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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、水軍の船長と出会う
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悲劇!・・・でいいのかな?

イシシ少年は僧侶の行動をある程度把握していた。そしてその僧侶の急所ともいうべき行水の時間を狙うことにした。成功体験はその人の行動を限定してしまう。イシシ少年もそれは例外ではなかった。


「坂を滑らせるところまでは流石に無理だと思ってたが目隠しを取っ払って問い詰めてやろうと思ってな」


そうして慎重に近づき、体を洗う音が聞こえたのを見計らってイシシ少年は豪快に目隠しを取っ払った。

しかしそこに居たのは僧侶ではなかった。


「しかしそこにいたのはなんと若い尼さんだったわけだ」

「えっ!大変じゃないですか!」

「俺もびっくりした。そして俺が固まってる間に取っ捕まってボコボコにされた」


尼さんの膂力じゃなかった。とイシシは当時を振り返る。

その腕っぷしは呆然としていたとはいえ大人相手にも暴れられるイシシ少年をまたたく間にボコボコにし、意識が戻った時には木に吊るされていたと言う。


「それはおじさんが悪いよ」

「俺もそこまではよかったんだよ」


事故とはいえのぞきを働いてボコボコにされたまでは良かった。まさか女性に失神するまで殴られるとは思っていなかったが。


「その尼さんも『祭礼までには下ろしてやる!』って言われたからおとなしく反省してたんだ」


そうしてイシシ少年は教会近くの木に吊るされ、しばらく経ったが・・・なんとそのシスターは祭礼の日になっても来なかったと言う。


「来なかったの?」

「あぁ、祭礼に行けなかったどころか死にかけたぜ」


祭礼が終わった後、教会に戻ってきた僧侶とシスターが木に吊るされたまま死にかけていたイシシ少年を見つけて僧侶は腰を抜かさんばかりに驚いていたと言う。


「あのジジイもめちゃくちゃ驚いてたな」

「そりゃそうでしょ・・・」


死にかけた割には随分と呑気なイシシだったがその後に続いた一言はルナを仰天させた。


「ジジイとは正反対に尼さんはまっっったく悪びれてなくてよ。酒臭い息で治癒術は掛けてくれたが『悪い悪い!まあ、来年頑張れ!』って笑いながら帰って行ったよ」

「ひどい・・・!」

「あれが大聖堂の聖人だとかなんとか言うんだからその時は世も末だと思ったな」


ライバル関係だった僧侶が真面目に怒るほど酷い有様だったようだがそのシスターは全く悪びれて居なかったようだ。しかも聖人というからには恐らく・・・


「ねぇ、ルナちゃん」

「な、なに?」

「聖人で若い見た目のシスターってやっぱり・・・」


件の人物を知る全員の頭に共通の人物が浮かんだ。


「エトナーさんだよね・・・」

「一言一句そう言いそうだよ」

「・・・あの人はやりかねない」

「酒臭いってのも・・・」


ルナ、カティナ、ティナの三人は平素のエトナーを知るだけにほぼほぼ確定だろうと結論付けた。

申し訳ないと思いつつも一行はふと、ある事を思った。


「ひどい目にあったのは確かだけど・・・エト・・・そのシスターの言う通りに来年じゃだめだったの?」

「そうしたかったがその年に俺はもう見習いとして船に乗る予定だったんだ」


船の棟梁の一族が同期とズレた時期に船に乗るというのは世間的にも後継ぎの時期がズレてしまう観点から見てもあり得ない話だった。その為に僧侶と祖父の間でそれを誤魔化す為に祖父の首飾りを貰うことになったという。


「そうだったんですね・・・」

「それで今までなんとかやってこれたんだが古びてたのかこの通りでな」


イシシはハンカチに包んでいた首飾りを取り出した。そのハンカチの中には首飾りの主な部分となる貝殻の部分が真っ二つに割れてしまっていた。


「祖父さんのだとバレはしなかったが首飾りが壊れるのは不吉だし、ナシで船に乗るなんて論外だ。ウェパルの赦しが無ければこの海じゃやっていけないからな」

「それで山にいたんですか」


ゲン担ぎの観点からみても、実際に大悪魔の許可を得て海に出るという許可証としての意味合いからみても無いというのはあり得ない。その為にイシシは船に乗れずこうして山で生活していたのだという。


「いつから此処にいるの?いくらオジサンでも大変じゃない?」

「まー、大変と言えばそうだが船と違って水も火を起こすのも楽だしな。獣もあちこちにいるし食うには困らなかったぞ」


船では火災が致命的なのもそうだが煮炊きの煙は海原では目立つ為に敵に察知されやすい。真水も同様に船に積める分が限られるために節約しなければならないのだ。生活に苦労するベクトルは違えどそのような過酷な環境で働ける体力がある分イシシにとっては山の生活はそれほど苦しくなかったのだろう。


「とはいえ俺もいつまでも山で生活する訳にもいかん。悪いが協力してもらいたい」

「まあ、それは構いませんが・・・」


イシシにはあずかり知らぬことであったがルナからすれば身内の恥も同然の事である。それに元より祭礼のことを学んで帰るつもりでもあったのでちょうどよかった。


「それで、私達は何をすればいいんでしょうか?」

「まずは材料にある貝殻を集めるところだな」


ついてきてくれ、とイシシの案内を受けて一行は山道を歩いた。

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