが自分の名前は長いという事を言っていたのを思い出した。

フルネームは何というのだろうか?そう思いながらふと窓をみると作業が気になるのかイシシがのぞいているのが見えてルナは思わず噴き出した。


「ぶっ!」

「ちょうど良く覗いてましたね、イシシ船長!フルネームを教えてあげてください!」


ガラバがそう言うと窓から見えていたイシシが引っ込むとドスドスと足音を響かせて中に入ってきた。


「俺の名前か!」

「そうですよ」


イシシはそう言うと腕を組んで言った。


「俺の名前はな、『命知らず・勝者の総取り・死なば諸共』だ!」

「えっ?」


ルナは思わず聞き返した。もしかして聞き間違えたかもしれない。


「だから『命知らず・勝者の総取り・死なば諸共』だよ」


聞き間違いじゃなかった。なんというかスローガンみたいな名前だった。ルナは首をこてんと傾けた。


「どうしてそんな名前に?」

「よくぞ聞いてくれた!」


ルナは思わず聞いたが誰だって聞きたくなるだろう。どうしてそんな妙な名前になったのか。

イシシはそんなルナの疑問に答えるべく話し始めた。


「俺の名前がこうなったのは祖父さんがつけたからさ」


イシシの祖父はイシシが受け継いだ船団の開設者にして船団の長だった。

荒々しい海の男を束ね、漁船から始まった船を中型の帆船に変え、そこから立て続けに大型の船を三隻も奪って私掠船とし当時まだ戦乱で混沌としていた海を荒らしまわったのだという。

その点はルナもエトナ―から少しばかり聞いていたので彼女が言っていた私掠船だったというのはイシシの祖父の事なんだろう。イシシの姿から想像するしかないが彼の祖父も相当な大男だったのだろうか。


「お祖父さんがどうしてそんな名前に?」

「実を言うとこの名前は祖父さんが率いていた船の名前でもある」


イシシの祖父は中型の帆船に乗っていた頃、運よく大型の船を分捕る事に成功した。その際に船に積まれていた宝が国際問題的な内容物で厄ネタ満載だったのを良い事に全部ウェパルに捧げてしまったのだという。


「詳しくは知らんがどうにも王家が所有するお宝とかなんとかで持ってると命を狙われるから全部海に投げ捨ててウェパルに捧げちまったらしい」


船員のほとんども縛り上げて生贄にするという無法も無法をやらかしたイシシの祖父だったが信者であるワイルビー出身の船員から貢物が大量に届いたのでウェパルから返礼品として分捕った船と同等の規格の船を新たに二隻拝領したとのこと。

その後、イシシの祖父は一挙にワイルビーの出世頭として港に凱旋した。三隻の軍艦クラスの船を拝領したことで彼らは貿易や護衛船としての仕事も請け負えるようになりワイルビーを発展させる礎になった。

彼が慕われているのは祖父の威光もあるのだろう。


「俺の祖父さんは戦乱が終わって少しすると親父に跡目を譲って陸の商売で成功してな。今ウチでやってる貿易は祖父さんの代で始めて親父が大きくした。俺はどっちかって言うと船乗りの方だが親父も祖父さんも商売も上手かったんだなこれが」


そうして商会としての顔も持ちだしたことでイシシの祖父は自身の名前よりも船の名前を通り名、商会の看板としてアピールする癖がついた。自分は~~だ!と名乗るよりも自分は○○号の船長だ!と名乗るようになったのだ。

そうすることで海戦や護衛戦で名前の通りも良くなったし、船の名前から自分達を辿って依頼を持ってくることも増えたのだという。

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