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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
ルナ、嘆きの妖精と出会う
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クインク、疾走する!

クインクはアダムにマリーを任せたことで後顧の憂いを断ち、そのまま街へと出た。

羽根を広げて街の建物から建物へと移動するとそのたびに通りを妖精食いが歩いているのが見えた。


「この街を我が物顔で歩くなんて・・・」


ギリッ、と歯を軋らせてクインクは眼下の妖精食いを睨む。

そして再び羽根を広げて通りへと降り立った。






「くそっ!かかってこい!この化け物ども!」


陣形を作っていた騎士達は戦局が悪化し始めたのを肌で感じていた。


士気はまだ高い、しかし騎士達には疲労の色がありありと見て取れた。時刻は昼間に差し掛かっていたが黒雲が日光を覆い隠していたため街は薄暗く、闇の生き物に力を与えていた。


「数が減らない・・・!」

「あの黒雲がある限り俺たちに勝ち目なんてあるのか?・・・」

「狼狽えるな!ここには聖人様も魔法学校もあるんだ!戦ってるのは私達だけじゃない!」


狼狽える騎士達に隊長が檄を飛ばす。しかし今現在の彼らは孤立無援で、エトナーが時折起こす落雷すら遠く聞こえていた。


「くるぞーっ!」


次波の襲来を告げる声と共に妖精食いが黒い波のように押し寄せる。騎士達は槍を構え、それを受け止め、剣を抜いてそれらを片付ける。妖精食いは騎士達の手で順調に退治されていくが・・・


「つ、次が来た!」


斥候役が情けない声で叫んだ。次があまりにも早い。

彼らは肩で息をしながら槍と剣を構える。ヘルムの隙間から見えるその表情は既に険しいものに変わっている。


(う、くそ!動け!動けよ足!)


妖精食いを押し留めるには足を踏ん張り、人間ほどの大きさの獣を受け止める力が必要だ。しかし朝から戦い通しの彼らにはその力を急速に失いつつあった。


(神様、あと、あと一度で構いません。我らに奴らを食い止める力を!)


押し寄せる妖精食いを前に騎士は震え始めた膝を叩いて槍を握りしめる。


「くるぞーっ!!」


全員が意地で立っていた。この一撃に全てを込め、一匹でも道連れにして街を護る気概を見せるつもりだった。


「やぁぁぁっ!」


空から響いた声に全員が上を向いた。降り注いだ火球が的確に妖精食いを撃ち抜いていく。

呆気に取られる彼らを他所に羽根を広げて降り立った少女は騎士の方をちらりと見ると背中を見せて押し寄せる妖精食いに向かいあった。


「打つ、砕く、一匹残らず!」


力を籠めると魔力が迸った。手に纏った火が鞭の形を取って飛び掛かる妖精食いを数匹ずつまとめて打ち砕いていく。そしてその鞭を掻い潜ったものも彼女の爪にかかってずたずたになった。

騎士達は呆気に取られていたがすぐに彼女が味方なのだろうと判断して各々が体勢を整え始める。


「か、彼女は味方なんでしょうか・・・?」

「わからん、だが彼女がそうならまたとない好機だ。今の内に息を整えろ」


助かるかもしれんぞ、と隊長が言う。それを受けて騎士達は思い思いに立ち上がって大きく息を吐いた。

自分達が良いように押し込まれていた数を彼女は一人で押し返している。一対多に特化した能力を持っている彼女が敵に回った場合、自分達も妖精食いと同じように蹴散らされるだけだ。


「しゃぁぁぁらららららっ!」


鞭が踊る。炎を纏い、火花を散らしながら。鞭が揺らぐ度に数匹の妖精食いが弾け飛ぶ。

波が一歩ずつ、少しずつ押し戻されていくのを騎士達は荒い息を整えながら、槍を持ち直しながら見ていた。


(すげえ・・・)

(あんな凄い奴がいたなんて・・・)


その神速の鞭の前に一波が完封され、妖精食いの足並みが鈍った。明らかに一筋縄ではいかぬ相手がいる。

そう学習したらしく奴らは数に任せた戦いではなく様子を伺い始める。

しかしそれは妖精食いが一カ所に集まる事を意味し、それを見逃すクインクではなかった。


「走れ!火の蛇!」


鞭を伸ばしてまるで蛇のようにはしらせると妖精食いの群れのなかへと走らせる。

そして指を弾いた。


「弾けて!」


火で出来た蛇は群れの中を縦横に広がるとその瞬間、クインクの合図を受けて爆発し、炎を上げた。

その威力は大きく、彼らは炎に撒かれて次々と塵になっていった。


「よし、ここはもう大丈夫かな・・・」


クインクは小さく息を吐いて騎士達に顔を向けた。


「時間は・・・稼げたと思います。もう少し頑張ってくださいね」

「あ、ああ・・・」


これだけの事をしながら時間稼ぎと言ってのけた事に全員が呆れる。そしてそれを掻き消す様に空を切り裂くような光が通りから覗く空を走った。それは降り注ぐ妖精食いを纏めて消し飛ばし、黒雲の一部を消し飛ばした。


「数、もっと減ってくると思いますから・・・生き残ってくださいね」

「わかった、意地でも戦い抜いて見せるとも」


隊の長が胸甲を叩いて頷いた。他の騎士達も同様だ。

圧倒的な不利から、終わりの見える戦いへ。強力な援軍の居る戦いへ。持ちこたえれば、勝利が見える。その事実は何よりも強かった。


「我らには神だけでなく女神までついているらしい」

「隊長、問題発言ですよ」


羽根を広げて飛び去るクインクを見ながらつぶやいた隊長に騎士が言う。

彼女の羽根は悪魔のそれだ。しかし隊長はそれを気にした風もなく答えた。


「何をいうか、命の恩人だぞ」

「それはまあ、そうですけど」

「・・・それに可愛かったし」

「ですね・・・」


他の皆も一様に頷いた。

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