新しい朝が来た
クインクは翌日、警戒が解けた事で再開した学校にルナと共に向かっていた。
「おはよー」
「おはよー!ルナちゃんとイングリッドちゃんとクインクちゃん!!」
通学路ではティナが元気一杯に手を振っている。しかしそこに本来ならいるはずのメンバーが足りない事に気づいた。
「あれ?マリーちゃんは?」
「それがさ、なんでか知らないんだけど今日はおやすみなんだって」
「体調でも崩したのかな?」
心配そうなルナにティナもうーん、と考える素振りを見せた。
仕方ないので学校へと向かう道すがら今度はアダムがやって来るのが見えた。
「あり?ディーン先生だ」
「ホントだ」
ルナ達と通る道こそ違うがそこも街を抜けてくる道だった。
つまり街からやって来た訳だが普段のアダムはほとんど旧館で生活している為滅多と街から学校に通う事はないのだが・・・。
「ディーン先生、おはようございます」
「うん、おはよう」
アダムはルナ達に見つかったのを見て少しだけ面倒くさそうな顔をしたが直ぐに平静を装って挨拶を返した。
しかしもちろん上手く事が運ぶわけもない。
「ねー!ねー!センセー!どーして街から来たの?!愛人?」
ティナがアダムの周囲をぐるぐると回りながらまくし立てる。
アダムがタイミングを合わせてティナに拳骨を落としつつ、声に出さずとも興味津々のルナを見てため息をついた。
「そうだな、まぁ仕方ないから事情を教えてやろう」
歩きながら話すぞ、とアダムが言うので全員がアダムに着いて歩いていく。
「クライグスがお休みなのはユピトールが聞いていると思うが・・・」
「そうでした、体調不良ですか?」
「実はそうではない。これから話す事が関わっているので良く聞くように」
「はーい!」
一行はアダムの話を聞きながら歩き始めた。
「まず、クライグスの実家にはある魔法が代々受け継がれていたのだ」
「魔法が受け継がれる?一族特有の魔法ですか?」
「いや、それとは少し違う。それはフェンシブ家の防御魔法などだな。それ自体は秘伝なだけで仕組みさえ学べば使える者も多い奴だ」
実際はその仕組みがわからないように幾重にもロックがかかっているのである。しかしアダムは関係ないのでその点を省いた。
「一族にその魔法が訓練や勉強をせずとも使えるようにする魔法がある。今回クライグスが休みを取る理由になったのもそれだ」
「訓練ナシで出来る魔法・・・?」
「すげー、楽勝じゃん!」
「魔力操作に近い感覚なんでしょうか?」
「私の血の操作に似てる感じ?ダンピールとか吸血鬼は血を生まれつき操作できるけど」
一同は思い思いの反応をする。前半のルナとティナ、後半のクインクとイングリッドで反応が異なった。
ルナとティナは一応人間であるから魔法とはすべからく訓練と勉学によってもたらされるものと思っている。
対照的にクインクとイングリッドは人間以外の要素を持ち合わせている為に魔力操作などをすっ飛ばして魔法を行使できる。それ故に魔法とは学んで行使するものではなく、体内の魔力を操作して変化させるものと考える。
「その魔法は後天的に魔法を受け継ぐ物と先天的に受け継ぐ場合があるが・・・どちらも先祖か先祖からその魔法を
受け継いでいくことになる」
「なんだかややこしいなぁ・・・」
「財産みたいに途中から受け取って受け継ぐのと、体の中・・・血や魔力にそれを混ぜ込んで遺伝として子孫に伝えていくのがあるんだ」
人呼んでそれを『継承魔法』というのだ、とアダムは言う。
「継承魔法・・・」
「でもさでもさ、それってあげたら終わりってことでしょ?なんでマリーちゃんが学校休むのさ」
「それが継承魔法の難しいところなんだ。特にクライグスのように血縁者に遺伝する形で継承されるものはな」
難しいところ。そう言われてルナ達はさらに混乱した。何がどう難しいのか。
それも何もわからないままに学校についてしまった。
「今回は家の事でもあるからなるべく関わらない事にする。しかし彼女に危険が迫った場合はフラウステッド、お前とエトナ―の力を借りることもあるだろう」
だから今はそっとしておいてやれ。とアダムは言う。
ルナはそう言われてその場は引き下がったが、その日は知らず知らずのうちにマリーの姿を探していた。
今日くるかな、明日くるかな。などと考えながら。
しかしそれから数日、マリーが学校に来ることはなかった。空席を見つめるルナの不安が頂点に達した頃。
事態は緊急を告げた。
「フラウステッド!これは恐らくヤバい事態だ。ついてきてくれ!」
アダムの報せを聞いてルナは家を飛び出した。




