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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、嘆きの妖精と出会う
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ルナの本気!

クインクが街で騎士達を助けている頃、屋敷の屋根に上がったルナは妖精食いを雨のように降らせる黒雲を睨んでいた。


「あれが無くならない限り妖精食いはいなくならない・・・どんどんと誰かが傷ついていくんだ・・・」


ルナの中にふつふつと怒りが湧いてくる。彼らにも生きる為、こうした行為に及んでいるのだろう。

しかし、それならば自分達にも生きる為に彼らを滅ぼさねばならない。


「ごめんなさい、良い事じゃないんだろうけど・・・私達もあなた達を許すわけにはいかない」


耳を澄ませるとあちこちから戦う音と叫び声が聞こえる。それは怒号であったり、悲鳴であったり。

その中に耳障りな獣の唸り声が混じっている。


「消えろっ!私達の街から!皆の前からっ!」


魔力を集中させる。空に向けて放つのだ。加減など必要ない。

一秒でも早く、一匹でも多く、ヤツらを消さねばならない。


掌を空に向けて、一点に魔力を籠めて。

求めるのは破壊の力。火を束ねて、炎となし、炎を研ぎ澄ませて焔とする。空の彼方まで奴らを吹き飛ばせるように。


「うぅぅぅぅ・・・!」


魔力を使う。思えばそんな機会はなかった。魔法を使うのはまるで机の上の物を掴むように容易かった。

その際の消費なんて微々たるもの。ページをめくるのに疲労を感じないように、一年生の扱う魔法などルナにとってなんのこともなかった。それほど回数をつかいまくることもなかったから当然と言えば当然かもしれないが。


キィィィィン


魔力が掌に集まって光り始める。魔力の臨界反応だ。可視化するほどの量と質を持って掌に集まった魔力はまるで透き通ったガラスで出来た鈴のような音を鳴らしながら徐々にその熱を帯びてさらに大きくなる。


「ッ!」


限界を超えたチャージ、それをルナは黒雲にめがけてぶっ放した。


カッ!・・・ビュォオオ!


極太の光の奔流はそのまま一直線に街に降り注ぐ黒い雨を消し飛ばしながら進み、黒雲の一部を吹き飛ばした。

その余波は光の粒となって降り注ぎ、聖の属性を帯びたそれは街に跋扈する妖精食いを焼いた。


「ふぅっ・・・あちち!狙いをつけるの難しいなぁ」


蒸気の出る手をふーふーしながらルナは未だに残る黒雲を睨んだ。八つの目は的確に、そして容赦なく再び黒雲に狙いをつけた。


「今度は本気の本気で・・・吹っ飛ばしてやる」


両手を前に突き出して、蜘蛛の脚を両手をさせるように添える。百足の脚を屋敷に巻き付かせて体を固定して、今度は万全の威力で。

再び集まった魔力は今度は先ほどよりも早く、そして濃い濃度で集まる。


再び透き通った音が響き、光は先ほどよりも大きくなる。


破壊の力、浄化の光、浄罪の一撃。魔力で構成された神の一撃の模倣。

膨大な力と、卓抜したセンス。人外の感覚器官がそれを可能にする。


「光の中に―――消えてなくなれぇぇぇぇ!」


二発目の光は先ほどの一撃よりも強く、そして正確に黒雲を撃ち抜いた。


『GYAAAAA・・・!』


悲鳴が響き、黒雲のど真ん中に風穴があいた。その光景を見た者は生涯その光の奔流を忘れることはないだろう。

まばゆい光が、災いを齎す獣を運ぶ黒雲を撃ち抜いたのだ。


「あっつーーーーい!」


手から立ち昇るほど、ばたばたと振っても消えない熱を帯びた両手をルナは慌てて中庭にあった池に突っ込んだ。


「ふーーー、手が焼けるかとおもった」


ジュッと音を立てた後に湯気が立ち昇った。ルナは大きく息を吐いて手を抜くと水気を手を振って落とすと消えていく黒雲見上げて笑みを浮かべた。


「これで妖精食いも居なくなるよね」


天には陽光が戻りつつあり、街には明るい光が降り注いでいた。






「聖人様!黒雲が・・・!」

「見えてるよ、まだ油断すんな」


黒雲を撃ち抜いた光が粒子となって街に降り注ぐ。その粒子は妖精食いに触れると熱を持ったように音を立てて彼らを焼き、人に触れると雪のように溶けて消えた。


「こんな芸当ができるヤツは限られるよな・・・まさかな」


エトナ―の脳裏に良く知った顔が浮かんだ。否定するにしても肯定するにしても情報が足りない。

しかしほぼ確定だろう。規模から考えてもこれだけの事ができる奴は数えるほどしかいない。

そしてそう言った事が可能なヤツは街が荒れたところで気にするような奴でもないし、魔力の残滓から産まれる光の粒子が魔物を焼くような善性を持ってもいない。


「褒めるべきか、叱るべきか・・・悩みどころだぜ」


エトナ―は隣に立っていた僧侶を結界の依り代の前に立たせると自分は杖を担いで結界の外に出た。


「戦いの趨勢はほぼほぼ決した、残りもんの掃討に移る」


エトナ―は短くそう言うと地面を蹴って屋根の上に飛び乗るとそのまま騎士や治安維持部隊と争っている妖精食いの

掃討に向けて屋根伝いに歩き出した。






「ふぅ、一時はどうなるかと思ったが・・・奴め、あのような力を持っていたとは」


物陰で様子をうかがっていたガスタンは思わぬ情報を手に入れて一人ほくそ笑んでいた。

目立たないようにする魔法を籠めたローブのおかげで妖精食いの目を欺くことができた。

そしてその事に気付くことなくクインク達は力を振るっていたのだ。


「あの屋敷からの報酬は期待できないが・・・なに、情報は力だ」


笑みを浮かべて皮算用を始めていたが、その背後に影が差した。


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