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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、嘆きの妖精と出会う
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ルナ、嘆きの妖精と出会う

クインクが嬉しそうにしながら掃除を再開したのを見てマリーは邪魔するのも悪いと思い、ルナの部屋に行くことにした。


「ルナちゃーん」


部屋の前に来るとノックをして呼びかける。するとパタパタと足音がしてルナが顔を出した。


「マリーちゃん!」

「今日は学校がお休みらしいから来ちゃった」


マリーがそう言うとルナは笑顔でマリーを自室に招き入れた。

その部屋は恐らく、以前までのそれとは違って見えた。

ルナが無意識に身体から発散する魔力で部屋は高濃度の魔力で満たされており、それを中和するためか幾つかの日光教のシンボルが増えていた。


「ほわぁ・・・」


マリーは部屋に入って一呼吸する度に体内に流れ込む魔力に思わず声を漏らした。そして目線を動かすとルナの後ろにイングリッドが立っていた。妖精の目線から見ると彼女も本来かなりの力を持っている事が分かる。しかしその力も長い不健康な生活で弱っていることも。例えるならば大きな器が確認でき、それは今はヒビが入っていて十分に中身を蓄えられない状態というべきだろうか?


「おはよう、マリーちゃん」

「イングリッドちゃん、おはよう」


しかし今は同じ部屋で寝泊まりしているからか心なしか肌の色艶が良い気がする。ダンピールの能力で空気中の魔力を口から吸い込んで取り入れる事ができるからだろう。もちろん吸血や魔力を直接送り込んでもらう事に比べれば効率は格段に悪いが。


「ところで、マリーちゃんは無事にバンシィになれたの?」


ルナが椅子に腰掛けて尋ねる。それにマリーは笑顔で頷くとその姿をバンシィのそれに変えた。


『バッチリ』

「それはよかった」


ルナはそう言って笑顔を見せた。母親譲りの人をとにかく安心させる笑顔だ。この笑顔を向けられるとマリーはとても嬉しく、安らかな気持ちになれた。それはまるで長らくの苦労が実ったような気持ちで、身体の強張りが取れるような安堵の気持ちだ。


「Fクラスはこれでさらに凄いクラスになったね」


ベッドに寝転んで頬杖をついていたイングリッドが何処か面白そうに呟いた。


「凄い?」

「ふふふ」


イングリッドは笑いながらルナとマリー、そして廊下で掃除をしているクインクに目を向けて言った。


「悪魔の力を持ったルナちゃんとその使い魔のクインクちゃん、雷を使うティナちゃん、純血のエルフのカティナちゃん、ダンピールの私、多分普通じゃないドワーフのテイロス君、そこにバンシィのマリーちゃんが加わるわけで」

『枠外だと始祖のエルフのサピやんもいるよね』


Fクラスに居ついている始祖のエルフ、サピスキア。マリーはサピスキアが今の自分にとってどのように見えるのか少し興味が湧いた。魔力の流れや質を見抜く目を得た彼女にとってはおそらくサピスキアも以前と違って見えるだろう。それにサピスキアが自分を見て何というかも気になる。


「まあでも、私は私なように、皆は皆だし。姿かたちが変わっても気にしないかな」

『そういうもんかな・・・』

「まあ、ルナちゃんらしいと言えばらしいけどね」


ルナがのほほんとそう言うと二人は脱力した。ルナにとってはFクラスの皆は友人であり、大切な存在である。

逆に言ってしまえばそれ以上の事は求めない。ただ自分を大切に思い、自分も皆を大切に思っている。

それだけで十分だった。






「街の治安は安定しているようで何よりだ」


エルドは街を歩きながら周囲を確認していた。被害は決して少ないものではなかったがそれでも騎士隊と治安維持部隊、日光教の尽力により被害は最小限に食い止められたと思っている。

実際には自分がその被害の当事者になっていないからこその感想だと内心では申し訳なく思いつつもエルドは今回の騒動の二次被害、そして便乗犯罪を防止すべくわざわざ物々しい恰好までして街を歩いているのだ。


「魔法局の人間も少なからず動員されたと聞いたが・・・」


魔法局の人間の中で勤務中だった者はエルドのように既に市街地で戦っていた者や建物の中で身動きが取れなくなっていたものを除いて魔法局から出動して妖精食いの撃退に当たっていた。

非番の者も知識はあったものの装備などの一式は魔法局に管理されていた為に結界や魔除けを周囲に張り巡らせることが精一杯だったのだ。手甲だけで戦えるエルドが可笑しいだけで。


「・・・ん?」


街を歩いているとそこに見覚えのある姿が。


「ガスタン?」


思わず呟いてエルドは顔をしかめた。ガスタンはエルドにとって不俱戴天の仇と言っていい存在だ。

妻と娘を手酷く侮辱したばかりか、自分を陥れて破滅させようとした相手である。

いつ会っても不愉快な存在であるが、今回ばかりは少々勝手が違った。

どうにも負傷しているのか片足を引きずりながら歩いている。それに片腕も動きがぎこちない。

顔に布をぐるぐると巻き付けているし、服は転んだのか泥だらけである。


(妖精食いにでも襲われたか?しかしヤツがそれほど手酷くやられるとも思えんが・・・)


憎たらしい事にガスタンは優秀である。抜け目なく謀をめぐらせては顰蹙を買っているが魔法使いとしては優秀なのだ。それに逃げ足も速い。危機を察知すれば煙のように姿を消し、証拠まで隠滅してしまう。

エルドがそれで何度歯痒い思いをさせられているか数えきれないほどだ。

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