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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、嘆きの妖精と出会う
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妖精の怒りを受けろ!

皮算用が過ぎたのか、それとも危機を脱した安堵が感覚を鈍らせたのかガスタンは背後に忍び寄る相手に気付かなかった。


「お前がこの騒ぎの元凶か」


その声に気付いて振り返ると目の前にはフードを目深く被った男が立っていた。

その背後にはバンシィが怒り顔でガスタンを睨んでいる。


「なんのことですかな」


努めて冷静にガスタンは答える。取り繕ったところで被害者が目の前にいる。名乗るのも不味い、身元が割れたらきっとエルド達が自分に疑惑の目を向けるに違いないと考えていた。


「妖精を攫ってここに連れてきたのはお前だろう」


フードの男は短刀直入に尋ねた。ガスタンはそれを受けて内心で悪態をついていた。

ここまで言うのだ、相手にも何かしらの根拠や確信があるに違いない。下手な言い訳は出来ないだろう。


「・・・っ!」


杖を抜こうとした刹那、利き手に針状のなにかが飛んだ。


「魔法使いの両手を自由にさせると思うのか?」

「ぐっ・・・貴様っ!」


ちらりと目をやると釘のようだった。おそらく壊れた扉から拝借してきたのだろう。鉄だからと妖精食いに投げつける為に持ってきていたのだ。


(ギュントと言っていたな、認識阻害の魔法を掛けたローブなんぞ着おってからに・・・)


フードの男こと、アダムは目の前の魔法使いを観察していた。顔をの識別が難しくなっているが足運びや利き手、そして魔法使いであることなどから凡その判断を済ませていた。


(どこまでシラを切る気か見てやるぞ)


アダムはバンシィに視線を向けると彼女たちは血の涙を流しながらガスタンを睨んでいる。そもそも彼女たちにとっては今のガスタンの風体こそ自分達を捕らえた時の物。間違えようもない。


『お前だ』

『お前が私達を捕まえたんだ』


口々に言うバンシィ達を見やり、そしてわざとらしく尋ねる。


「だ、そうだが?」


それに対して目の前の男はどこか苛立った様子でこちらをみている。バンシィ達が自分を覚えているのが予想外だったのだろうか。それとも自分の思う通りに運ばない現状に対してか。


「まあいい、お前の事情なんぞどうでもいいからな」


アダムはそう言うと指を立て、ガスタンを見据えると息を吸い込むと


「カッ!!!」


気合一閃。鋭い声で叫ぶとガスタンの体がふいに強張った。気当たりの類らしくガスタンがぶるぶると震えながらも動けなくなっていた。


「ぐ、くっ・・・これは・・・!」

「帰るにはまだ早いだろう。その前に彼女達からプレゼントを貰うと良い」


アダムが踵を返すと同時にバンシィ達が一斉にガスタンを取り囲んだ。


「心の籠った御持て成しの返礼に、祝福をお返ししたいらしくてな」

「ま、待て!」


アダムはその声にこたえることなく景色に溶けるように消えた。

そして未だに震えて上手く動けないガスタンをバンシィ達は恐ろしい笑みを浮かべながら見下ろしている。


『バンシィの邪魔をする者がどうなるか、教えてやろうじゃないかね』

『そうだね、教えてやろう』


一人がガスタンの腕を掴んだ。怪我をしている部分を容赦なく掴んで捻りあげる。


「ぐっ!何をする・・・!」

『おやおや、拾うつもりかい』


言葉の意味が分からず周囲を見渡すガスタン。すると目の前に櫛が落ちているのが見えた。

バンシィの一人が掴んだ腕を引っ張って櫛の所まで引きずるとそのまま櫛の上に手を置かせる。


『ヒッヒッヒ・・・拾ったな?』

『拾った拾った』


口口にバンシィはガスタンが櫛の上に手を乗せたのを見て笑う。


「馬鹿な、手に乗せただけだろうが・・・!」

『握っておいでだよ、わからないかね?』


ぎょっとして手元を見るとバンシィの手がガスタンの手と重なり、櫛を握りしめているのが見えた。

妖精の手は透き通っている。そのために確かに見た目はガスタンが拾った櫛を握りしめているように見える。


『ああひどい、アタシ達の仕事を邪魔しただけでなく持ち物まで奪うのかい?』

『ああひどい、こりゃあひどい奴だ』


けらけらと笑いながらバンシィ達は民家の軒先に吊るしてあった仕舞い忘れの洗濯物、シーツをひったくった。


『ヒッヒッヒ!』

『ヒッヒッヒ!』


笑いながら円を描いて踊るように回るバンシィ達はガスタンをそのシーツで強かに打ち据えた。


「っ!」

『バンシィの贈り物だよぉ・・・』


利き手と、片足をバンシィ達は打った。そして最後に顔を打った。


『しぶといねえ、思ったより効きが悪い』

『アタシらも弱ってるからしょうがないよ』

『元気ならもっとやれたが、まあしょうがないさね』


ぐったりとしたガスタンを見てバンシィ達は最後に彼の頭を踏んずけて去って行った。





「ふぅー・・・さすがにちょっと疲れてきたかな」


クインクは屋根の上で膝に手をついて息を吐いた。街を飛び回ってマリーの家の様子を見にいった際にエルドが暴れていたので気付かれない内に離れたりとしていたが、徐々に戦うよりも移動する時間の方が増えていっていた。


「エルドさん強すぎる・・・」


治安維持部隊の戦いぶりを屋根の上から覗いたりしていたが全員が完全武装だったのに対してエルドはマリーの家を中心に住民を護るためだろうが着の身着のままで手甲のみをつけて戦っていた。

妖精食いの集団を前にほぼ素手で戦っていたのである。応援の騎士達がドン引きする中でただただシャツを着たゴリラが暴れていた。

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