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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、嘆きの妖精と出会う
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試練を終えて

カインディアは咳払いをするとマリーに向かい合った。


『いいかいマリー』

「はい!」


元気な返事にカインディアは思わず笑みがこぼれる。なんとも立派になったもの、と身内びいき満載の感想を覚えつつ。


『試練はおしまいだ、もちろん合格さね』

「わぁい」


そう言うとカインディアの姿が徐々におぼろげになり始めた。

突然消えかけているカインディアの姿に仰天するマリーを見てカインディアは笑いながら言った。


「およよっ?!」

『アハハ、そう驚かなくてもいい。夢の中から出ていく時間になっただけさね』

「じゃあ、もう会えないの?」


寂しそうにそう言うマリーに彼女は笑顔のまま答える。


『また、夢の中で会うこともあるさね』

「夢の中・・・」

『私はバンシィ、家に憑いてアンタたちを見守ってるさ。死んだら泣いてやるから、しっかり生きるんだよ』


彼女の微笑みが消えると同時にマリーは夢から覚めた。目を開けるといつもの見慣れた自室の天井だ。

そこに違う変化があるとすれば自身の体に備わった新たな力。妖精の力を得たマリーにとってこの世界は色々な物が見えるようになっていた。


「おお・・・世界がキラキラしてる・・・」


世界に満ちている魔力が集中してみると全て生き物のように見える。そして手足、それに体も思ったように妖精と人間の体を行き来できるのだ。


「服は・・・どうなってるんだろ」


試しに変身してみると昨日のあの時のように赤い目と目の周りは化粧を施したように黒くなり、涙の痕が黒く両目の端から一筋流れるように伸びている。


『おお、これが私の・・・』


瞳が確認できないほど目は真っ赤に染まっている。傍から見ればこの顔は随分と恐ろしく見える。

しかし昨日のルナはずっとそんな自分に笑顔を向けてくれていた。嬉しそうに、ただただ無邪気に自分のこの姿を真正面からみて微笑んでいた。


『ルナちゃん・・・嬉しかったのかな・・・』


ルナは人間ではない。前々から尋常ではない力を持っていることは知っていたし、それでも彼女が友達であり心優しい人物であることは知っていた。それでもである。彼女は人間ではなかった。

今となっては自分も同じだ。妖精の血を引く存在から妖精そのものに。人ではあるが将来確実に自分は妖精になる。

思えばそんな自分と同じように人外となった存在が居て、彼女は嬉しかったのでは?とマリーは考えた。


『うーん・・・でも、ルナちゃんだしなぁ・・・』


彼女はとっても前向きだ。それに優しいからただ単純に自分の成功を喜んでくれただけかもしれない。

着替えて家族の元に向かうと両親が朝食を食べていた。


「おはよー」

「おはようマリー」


テーブルに座ると母親が料理を出してくれた。パンに目玉焼きが乗ったいつものやつだ。

それをマリーは秒で平らげると立ち上がって出かけ支度を始める。


「どこに行くんだ?」

「え?学校だけど・・・」

「学校はお休みだぞ」


そう言われてマリーは固まった。今日は何かの祝日だっただろうか?そう思いながらぐるぐると考える娘に両親は答える。


「昨日の騒ぎで街中がその後片付けに追われてるんだ」

「そっか、妖精食いは街中に・・・」


マリーは自分に食らいつこうとした妖精食いを思い出してゾっとした気持ちになる。助け出されたからいいようなものの、妖精食いは雑食、人も妖精も区別なく襲う為に犠牲者はかなり出ただろう。

そう思いながら耳を澄ませるとどこかで誰かが悲しんでいるような気がした。


「まだ安全じゃない場所もあるそうだし、それで通りが封鎖されて身動きがとれない生徒も多いから臨時でお休みだ」


魔法学校は結界を教員が総動員で強化したり、広場に加勢しに行ったりと街の為に大きく活躍したそうだ。

中には緊急時ということで建物や妖精、または身内を護る為に魔法で妖精食いと戦った生徒もいたとか。

言葉の上では華々しい活躍をしたように聞こえるが実際は命がけのもの。杖を死に物狂いで振り回して押し寄せる妖精食いを追い払っていたそうだ。


「ウチはフラウステッドさんが来てくれたから安心だったけどね」


市民の中には腕自慢や魔法の知識、魔物退治の経験のある者が独自に防衛陣地を構築したりと騎士隊の援護を行った地域もあるようだ。その中で突出して戦果を挙げたのがなんとルナの父親であるエルドだという。

玄関に吊るした鉄器を頼みに家に引き込もる家が多い中でエルドは外に出ていたばかりか素手で妖精食いを片端から潰して回っていたというから驚きである。人間じゃねえ。


「うーん、じゃあルナちゃんの所に行こうかなぁ・・・」

「危ないかもしれないよ?」

「ヘーキヘーキ、だってもう私はバンシィだし!」

「試練が上手く行ったのか、本当によかったなぁ・・・」


ふふん、と自慢げにそう言うマリーに父親は嬉しそうにしていたが思い出したように手を叩いて母親に声を掛けた。


「そうだ、それなら母さん、フラウステッドさんにお礼をしなきゃ」

「そうですねぇ、ウチまで来ていろいろとしてくださったんだから・・・」


そう言いつつ二人は家の中をひっくり返してお礼の品を探し始める。あれでもない、これでもないと家にあるとっておきの品を取り出していく。贈答用の布やらカップやらが出てくる出てくる。

父親があれこれと何かあった時のために買いだめしていくのだがふんぎりがつかなく渡せず仕舞いのものだ。

お礼といいながらこんなもんで良いんだろうか。


「ルナちゃんよく食べるから食べ物なら喜ぶと思うよ?」

「いい事を聞いたわ」

「食べよう食べようと思いつつずっと先送りにしていたこの熟成した特大ベーコンを持ってってもらおう」

「いつからあったのそれ・・・」

「わかんない・・・」


マリーは熟成に熟成を重ねた特大ベーコンを渡される。どうやら魔法で保存がされているらしく、日付の刻印がある。長期保存しても食べられるように処理されているらしかったが、魔法が担保してくれる可食可能な期限はそんなに残ってなかった。


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