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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、嘆きの妖精と出会う
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マリー、バンシィになる その2

マリーはその後も泣き続けた。日が暮れて皆が眠りにつくまで。


「フラウステッド、先に戻ってもいいんだぞ?」

「でも、マリーちゃんが・・・」


マリーはその後、場所を移動してルナの家の近くにある丘へ来ていた。

騒動も下火になったとはいえ危なかったし、ここなら街を一望できるからだ。

二人は日が暮れて暗くなった丘の上でマリーが悲し気に泣くのをじっと見つめていた。アダムはこういった光景にも経験があったがルナはマリーをとにかく抱きしめたい衝動をぐっとこらえていた。

出来る事なら今すぐにでも彼女が泣き止むように何かしてあげたい。自分が泣き出したい時にそうして欲しいように、彼女を抱きしめてあげたかった。


(だけど・・・それじゃ意味ないんだよね・・・?)


バンシィは誰かの為に泣く存在だ。善き人の死を誰よりも深く嘆くのが彼女達の仕事だ。

月明りに照らされ、妖精の特性かはっきりと彼女の姿が浮かび上がっている。

その姿はある種の神秘性を持っているが事情を知る者ほどその神秘に悲しさが満ちていることに気付くだろう。

マリーはその神秘を受け継ぐ存在だ。そしてその責務を全うしている最中。

どんなやさしさであっても彼女を止めることをしてはならないのである。


「・・・」


二人だけがその背中を見つめていたが・・・。


『・・・』


泣き声が止まり、マリーはゆっくりと振り返った。真っ赤に染まった目、目の周りは黒くなってまるで化粧をしたようになっている。実体のない体は白く半透明で、儚げな印象だ。


「マリーちゃん、もういいの?」


ルナの問いかけにマリーはゆっくりと頷いた。そしてルナに近づくと彼女の額に口づけをして微笑んだ。


『ありがとう・・・先生も、ありがとうございます』

「ふふ、どういたしまして」

「仕事だ、気にせんでよろしい」


ルナにまるで猫のように、実体のない事を良い事に纏わりついて微笑む彼女はまさしく妖精の美しさと妖しさを持っていた。月光は彼女を美しく照らし出し、ルナと揃うと二人の真実の姿がその二人の隠された魅力をさらに引き出した。二人は手を取り合って、風に吹かれるままに身を躍らせる。

人外の性質によるものだろうか?二人は嬉しそうに丘の上で踊り出した。苦しい戦いを越えて、試練を終えて、仲間を出迎えるようにルナはマリーと手をとってステップを踏む。草むらからそれを祝うように怪しげな影が増え、二人を囲むように踊り始める。


「あはは」

『あはは』


アダムはそれを見て思った。


(適当なタイミングで帰ればよかった・・・)


棒立ちの自分が浮いて見えるが混ざったところで絶対良い事がないのでアダムはその場に立ち尽くすしかなかった。









『まったく大したもんだよ』


夢枕でマリーはカインディアに再会した。ルナと月夜に踊り、人ならざる者達から祝福を得て自身の体に戻ってきたマリーは肉体はともかく、疲れ切っていた精神を休ませる為に両親に無事を伝えた後再びベッドに戻ったのだ。


「えへへ・・・、友達が助けに来てくれたから・・・」


マリーはルナが自分を助けに来てくれたこと、まるで家族のように自分を心配してくれたことを思い出して笑みを浮かべる。カインディアはそんなマリーに思わず噴き出した。


『それであんな危ない目にあったのを何てことないように思えるんだから大したもんだよ』


トラウマやら、恐怖心などが残っていれば彼女には手に取るように分かったが彼女の心にはそう言ったものが一切残っていない。本当にルナの存在一つで忘れてしまったようだ。

最初こそおどおどとしていた彼女も今では立派に務めを果たし、バンシィとしての力を受け継ぐに相応しい実績を上げた。人々の代わりにたくさんの人の死を嘆き、その名誉を保ち、人々にこれから起こる悲しい別れの準備をさせたのである。

オマケに今回の騒動によって間接的にバンシィの名誉を回復する結果にもなった。


「頑張ったと・・・思いますから」

『そうだね・・・ホントに頑張ったよ』


カインディアはマリーの頭を撫でると心の底からの感謝を述べた。


『ありがとうね、本当に・・・これで、またしばらくは皆を見守っていられる』

「頑張った甲斐がありました」

『いい子だねぇ、もう・・・ほんとにいい子だ』


カインディアはマリーを抱きしめると一粒の涙をこぼした。その涙がマリーに落ちると彼女の体が淡く光り始める。


「これは・・・」

『お前はこれから正式にバンシィの一員として生きる。それは例え肉体が消えてしまっても変わらない』

「肉体が消えても?」

『妖精はもとより実体がない存在さ、魂の形がそのまま肉体のようなものというべきかね?』

「???」


マリーの頭にクエスチョンが大量に浮かんだのを見てカインディアは要らぬことを言ってしまったと後悔した。

妖精の血を引く人間が妖精の一族に正式に仲間入りした際、生きている間は妖精と人間を行き来できる特殊な状態であり、死後肉体から解放された時に完全に妖精として生まれ変わるのである。

人間が悪魔になるのとは細かい点で異なり、妖精の場合は試練を終えた時点で人間でもあり妖精でもある状態になる。

例えるとルナは人に化けた悪魔という状態だが、マリーは形態によって人であり、妖精であるどっちつかずの状態だ。

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